サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニ…
■遠藤より早く栄光に近づいた「サムライたち」
「新ウェンブリー」の「決勝戦」における日本人選手の動きを追ってみよう。FAカップでは、2022年の決勝でリバプールがチェルシーと戦い、0-0からPK戦6-5で勝ってカップを手にした。しかし当時リバプールに在籍していた南野拓実はベンチ入りを逃した。
カルバオ・カップでは、2017年にサウサンプトンが決勝に進出、マンチェスター・ユナイテッドと対戦した。サウサンプトンの吉田麻也はフル出場して奮闘したが、試合は2-3で敗れた。さらに2022年の決勝ではリバプールがチェルシーと対戦、これも0-0からPK戦11-10というきわどい戦いとなったが、リバプールが優勝。ただ、南野はベンチ入りしたものの、出場機会はなかった。
シーズン開幕を告げる「FAコミュニティーシールド」では、2013年にマンチェスター・ユナイテッドがウィガンと対戦、香川真司が所属するマンチェスターが2-0で勝ち、香川は後半38分から出場して優勝の瞬間を味わった。2016年には岡崎慎司が所属するレスター・シティがマンチェスター・ユナイテッドと対戦、1-2で敗れ、岡崎は先発したものの、ハーフタイムに交代した。
2020年のFAコミュニティーシールドではリバプールがアーセナルと対戦、1-1からPK戦4-5で敗れた。この試合、リバプールの南野は後半14分から出場、PK戦では見事にゴールを決めたが、勝利には結びつかなかった。そして2023年にはアーセナルがマンチェスター・シティを4-1で下したが、アーセナル所属の冨安健洋は出番がなかった。
そして、今年の「カルバオ・カップ」決勝、ついに遠藤が先発フル出場し、延長まで戦って1-0の勝利に貢献したのである。リバプールは負傷で何人もの主力を欠き、とくに攻撃陣には若手が並ぶ形となったが、遠藤はアンカーとして中盤で戦い続け、FW陣に好パスを供給して高い評価を受けた。
■FAカップ決勝に出場した「唯一のなでしこ」
女子のFAカップ決勝も2015年からウェンブリーで行われているが、その決勝戦に出場した日本選手は2021年の岩淵真奈(アーセナル)ただひとり。後半16分からの交代出場だった。だが、チェルシーに0-2で敗れ、カップ獲得はならなかった。
もうひとり、というよりもう3人、「ウェンブリー」で忘れてならない名前がある。家本政明主審と大塚晴弘副審、そして名木利幸副審である。この3人は2010年5月24日、南アフリカでのワールドカップの準備試合として行われたイングランドとメキシコの国際親善試合を担当し、高い評価を受けた。試合は3-1でイングランドの勝利だった。
私がこのウェンブリー・スタジアムで試合を見たのは、3回。1995年のアンブロカップ(2試合)、1996年の欧州選手権(4試合)、そして2012年のロンドン・オリンピック(4試合)である。幸いなことに、アンブロカップと欧州選手権では「初代」の、そしてオリンピックでは「2代目」のウェンブリー・スタジアムで試合を見ることができた。
「初代」は屋根の支柱があり、椅子は木製でいかにも「時代もの」といった雰囲気だった。「初代」のシンボルである北側スタンドの「ツインタワー」もきれいに残っていた。選手の入場は東側のゴール裏スタンドに開けられたゲートから行われ、レフェリーと両チームのキャプテンを先頭とした両チームがこのゲートからゴールの脇を通ってピッチの中央まで歩いてくる姿には、いつも心を打たれた。
それに比較すると、「2代目」は現在世界の各地にある巨大スタジアムと変わるところはなく、やや興ざめだったが、中にはいると、その巨大さに圧倒された。9万人近くの観客が1プレー1プレーに沸く雰囲気は、さすがに「本場」のものだった。
「サッカーファン」としての私の長年の夢のひとつは、「ウェンブリーでFAカップ決勝を見ること」である。残念ながら、まだかなえられていない。