サッカーは年々、進歩している。ルールも毎年、改善が試みられている。今年も、数点のルール改正が施されることが決まった。そ…
サッカーは年々、進歩している。ルールも毎年、改善が試みられている。今年も、数点のルール改正が施されることが決まった。その5つのポイントを、サッカージャーナリスト大住良之が考察する。
■PK時に「ボール」をどこに置くべきか
PKのときにボールをどこに置くべきか、これまでも議論があった。ペナルティーマークは、「両ゴールポストの中央から11メートルのところに」描くとあるだけで、その大きさについては明確な規定はなかった。しかし、多くの場合、直径22センチの白い円として描かれてきた。ボールの直径が約22センチ。それがスッポリと収まるようにしているのである。
しかし、最近の欧州の試合では、このマークにわずかにかかる形でボールをセットする選手をよく見かける。コーナーから半径1メートルの4分の1の円が描かれた内側を「コーナーエリア」と呼ぶが、サッカーでは「ラインはそのエリアの一部」であるから、コーナーキックのとき、真上から見て、そのラインにボールが少しでもかかっていれば、「エリアの中に置かれている」ということになる。同じ考えをPKにも使っているのだ。
ただ、「ペナルティーマーク」は「エリア」ではない。本来は面積のない「点」であるはずなので、「ペナルティーマークの中心」を、その「点」とし、それにかかるか、接していれば「ペナルティースポットにボールが置く」と認めるようだ。なんとも細かいが、合理的なように思える。
■これまで以上に「侵入」が増える危険性も
PK時のエリア内への「侵入」の扱いについての今回のルール改正には、疑問が残る。結果として「インパクト」を与えていなければ罰せられないわけで、これまで以上に侵入が増えるのではないかという危惧を感じる。
ただ、ビデオアシスタントレフェリー(VAR)が入っている試合では、完璧に侵入のチェックはできるものの、ほとんどの侵入が看過されている。厳格に取っていると、何回もPKのやり直しが行われ、時間がかかってしまうためと思われる。インプレーになる前にペナルティーエリアに侵入した選手がリバウンドをシュートしたり、クリアしたり、タックルするなどの「インパクト」がない限り、反則とはしていないのが現状だ。今回のルール改正は、VARがある試合とない試合の整合性を取ったものとも考えられる。
こう見ると、今年のルール改正は、サッカーや戦術に大きな影響を及ぼすものではないようだ。
■試験導入された「飲水タイム」「一時的退場」
IFABでは、ルール改正だけでなく、将来のルール改正に向け、「試験導入」していいもの(ただし、トップクラスの大会ではなく、2部リーグ以やグラスルーツの大会などの試合に限られる)も決議している。そのひとつは前述したように、キャプテンのみが主審の判定に関する質問などをすることができるというものだが、他にもいくつかある。これらの「試験導入」については、実施を希望する協会はIFABに申請し、許可を得なければならない。もちろん、「試験」の結果報告も義務付けられている。
●飲水タイム
現在それぞれのベンチ前で行われている飲水を、それぞれのペナルティーエリアで行う。
●GKのボール保持時間
現在「6秒間まで」とされているGKが、手や腕でボールを保持している時間を「8秒間」に延ばし、適用を厳格にする。
●「一時的退場(シンビン)」
試験導入を継続する。ただし、試験はユースやグラスルーツの試合に限られる。
●VAR判定時の主審の説明
試験導入を継続する。
■現状は野放し「GKのボール保持時間」
昨年からメディアで盛んに議論されてきたのが、「一時的退場(シンビン)」のプロの試合への導入だった。このために「ブルーカード」を使うという具体的な話まで出ていたが、多方面からの反対で、この年次総会では、プロの試合では「試験導入」も認められなかった。
他に興味深いのは、GKのボール保持時間だろうか。現在は、このルールはあってないようなもので、たとえ、GKが20秒間も保持していたとしても主審は「早くプレーするように」と促すだけで何の罰も与えていない。もし主審が「反則」と判定したら、GKがボールを保持していた地点で相手の間接FKとなるのだが、そんなものを見たことがある人がいるだろうか。
しかし、ルール違反の状態を野放しにするのは好ましくない。そこで、今年認められた「試験導入」では、この反則が起きたときには、間接FKではなく、相手チームにCK、あるいはコーナーから11メートルの地点からのスローインを与えられることになるという。そして、その代わりに、最長保持時間を2秒間延ばし、「8秒間」にするという。
IFABのメンバーのひとつであるイングランドサッカー協会(FA)は、この試験導入に非常に前向きで、今夏開幕する「リーグ1」、あるいは「リーグ2」(プレミアリーグから数えると3部、4部のプロリーグとなる)での試験導入を、申請する可能性が大きいと言われている。
大きなルール改正はなかった今年のIFAB年次総会。しかし、サッカーをより楽しめる競技にしようというルール面からの努力は、これからも継続されていく。