鶴岡慎也が分析する2024年の日本ハム(前編) 3年目を迎えた日本ハムの新庄剛志監督。オープン戦を7勝6敗5分とまずまずの成績で終え、いざシーズンに突入する。はたして今季の日本ハムは、2年連続最下位から脱出できるのか。球団OBであり、春季キ…

鶴岡慎也が分析する2024年の日本ハム(前編)

 3年目を迎えた日本ハムの新庄剛志監督。オープン戦を7勝6敗5分とまずまずの成績で終え、いざシーズンに突入する。はたして今季の日本ハムは、2年連続最下位から脱出できるのか。球団OBであり、春季キャンプも取材した鶴岡慎也氏が今シーズンの日本ハムを徹底分析。まずは投手陣を中心に聞いた。


鶴岡慎也氏がイチオシする2年目の金村尚真

 photo by Sankei Visual

【豊富な先発投手陣】

── 開幕前の現段階で、鶴岡さんが考える投手スタッフはどうなりますか?

鶴岡 先発ローテーションは大体6人で回すものですが、日本ハムは試合日程の関係で、最初の1カ月は6連戦がありません。新庄監督が発表したところによると、1戦目・伊藤大海、2戦目・加藤貴之、3戦目・上原健太、4戦目・山﨑福也、5戦目・北山亘基。あとは鈴木健矢、ドリュー・バーヘイゲン、根本悠楓の3人は、調子を見ながら一軍昇格させていくことになると思います。

── FA入団した山﨑投手が4番目ですか? 山﨑投手は上沢直之投手の穴を埋めてくれますか?

鶴岡 4番目というのは、2カード目の初戦になりますので重要です。山﨑は昨年、キャリアハイの11勝。今季プロ10年目の32歳で、選手として最も脂が乗っている時期だと思いますし、やってくれると思います。上沢はイニング数を稼いでくれる投手(2023年は170イニング)でしたので、抜けたことは単純に痛いです。しかし、山﨑に何度か話を聞いたことがありますが、「好不調はあるが、長いシーズンを投げきる」という覚悟を感じました。山﨑をはじめ、みんなが協力して上沢の穴を埋めてくれると思います。

── 伊藤投手、加藤投手、山﨑投手の「3本柱」以外の投手の特徴を教えてください。

鶴岡 上原は昨年、自己最多の101回1/3を投げました。鈴木はサブマリン投手で、北山は2022年のルーキーイヤーに開幕投手を務めました。この北山の状態が今すごくいいので、5番目に入りました。バーヘイゲンは日本時代の2020年に先発として8勝、昨年はカージナルスで中継ぎとして60試合に登板しました。私は2021年まで日本ハムで選手兼任コーチを務めていたのですが、バーヘイゲンは最速155キロの速球派です。しかし34歳の現在は調子が上がらず、ストレートは10キロ減ぐらい。根本は「井端ジャパン」にも選ばれたプロ4年目の左腕です。彼は今季、"強化指定投手"ですね。

── 東洋大からドラフト1位で入団した左腕の細野晴希投手はどうですか?

鶴岡 大学4年時、二部ながら春のリーグ戦で投手四冠を達成し、MVPにも輝くなど、一部昇格の原動力になりました。158キロは左投手としてのアマチュア歴代最速で、指にかかった時のボールは目を見張るものがあります。ただ、まだボールが暴れるところがあり、繊細なコントロールが今後の課題でしょうか。即戦力の期待もありますが、じっくり育てて、スーパー投手になってもらいたいという首脳陣の意思も感じます。

【イチオシはプロ2年目右腕】

── 派手さはないですが、リリーフ陣も充実しています。

鶴岡 昨年、近藤健介のFA移籍に伴う人的補償で加入した田中正義が抑えでハマりました。昨年の疲れを引きずっているのかと思いましたが、好調時の状態をキープしています。なにより、昨年25セーブを挙げた経験値はものすごく大きいです。ストレートだけじゃなく、フォークやスライダーを織り交ぜながら投げるなど、引き出しも増えました。田中については、今季30セーブ、防御率1点台を達成できるか否か。チームの命運を握る存在であることは間違いありません。

── 今季ブレークしそうな投手はいますか。

鶴岡 プロ2年目、2022年ドラフト2位の金村尚真ですね。ストレートは150キロを超えますし、大きなカーブがあるので緩急も使える。シンカー系のスプリットも持っていますし、コントロールもいい。フル回転して、今年は50試合ぐらい投げそうな雰囲気があります。いずれ先発に回るでしょうが、投球フォームにしてもそうですが、ソフトバンク時代に受けた攝津正を彷彿とさせます。

── このほか、活躍を予感させる投手はいますか。

鶴岡 杉浦稔大でしょうか。もともとヤクルトのドラフト1位投手ですし、日本ハムで2021年に28セーブを挙げています。今年は150キロ代後半を連発して、状態がかなりいいです。左腕・河野竜生は昨年「7回の男」として、50試合21ホールドポイントをマークしました。さらに左腕の福田俊。昨年開幕から29試合、防御率0.00。さらなる飛躍が楽しみです。

── ベテランの宮西尚生投手はいかがですか?

鶴岡 前人未到の通算400ホールドまで残り7に迫っています。シーズンの早い段階で達成してくれるのではないでしょうか。ほかにも北浦竜次、生田目翼、新外国人のアニュラス・ザバラも楽しみです。ザバラは最速162キロを誇ります。外国人投手はバーヘイゲン、ザバラ、パトリック・マーフィー、ブライアン・ロドリゲスと4人いますが、投手は"保険"の意味を踏まえて、何人いてもいいものです。

── 昨年のドラフト1位、「二刀流」の矢澤宏太選手はどうですか?

鶴岡 昨年シーズン中に左手小指靱帯損傷、シーズン終了後に秋季リーグで右手有鈎骨骨折。昨年は、打者として一軍で17安打、投手としては一軍で2登板。現在は投げることはできますが、一軍の投手枠は充実していますので、いまのところはつけ入る隙がないかもしれません。

── 昨年は、新庄監督が「四球を出すなら安打を打たれたほうがいい」という考え方が浸透し、与四球363はリーグ最少で、失点を防ぐことにつながりました。チーム防御率3.08はリーグ3位でした。

鶴岡 それを援護するのが打線ということですね。

後編につづく>>

鶴岡慎也(つるおか・しんや)/1981年4月11日、鹿児島県生まれ。樟南高校時代に2度甲子園出場。三菱重工横浜硬式野球クラブを経て、2002年ドラフト8巡目で日本ハムに入団。2005年に一軍入りを果たすと、その後、4度のリーグ優勝に貢献。2014年にFAでソフトバンクに移籍。2014、15年と連続日本一を達成。2017年オフに再取得したFAで日本ハムに復帰。2021年オフに日本ハムを退団した