静岡県富士市を舞台に「Jatoco presents 富士山サイクルロードレース2024」が3月2日、3日の2日間にかけて、開催された。3日は富士市役所前の大通りを交通封鎖した特設コースを使い、メインレースは国内のプロリーグと学生リーグの選…

静岡県富士市を舞台に「Jatoco presents 富士山サイクルロードレース2024」が3月2日、3日の2日間にかけて、開催された。3日は富士市役所前の大通りを交通封鎖した特設コースを使い、メインレースは国内のプロリーグと学生リーグの選手たちが頂上決戦を展開するクリテリムレース「富士クリテリウムチャンピオンシップ」。大会は、今年で3回目となり、多くの観客が会場を訪れた。

富士クリテリウムチャンピオンシップの決勝には、1日目に開催された予選を勝ち抜いた76名が参加する。2日目には、U15、ジュニア、マスターズ、エリート、女子のレースと、予選を突破できなかったメンバーによるレースが開催された。



女子レースは2日間に渡って開催された



一般向けレースも同じコースで開催

コースは富士市の中心部を通る「青葉通り」に設定された。両端にヘアピンカーブを据えた1周1.8kmのシンプルなもの。ほぼ平坦だが、ラスト200mがわずかに上っており、ゴール勝負をする上では、よりパワーを必要とする設定になっている。



道路を往復するサーキット。シンプルだが、選手たちの姿が何度も見られ、観戦を十分に楽しめる



コースの両端には180度の折り返しターンが設定されている



富士山を背景にウォーミングアップする選手

3日は、青い空が広がり、気温も安定しており、観戦日和。富士山もくっきりと姿を現した。冷たい雨に見舞われた前年度と比べると天国のような天気に恵まれ、朝からコースやメイン会場は観客たちでにぎわっていた。



メイン会場にはキッチンカーが並ぶ



地元店もブースを構え、施術を行った

この週末は風が強く、1日目朝には設営したテントが全て飛散し、修復に時間を要した経緯もあり、この日も万が一に備え、全チームがテントを畳んでからスタートラインに着いた。



押し寄せた多くの観客の前でスタートが切られた



コース脇を埋め、走行する選手たちに声援を送る観客

レースはコースを30周する54kmに設定された。多くの観客に見守られながら選手が定刻にスタート。



スタート後すぐにアタックがかかり、2名が飛び出し、ハイペースな展開を予期させた

スタート直後からアタックがかけられ、会場は沸く。スピードが上がった集団は長く伸び、観客の目と鼻の先を駆けていく。



アタックの掛け合いでハイペースの展開が続くレースを観客が見守る



頻繁にアタックがかかるが、逃げがなかなか決まらない

集団はしばらく抜け出しが決まらず、不安定な状態が続いた。そんな中で7名が先行し、メイン集団との差を開いた。
この先頭集団には昨年Jプロツアーを制した中井唯晶(シマノレーシング)、全日本チャンピオンの経験を持つ山本元喜(キナンレーシングチーム)らが含まれており、緊張が走る。



有力なメンバーを含む7名が集団から抜け出した

メイン集団から、追走が発生し、シクロクロスとMTBで全日本チャンピオン経験を持つ沢田時(宇都宮ブリッツェン)や地元チームの床井亮太(レバンテフジ静岡)らを含む9名が先頭を追った。

ほどなく、この9名は先頭7名に合流し、計16名の先頭集団が形成されることになった。
ここに主要チームはメンバーを送り込んでおり、いったんレースは安定、メイン集団との差は1分以上に開いた。



追走9名が合流し、先頭に16名の集団が形成された

折り返しを越え、後半に入ると、ゴールを狙うチームブリヂストンサイクリングのメンバーが前方に集まり、メイン集団のコントロールを始めた。トラックレースで世界を舞台に戦うメンバーの多いスピードマンチームが全力で牽引を始めたことで、メイン集団のスピ
ードは一気に上昇、先頭との差は詰まり始めた。



チームブリヂストンサイクリングが先頭に集まり、ペースアップを図る

吸収の可能性が高まった先頭集団の中からは、先行し、ペースアップや逃げ切りを狙う動きも出始めたが、レースを左右する動きを打ち出すことはできなかった。



先頭集団が射程圏内に入り、次の展開に備える

ハイペースの展開に先頭集団からも選手がこぼれ落ちていく。先頭は4名となり、メイン集団は先頭を射程圏内に入れ、最後の展開に備え、吸収のタイミングを図っていた。
ラスト4周、集団がついに先行する4名を吸収し、レースは最終段階へ。各チームは最終決戦に向かう体制を固め始めた。
散発的にアタックがかかり、集団は一気に活性化。スプリント勝負を狙うシマノレーシングや愛三工業レーシングチームなども先方に上がり、位置取り合戦を始めた。
激しい攻防戦の中で、最終周回に突入した。



スプリント勝負に向け、各チームが激しく位置取りの攻防を展開する

最終コーナーを曲がり、最初に飛び出したのは前週のレースでキャリア初勝利を上げた寺田吉騎(シマノレーシング)。好調を全力で示すかのようにロングスプリントを始めた。
ここに迫るのは、前回大会の覇者岡本隼(愛三工業レーシングチーム)や、トラックでも活躍する窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)。だが、猛者たちもスピードに乗った寺田の勢いには及ばず、寺田は誰も寄せ付けぬまま、両手でガッツポーズを決めながら先頭でフィニッシュ。自身にとっても、チームにとっても、価値のある大きな勝ち星を上げた。



圧倒的なロングスプリントを決め、勝利をつかんだ寺田吉騎(シマノレーシング)

2位に岡本、3位に窪木が入っている。
寺田は表彰台に立ち「本当に嬉しい」と満面の笑みを浮かべた。袋井市出身で、地元の友人たちも多く訪れる中での会心の勝利だった。「みんなの応援が力になった」と応援への感謝を語ると同時に、チームメイトが先頭集団に入ったことで力を溜め、最後のスプリントに備えられ、さらに的確な牽引で有利にスプリントに備えられた、とチームメイトへの感謝も熱く語った。連勝を決め、チームにとっても幸先のよいスタートとなったことを受け「この好調を維持し、リーグでの年間の総合優勝も狙っていきたい」と抱負を語り、インタビューを締めくくった。



優勝した寺田、2位の岡本隼(愛三工業レーシングチーム)、3位の窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)



敢闘賞の表彰。地元の子どもたち、「かぐや姫」が表彰式を盛り上げる

この日は表彰式まで多くの観客が残り、惜しみない拍手を送った。2日間連続での大通りの交通封鎖を避け、今年は、予選は別コースを利用し、併催イベントも充実させ、地元に大きな負担をかけず、地域がレースを核に盛り上がる形が模索された。これからも、静岡らしい形で、大会が地元を巻き込みながら発展していくことを祈りたい。



年齢性別を問わず、地元の方々、自転車愛好家で会場は終日にぎわった



静岡県を抜ける太平洋岸自転車道のPRブースも好評だった。自転車の総合的な楽しみを提案

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【結果】富士クリテリウムチャンピオンシップ
1位/寺田吉騎(シマノレーシング) 1時間18分24秒
2位/岡本隼(愛三工業レーシングチーム)+0秒
3位/窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)+1秒
4位/草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)
5位/小野寺玲(ヴィクトワール広島)

【周回賞】
山本元喜(キナンレーシングチーム)
山里一心(アヴニールサイクリング山梨)

【敢闘賞】
河野翔輝(チームブリヂストンサイクリング)

画像:富士山サイクルロードレース2024、編集部