東京都は「GRAND CYCLE TOKYO」事業として、環境にやさしく、健康にもよい自転車をさらに身近なものとするため、自転車に関するイベント等を総合的に進めている。この中の「CARAVAN」では、都内区市町村の事業と連携し、自転車の活用…

東京都は「GRAND CYCLE TOKYO」事業として、環境にやさしく、健康にもよい自転車をさらに身近なものとするため、自転車に関するイベント等を総合的に進めている。この中の「CARAVAN」では、都内区市町村の事業と連携し、自転車の活用促進・安全啓発を図っており、特別編として、11月中旬、伊豆大島で「秋の伊豆大島まるっと満喫ライド」と題されたサイクリングツアーが実施された。

伊豆大島には、e-bikeや電動アシスト自転車、チャイルドトレーラーのレンタルもあり、ビギナーの方々でも自転車でライドを楽しめる環境が整備されている。そこでサイクリストに限らず「誰でも参加できる島1周ライドツアー」が企画された。



火山活動が生み出したダイナミックな景観も魅力

行程は、金曜日夜出発で、船内に1泊、現地1泊する計3日間。伊豆大島到着後、1日目は島1周、2日目はサイクリングか、トレッキングか、自由行動か、各自プランをチョイスする。レンタサイクルの台数と、安全管理上から、定員は30名に設定された。11月中旬の開催ではあったが、募集開始後、早々に定員に達したという。

集まったのは、ロードバイクを持ち込むサイクリストだけでなく、レンタサイクル利用のビギナーや家族連れと多様な顔ぶれだった。伊豆大島は、火山が生んだダイナミックな島。そのため、アップダウンが多く、立ち寄りを含めると獲得標高は1000m近くなり、距離も50kmほどになる。ビギナーが島を1周するには、アシスト付きの自転車が必須となるだろう。



島内でレンタルできる人気のe-bike、BESVのPSA-1。ママたちはチャイルドトレーラーを接続し、子どもを乗せて走る

幸い、参加する子どもちたちには、長身のお子さんが多く、小学校低学年を除き、島内で借りられるミニベロタイプのアシストバイクに乗れることがわかった。特にサドルを低く下げられるポタリングバイクは、身長140cm程度でも安定して乗れる。



デイトナの「ポタリングバイク」。小柄な方でも安定して乗れ、子どもたちの島1周を可能にしてくれた。折りたたんで、持ち運び可能であることも魅力

乗り慣れていない方は、ギアチェンジが苦手で、結果、バッテリーを多く消費するため、島1周はバッテリーが持たない可能性が高い。そこで、e-bikeのレンタルを行うCycle Tripさんに予備バッテリーのレンタルをお願いすることになった。
ツアー3日前に、島内のポタリングバイクが故障、乗車予定だったお子さんが走行を断念するしかない事態に陥ったが、事態を案じたデイトナさんが急遽、伊豆大島に入り、修理し、予備バッテリーもお貸しくださったという。



大型客船は、悪天候ながらも出帆

さらに、トラブルは続く。天気予報が悪化し、移動日のジェット船は、すべて欠航と発表されたのだ。夜行の大型客船が動かなければ、ツアーは中止となるが、移動日の当日、金曜の午後3時、夜の大型客船の運航決定が発表された。
ツアーが始まる!
現地の天気予報も超低温と激風に悪化しており、少し行程を変更し、実施されることになった。
参加者は、竹芝と横浜から夜行運航の大型船「さるびあ号」に乗船。夜の照明にライトアップされた船は、とても美しかった。



大型客船「さるびあ丸」の船内は白と紺を基調とし、美しく快適だった

内部には、各レベルの船室が用意され、シャワーやレストランなど、設備も整っていた。
横浜を出港すると、ほどなく消灯。到着後は、島1周ライドだ!



