昨季の全国大学ラグビー選手権のクライマックス。東海大1年だったテビタ・タタフは、いわば強硬手段に出たようだ。「出してくれないなら、辞めます」 所属する関東大学リーグ戦1部の序盤戦で、左ひざじん帯を断裂。メスを入れ、シーズンを棒に振ると目さ…
昨季の全国大学ラグビー選手権のクライマックス。東海大1年だったテビタ・タタフは、いわば強硬手段に出たようだ。
「出してくれないなら、辞めます」
所属する関東大学リーグ戦1部の序盤戦で、左ひざじん帯を断裂。メスを入れ、シーズンを棒に振ると目されていた。しかし、驚異的なペースで回復した本人は「試合に出られないことで、気持ちが落ち込んでいた」という。将来性を見据えて復帰には慎重だった木村季由監督に、「出してくれないなら…」と哀願したとされる。
結局、準決勝と決勝ではリザーブに入り、出場時間を限定して芝に立った。特に誕生日だった正月2日、明大との準決勝(東京・秩父宮ラグビー場)では後半14分からの出場で2トライを奪取。身長183センチ、体重110キロの体躯で突進を繰り返し、28-19で勝利した。
後日、それぞれ事実関係の確認を求められた。木村監督は「それに近いことはあった」と話し、タタフはただただ笑っていた。
4月30日、日本代表が2016年度最初の試合をおこなう。神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で、韓国代表とのアジアラグビーチャンピオンシップ初戦に挑むのだ。
15歳で来日し、最初は東京・目黒学院高でプレー。「居住3年以上」などの代表資格をクリアしたタタフは、この日、NO8で先発する。初のテストマッチ(国際間の真剣勝負)となる。20歳以下日本代表時代から自分を信頼してくれた中竹竜二ヘッドコーチ代行のもと、問答無用の突破力を示したい。
流ちょうな日本語で決意を明かす。
「ビデオで観たんですけど、韓国代表は激しいプレーをする。ただ、いままでやってきたことを出せば大丈夫だと思います。レフリーに合わせてプレーすることも、大事です」
昨秋、ジャパンはワールドカップで歴史的な3勝を挙げた。もっとも今回は、日本協会の方針から若手主体で約1週間の準備ののちにテストマッチに臨むこととなった。当時は31名中10名いた外国出身選手も、今度は30名中5名。韓国代表戦のスターターでは、タタフが海外ルーツを持つ唯一のメンバーとなる。ぶつかり合いでの期待値は、自然と高まる。
火事場のクソ力を持つことは、あの冬に実証した。登録23名のうちテストマッチデビューが17名という若い組織にあっても、「いままでやってきたこと」をフルに発露したい。(文:向 風見也)