ホームの川崎フロンターレに対して、ジュビロ磐田は勇敢なパス回しで挑んで前半の3ゴールに結び付けた。ただ、それを生んだの…

 ホームの川崎フロンターレに対して、ジュビロ磐田は勇敢なパス回しで挑んで前半の3ゴールに結び付けた。ただ、それを生んだのはメンタル的な強さだけではない。

 守備では川崎の4ー3ー3にうまく噛み合わせながら、攻撃では中盤のミスマッチと左右のウイングが高くなる構造的な特徴を逆手にとって、うまく動きながらスペースを使ってボールを繋ぎ、運んでいた。

「もっと真剣勝負したら多分負けますけど。ちょっとやり方を考えれば前半みたいにうまく行けるシーンもたくさん作れると思う」

 ボランチの中村駿は川崎のクオリティを認めつつ「そんな守備が得意な選手たちじゃないので。そこに立ち向かっていくっていうのは、僕は逃げずにやるべきかなと思います」と語った。プレッシングをしてくる相手に対してボールを繋いでいくにはメンタル的な強さも大事だが、それ以前に相手のシステムや守備戦術を頭に入れて、チームとしての設計を落とし込むことが必要になる。

 もちろん横内昭展監督や分析スタッフからの指示はあるが、相手をイメージしてどう攻めるのか。そのシミュレーションは選手間でもしっかりと行われているようだ。中村は「相手ありきなので。相手が出てくるからこそ、自分たちで形を作っていく、形を変えていくのができると思うので。そこを分析するのは僕も得意ですし、(上原)力也も好きだと思うので」と力強く答えた。

■「リスクはありますけど、それも含めて成長」

 そうした中村の言葉をルーキーの植村に伝えると「いやなんかもう、自分なんかはプレッシャー来てるから、蹴ればいいんじゃないかみたいに思ってたんですけど」と苦笑しながら、正直な気持ちを打ち明けてくれた。

「本当にチームのやりたい、目指してるサッカーというのが、ビルドアップでしっかり繋いで、自分たちの色を出してやっていくっていうのが1つあるので。リスクはありますけど、それも含めて成長だと思う。そこはトライし続けることが大事ですけど……自分は怖えな〜て(笑)」

 実際に、川崎のインターセプトから危険なFKに繋がったシーンには植村も絡んでいた。それでも中村や上原、そして守護神の川島永嗣にも背中を押される形で向き合ったことで、植村も含めて全員がボールを繋ぎながら、ゴールに向かう矢印になったのだろう。試合は前半のうちに川崎が1点を返し、さらに後半に追いつくという試合展開で、磐田はかなり苦しい状況になった。

 それでも横内監督はサイドアタッカーの古川陽介やFWマテウス・ペイショットといった攻撃的な選手を投入して、前向きに戦う姿勢をピッチの選手にも投げかけた。そこから植村のスルーパスにジャーメインが抜けて、GKチョン・ソンリョンに倒される形でPKを獲得して、ジャーメインのこの日3点目で勝ち越し。一度は川崎がわのPKで同点にされるが、後半アディショナルタイムに再度のジャーメインによるPKで、磐田の決勝点が生まれた。

「我々が目指すところというか、点を取るために準備してきましたので。そういう意味では選手が最後まで下を向くことなく、本当にトライし続けてくれた」

 そう横内監督が振り返るに相応しい姿勢を見せての勝利。ここから長いシーズン、磐田にとって良い時もあれば悪い時もあるはずだが、川崎との激闘の中で見せたトライする姿勢というのはチームを支えていくはずだ。

(取材・文/河治良幸)

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