早朝伊豆大島に到着。船から降り立ち、バスへ(参加者提供)

朝6時、伊豆大島に降り立ち、ツアーバスへ乗り込んだ。御神火温泉で、朝食と着替えを済ませ、レンタサイクルのフィッティングを受ける。
今回は、小学中高年の子供どもたちが、ポタリングバイクに乗り、女性3名がe-bikeのPSA-1で子どもが乗ったトレーラーを引いて走る。女性陣でも、e-bikeなら、トレーラーを引いて走り切れるのだろうか。



スタートは御神火温泉。説明を聞く一行

サイクリストたちの1班、レンタサイクルとゆったり走りたい方々の2班、ファミリーを中心とした3班に分かれ、それぞれにサポートスタッフがついて走る。
天気予報は、曇り時々雨、そして強風。強烈な西風が吹きつけ、日中は10-15m/s程度の風が、次第に風が強まり、夕方には最大風速は25m/sにもなるとの予報。早めにゴールしたい。
まずは海岸線を走る。西風が強く、波が激しい水しぶきを上げていた。



ぶらっとハウスに向かって走る

一つ目の立ち寄りは「ぶらっとハウス」。伊豆大島の農畜産物を販売している施設で、ドリンクやアイス類も楽しめる。1番人気はジェラート。大島牛乳のミルクや、椿の花びらなど、大島の素材を生かしたフレーバーが並ぶ。さっそくミルクジェラートをいただく。牛乳のおいしさが詰まっていた。



ぶらっとハウスで大島牛乳の「ミルク」ジェラートをいただく



店内には、伊豆大島で収穫された野菜や果物が並ぶ



ガーデンに出て全員で記念撮影(主催者提供)

天気は、好転しているようで雨の気配はない。記念撮影し、再スタート。



東岸に向かって、それぞれのペースで走る(主催者提供)

軽いアップダウンを抜け、東岸へ。神話や伝説の舞台となったパワースポットが多い泉津エリアに入る。

まずは「泉津の切り通し」へ向かう。脇道に入ると、苔がむしており、雰囲気がガラッと変わる。2本の巨大な木が、根を這わせる間に入り、記念撮影。人気のフォトスポットだと言う。



苔むす「泉津の切り通し」。神秘的なムードが漂う

続いて、神話や伝説が伝わる波治加麻神社(はじかまじんじゃ)へ。緑の苔と、空に向かって伸びる杉の木々が写真に映え、人気なのだという。それぞれがスマホをかまえ、撮影を楽しんでいた。



天に伸びる杉が並ぶ「波治加麻神社」

ここから少し上ると、ランチ休憩をとる大島公園に入る。椿園や植物園、動物園が広がる巨大な公園であり、総面積はなんと327ha。
ここで振る舞われたランチは「洋菓子シャロン」の「シューバーガー」。大きめのシュー皮で、照り焼きチキンかえびカツ、フィレオフィッシュがサンドされている。



ランチの「洋菓子シャロン」の「シューバーガー」。えびカツを選んだ



皆でランチタイム!

筆者は、えびカツをセレクト。バンズとは違った食べ応えで、パサパサもしておらず、中身との相性もよい。プリッとしたえびカツも、ソースも美味。大好評で、年齢性別を問わず、皆がペロリと食べていた。



「日本最大級のサル山」を見るべく向かったが、サルはいなかった



環境を生かした展示が魅力

皆が動物園に興味を示し、全ての班が食後は動物園に立ち寄ることになった。入場料は無料。公園併設の小ぶりなものを想像していたが、見応えのある本格的な動物園で驚いた。
子どもたちは、もちろん大喜び。大人たちも久しぶりの動物園を楽しんだのだった。



サル山のサル発見!だが、サルは「ワオキツネザル」で少々イメージが違った

ここから、いよいよ本格的な登坂エリアに入る。小学低学年のお子さんはサポートカーに乗り、スタート。



登坂区間が始まった。E-bikeと一般車組とでバランスを取りながら進行

ビギナーながらe-bike組はさらりと上るが、スポーツバイク班にとっては試練のエリア。
一同は淡々と上る。子どもたちは初めて乗る電動アシストが嬉しいようで、大人たちをパスし、スイスイと笑顔で前方に上がっていた。
正直、簡単なコースではないが、アシストがある自転車のおかげで、子どもたちと一緒に同じ景色を見て、同じ経験をシェアできると考えたら、価値があるなと、しみじみ感じた。
全員が順調に上りを終え、サポートスタッフから安全に下るためのアナウンスを聞き、下りに入る。交通量も少なく、走りやすい。
下り切ると、さえぎるものがなくなり、一気に海の景色が広がった。ただ、海景色に感動すると同時に、強烈な風が吹きつけてきた。
ここからは、風との戦いだ!



