初回を飾るのは、コートの側で選手を支え続ける井ノ山琉人学生コーチ(スポ3=東京・豊多摩)、大倉隆太学生コーチ(教3=東京・早実)、春日裕樹学生コーチ(文構3=東京・国学院久我山)の3人。選手とは少し異なる学生コーチの視点から、2022シー…
初回を飾るのは、コートの側で選手を支え続ける井ノ山琉人学生コーチ(スポ3=東京・豊多摩)、大倉隆太学生コーチ(教3=東京・早実)、春日裕樹学生コーチ(文構3=東京・国学院久我山)の3人。選手とは少し異なる学生コーチの視点から、2022シーズンを振り返ってもらった。
※この取材は11月16日に行われたものです。
お互いの紹介
他己紹介をする井ノ山
――他己紹介をお願いします
大倉 井ノ山の良いところは、とにかく周りが見れていて、落ち着いていろんな指摘をしてくれるところで、3年間同期としてやってきて、すごく頼もしいなと思っています。僕ら3年生が、学生コーチの最上級生としてやっている中で、引っ張ってくれているところが良いところだと思います。普段は、こんな感じで真面目そうに見えて、意外と遊びになるとフランクになるというギャップもあります。実はおもしろい奴なんだっていうのを知ってもらいたいです(笑)。
井ノ山 ありがとうございます(笑)。春日くんは、学生コーチの中で一番動けて、アスリートな学生コーチです。とにかくトレーニーという感じです。その反面、結構繊細で、優しくて、本を読んだりする側面も持っています。スカウティングとか、気をつかっていろいろな仕事をやってくれる、頼りがいのある同期です。
春日 ありがとうございます(笑)。
大倉 なんて幸せな時間なんだ(笑)。
一同 (笑)。
春日 大倉は、一番の特徴としては人とコミュニケーションを取るのがすごくうまいです。同期の中でも最初に話しかけてくれたのは大倉だったし、後輩が入ってきて、最初に挨拶しにいくのは大倉か、森さん(森一史アシスタントコーチ、令4スポ卒)です。とにかく大倉が話を広げてくれて、僕らがそこに乗っかっていくという感じです。明るくて、話しやすい存在ですね。バスケでも、戦術どうこうというよりも、アツい一面を選手に求めるような情熱的な学生コーチです。プライベートではギャンブルが好きというのが意外な一面ですね(笑)。
――バスケ部に入った理由は
大倉 1つは、お父さんがバスケ部のOBで、おじいちゃんがバレー部のOBだったというのがあって、バスケットの体育会に興味を持っていました。あと、結構前に卒業された濱田健太さん(平31卒=現東京海上日動)に、自分が高校生の頃、どうするか相談していて、ぜひコーチとしてやってみたらっていうのを言われて、それが今バスケを続けている原点です。
――濱田さんと知り合った経緯は
大倉 僕は早実出身なので、よく早稲田のBチームと試合をやっていて、試合でボールが顔面に当たって、口の中を縫ったんです。それで自主練をしていたら、ハマケン(濱田健太)さんがいて、たまたまハマケンさんの写真のチケットを持っていたのでそれにサインを貰って、それからいろいろお話をさせていただくようになりました。それがきっかけです(笑)。
井ノ山 僕は小学生の頃から、選手としてやっていて、その中で技術や戦術のことに興味を持ったので、大学でコーチをやりたいと考えていました。それで、スポーツ科学部のある早稲田に来て、バスケ部に入ったという感じです。
――選手になることは考えませんでしたか
井ノ山 教えることのほうが自分としては好きなので、コーチをやっています。
春日 高校の大エース時代は?(笑)
一同 (笑)。
春日 僕は久我山(国学院久我山)っていう結構バスケが強い高校でバスケをやっていたのですが、そのときのトレーナーの方が早稲田出身の森本さん(森本聡氏、平14卒)という方で、僕が早稲田に受かって報告をしたときに、「もしよかったら大人に話を通して部活体験してみる?」という話をいただいて、全然上手くなかったし、大学で続ける実力もないと思っていましたが、高校時代に不完全燃焼で受験に入ってしまったので、チャレンジしたいなと思ったのがきっかけです。そこで、実力的に選手は無理だけど、スタッフとして残らないかとお話をいただきました。結構迷いはありましたが、そのときに3つ上の小室さん(小室悠太郎氏、令3卒=三井住友海上火災)とか、そういう選手が高いレベルでバスケをしているのを見て、こういうところでバスケを学ぶのも楽しいかもなと感じて、学生コーチとして入部しました。
