昨年8月、154億円の移籍金でレアル・マドリードに移籍した、イングランド代表のジュード・ベリンガム。20歳のスーパース…

 昨年8月、154億円の移籍金でレアル・マドリードに移籍した、イングランド代表のジュード・ベリンガム。20歳のスーパースターへの処分が今、大きな話題になっている。試合終了間際のゴール取り消しをめぐるものだが、サッカージャーナリスト後藤健生は、その根底にある「アディショナルタイム問題」を指摘する。サッカーのルールは、どうあるべきなのか。

■クロスを上げる直前に「笛を吹いていた」?

2:プレーのどのタイミングで笛を吹くのか?

 ベリンガムの“幻のゴール”の場合、ヒル・マンサーノ主審はクロスを上げる直前に笛を吹いていたのだという。

 アディショナルタイムを含めた試合時間が過ぎた瞬間にプレー中だった場合、どのタイミングで笛を吹くのかは主審の裁量に任せられることになる。

 古い話で恐縮だが、1978年のアルゼンチン・ワールドカップではジーコの“幻のゴール”が話題になった。

 ブラジルはグループリーグの初戦でスウェーデンと対戦し、1対1の同点のまま時計の針が90分を指した。ブラジルは右CKを獲得し、ネリーニョが蹴ったボールをジーコが頭で決めて勝利したかと思われた。

 だが、ウェールズ人のクライブ・トーマス主審はネリーニョが蹴ったボールが空中にある瞬間に試合終了のホイッスルを吹いたとして、ジーコの得点は認められず、ブラジルは引き分け発進となってしまった。

 当時は、現在とは違って、あまり長いアディショナルタイムは取られなかったし、「アディショナルタイム表示」というものもなかったので、いつどのタイミングで試合終了のホイッスルが鳴るかは、主審以外の誰にもわからなかった時代だった。だが、それにしてもCKのボールが空中にあるうちに試合終了というのは珍しい出来事だったので、大きな話題になった。

■笛を吹くタイミングが違う「Jリーグ」と「W杯」

 しかし、「アディショナルタイム表示」がなされるようになった現在でも、プレーが続いていた場合、どのタイミングで笛を吹くかは、主審の裁量に任せられている。

 日本では、一般的にプレーが続き、得点の可能性が残っている場合は、「〇分」が過ぎても主審は笛を吹かず、プレーが一段落する(ラインを割る、あるいはDFがクリアする)のを待つ傾向が強い。攻撃側がCKを取った場合、追加時間が経過しても、そのCKを蹴らせるのが普通だ。

 だが、ワールドカップなどの国際試合では「〇分」が経過すると、攻撃側がゴール前のパスを回していても、ホイッスルが吹かれて試合が終了することが多い。

 ちなみに、日本の審判はボールがゴールラインを割ってゴールキックになった場合も、そこで笛を吹かず、わざわざGKがキックするのを待ってから笛を吹くことが多いが、これもどういう意図でそうしているのか不思議でならない(「GK数」を公式記録に残すためなのだろうか?)。

■アディショナルタイム表示は「大きな進歩」も…

 前にも述べたように、20世紀末までは「アディショナルタイム表示」はなされなかったから、主審がアディショナルタイム(当時の言葉でいえば、「ロスタイム」)を取ったのかどうかは、主審以外には誰にも分からなかった(南米大陸では、早くから主審が指でアディショナルタイムが何分かを示すことが慣習的に行われていた)。

 だから、現在のように観客やテレビの視聴者が「アディショナルタイムが何分か」が分かるようになったのは大きな進歩である。

 だが、それにしても端数の扱いや、実際に笛を吹くタイミングなどは主審の裁量に任されており、ブラックボックス化しているのが現状なのだ。また、それぞれの国によっても違いがあるようだ。

 このあたりの、微妙さ、曖昧さがベリンガムの事件を引き起こした原因なのだろう。

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