「筆島」スポットに到着!厳しいアップダウン区間を終えた安堵と、強風への軽い絶望を味わう

海からぴょこんと顔を出した筆先のような岩「筆島」で記念撮影。古い火山「筆島火山」の噴出物が作った通路「火道」が、波に削られてできたものだという。伊豆大島は4~5万年前に活動を始めた火山が噴火し、「筆島火山」ら古い火山を覆うように形成された新しい島である。「筆島」は、伊豆大島が生まれる様子を眺めていたに違いない。
気合を入れて、再スタート。平坦は大丈夫だと思っていたが、これほどまで向かい風が強いとは! バイクのモーターに感謝しつつ、西を目指す。
まずは、人気の鯛焼き店「島京梵天」へ。



鯛焼き店「島京梵天」



ロードバイクが並ぶ(主催者提供)

店内は独特のハイカラな雰囲気が、醸し出されている。鯛の周りまで生地として焼かれているのが特徴だ。カリッとした生地を想像していたが、外側はさくりとして、生地は軽くて、ふんわりやわらかい。中身はたっぷりと詰まっていて、満足! あん、クリームと、リゾットやカレーなど甘くないフレーバーもあるようだ。



外枠付き鯛焼き。生地はふわりと軽い



冷たい明日葉入りの鯛焼きも人気



皆で鯛焼きを楽しむ(主催者提供)



玄人サイクリストでなくても、e-bike のおかげで、トレーラーを引いたママもキッズも東岸のアップダウンをクリア!(主催者提供)



ロードバイク組も絶好調!

せっかく来たから、展望台へ上がろう。波浮港は、崖を切り崩し、開港されているが、昔は火山の火口湖だったそうだ。展望台から眺めると、穏やかな港は丸い形をしており、湖時代の名残が見える。
多数決をとり、一同の疲労具合から、港に降りて散策するのは厳しいと判断し、このまま西を目指すことに。夕方、爆風になる前にゴールしたい。



火口湖だった名残を残す波浮港。展望台からは美しい姿を一望できる

風を受けながら、外周路を西に進んだ。幸い雨には降られず、空は明るくて、美しい景観を楽しむことができた。



西側の上りエリアに突入

「大島地層大切断面」に到着。大島1周道路の建設時、この地層が発見されたという。高さ約30m、長さ600mに渡って続く縞模様の壁は、大島を象徴するスポットになっている。



「大島地層大切断面」へ。自転車を押し歩きし、ゆっくりと観察

これは伊豆大島で繰り返された噴火の度に地表を覆ってきた堆積物が、2万年かけて作り出したものだという。相性は「バウムクーヘン」。地元でも愛されているそうだ。



最後の上りだ。ゴールは近い!

さあ、ゴールを目指そう!
軽い登坂が続くが、長くはない。
ついに、市街地に入った。
太陽は傾き始めており、海は少し色づいた陽の光を受け、キラキラと輝いている。元町港へ到着! 初めてイベントに参加される方も含め、全員が無事にフィニッシュできた。
e-bikeや電動アシスト自転車なら、年齢性別、スキルを問わず、時には子供の乗ったトレーラーを引いても、アップダウンのある島一周も楽しめる。達成感は満点だ。皆でバスに乗り込み、ホテルを目指した。



中心街を抜け、元町港へ(主催者提供)



元町港へゴール!(主催者提供)



名物、椿オイルのオイルフォンデュ!

ホテルでは、椿オイルのオイルフォンデュのディナーを楽しみ、この1日を皆で振り返り、温泉を楽しんだ。
2日目は4つのグループに分かれて過ごす。どんな楽しみが待っているのだろうか。待ちきれない!

画像:主催者(GRAND CYCLE TOKYO実行委員会)、編集部