――学生コーチをやる中で大変だったことは
大倉 選手は全国とか、トップでやってきた中で、自分は高校でもずっとBチームで、早実としてもベスト16止まりとかだったので、そういった経験のギャップがある中で、どうやって理論的に選手に伝えるのかというところです。1年生の頃は、入って間もなくて、いろいろやることも大変でという感じでしたが、2年、3年になっていくにつれて、より教える機会が増えると、そういったコーチの難しい部分を感じています。
井ノ山 僕が学生コーチをやっていて難しいと思うのは2つあって、1つは選手に伝えることの難しさです。バスケットの戦術とか技術とかどれだけ知識を持っていても、それがうまく伝わらないもどかしさは入部してからずっと感じています。もう1つは、今年に入って、上級生になって感じるのが、選手と倉石さん(倉石平ヘッドコーチ、昭54卒)の間に立って、どういうふうにチームを動かしていくか、どういうふうに倉石さんの意図を選手に伝えるかという難しさです。
春日 僕は2つあって、1つは、大倉も言っていましたが、経験がある選手に経歴のない僕らが教えていくということが難しいです。僕は人としゃべるのが得意じゃないので、物怖じしてしまって、「俺にこういうこと言われるのはどうかな」と気にしてしまって言えないというのが結構あります。2つ目は、上に森さんなどの優秀なコーチがいる中で、自分の役割を探すのが難しいことです。1年生のときは雑用をやっていれば良かったですが、学年が上がるにつれて後輩ができて、雑用をやらなくていいとなったときに、自分より上のコーチがやっていなくて、雑用の域を超えてチームに貢献できることを探すというのは難しいです。僕の場合はスカウティングをやるのが楽しかったので、それで今後役割を増やせていけたらなと思います。
――選手とコミュニケーションを取るときに意識していることは
春日 例えば選手があまり良くないとされている動きをしたときに、正解はこうだよねという前に、なぜそういう動きをしたのかを聞いて、選手の考えをふまえて、自分の考えを伝えるようにしています。
大倉 僕はめちゃくちゃポジティブシンキングなので、まずはできたことをほめるようにしています。前向きな言葉をかけることは常に意識しています。
井ノ山 僕は春日と似ているのですが、選手の考えを理解するために、選手の考えを引き出すようにしています。あとは、こっちから何か働きかけをしたときに、そのあと選手がどう変化したかというところまでちゃんと確認して、コミュニケーションの質を上げるということを意識しています。
――学生コーチの最上級生は3年生ですが、4年生の選手との関わりで大変だと思うことはありますか
大倉 4年生はすごく優しいし、聞いてくれる感じがあって、4年生自身も思ったことを発信するし、僕らが発信しようとしたときも、聞いて、実践してくれるので、物怖じせずにいろんなことを話せます。
井ノ山 僕もあまり4年生に気遣いして、言いにくかったりすることはなくやれています。
春日 4年生は、神田さん(神田誠仁、社4=静岡・浜松開誠館)と土家さん(土家大輝、スポ4=福岡大大濠)は結構試合に出ていて、クレイさん(宮川丈クレイトン、商4=愛知・千種)と剛さん(ホセイン剛、教4=東京・早実)はあまり出られていなくて、2つに分かれています。クレイさんと剛さんに関しては練習中でも結構言うようにしていて、僕からもアプローチしやすいです。土家さんと神田さんに関しては、少し言いにくいというか、相当いろいろ考えてやっている人たちなので、僕が口を挟むのもなと思ってしまうのですが、3年になってから、勇気を出して言ってみようとするときがあります。僕が言ったことに対して真摯に受け答えしてくれるというか、そういった事が3年になって増えてきて、4年生とコミュニケーションが取れるようになりました。
――学生コーチの最上級生になって変わったことは
春日 正直森さんがまだいるので…(笑)。あまりまだ変わっていない感じがあります。森さんが偉大すぎて(笑)。
大倉 森さんの存在が大きいですね(笑)。
――学生コーチのやりがいは
大倉 直近のリーグ戦では、1人4チームずつ責任を持つというシステムでやっていて、上級生になってから任されることも、増えてきたので、きつくてタフな部分もありますが、それ以上に、自分が教えたプレーを選手たちが試合で使ってくれて、それでバスケットカウントをもらったりとか、相手の弱点をついて勝てたりした時にやっていて良かったと思います。あと日体大戦で勝ったときに、僕は号泣したのですが、そのとき大輝さん(土家大輝)がこっちに来て、「お前のおかげで勝てた」と言ってくれて、さらに泣きました(笑)。本当にやりがいがあるなと感じますね。
井ノ山 チームの一員として勝てた時はやっぱり嬉しいですし、特にコーチとなると、選手とワークアウトでやったプレーが試合で生きたときはうれしいです。あとはスカウティングが生きたシーンは自分たちの努力が報われたと思える瞬間ですね。
春日 僕は、練習後に一緒に自主練をしている選手が活躍するのがうれしいです。僕の場合は同期の龍海(兪龍海、スポ3=神奈川・桐光学園)とよく練習していて、去年も今年もあまり試合に出してもらえなくて大変だったと思いますが、その中でも試合に出た時は活躍してくれて、それは結構うれしいですね。あと、スカウティングが学生コーチの仕事の中で一番大変なのですが、今年は特にセットプレーが多いチームがあって、本当に大変だったのですが、だんだんセットプレーが少ないとつまらないと思うようになりました(笑)。そういう楽しさもありますね。
――学生コーチから見て、バスケが上手いと思う大学は
井ノ山 春日が担当した筑波大と東海大は結構ヘビーでしたね。
春日 戦術の多様さという面では、筑波大と東海大はすごかったです。
大倉 そこが春日2連チャンで続いてたもんね。
春日 1週間ずっと筑波と東海の試合を見ていました(笑)。
リーグ戦の振り返り
日体大戦の思い出を話す大倉
――リーグ戦で1番印象に残っている試合は
井ノ山 僕は2巡目の国士舘大との試合です。厳しい状況に立たされていて、試合の展開も常に相手がリードしていたし、こっちは1年生が多く出ているのに対して国士舘は4年生が中心というのもありましたが、うちに流れが来るまでよく我慢して、勝てたので、とても大きな一勝だったと思います。
大倉 僕は個人的には(1巡目の)日体戦ですね(笑)。留学生が抜けていたと言っても、トップガードの小川麻斗(日体大)とか、すごい選手たちがめちゃくちゃいる中で、やられている場面があっても、7番の堀田(尚秀、スポ1=京都・東山)とか、1年生が期待に応えてくれて、なかなか勝てなかった時期に勝てたというのは印象的でした。
春日 僕は悔しい思いをしたという意味で、1巡目の国士舘戦と、うれしかったという意味で2巡目の国士舘戦です。国士舘が思っていたよりも勢いのあるチームだったのですが、1巡目のときはミーティングをあまりちゃんとしなかったです。選手に動画は見てもらうけど、直接話すことはしていなくて、僕があまり国士舘の雰囲気を伝えられなかったです。それと僕のスカウティングの動画の内容をあまり理解できていない選手がいて、それで国士舘に圧倒されてしまいました。それが自分としては「やっちゃったな」という感じで、結構きつくて。2巡目のときは、選手たちも勢いのあるチームだということはわかっていたし、僕も伝えていました。試合中も応援席から指示を出して、それで勝てたというのは本当にうれしかったですね。
――部内で仲良い人はいますか
春日 僕は同期の龍海(兪龍海)です。ずっとバスケの話をしたり、一緒にバスケをしたりしています。最近は1年の初宮(嘉一、スポ1=東京・頴明館)とも仲良くしています。彼が思い悩んでいる時期があって、練習のあとやオフの日に一緒にバスケをしました。彼を見守っていたいという気持ちがありますね(笑)。
大倉 僕は小野(功稀、社2=新潟・開志国際)と、陸眞(福永陸眞、教2=東京・早実)ですね。陸眞はずっと高校から一緒にやってきて、付き合いが長いというのと、めちゃくちゃ絡んでくるので(笑)。本人はケガの時期が長いですが、新人戦では活躍してくれたので期待しています。小野は一緒にメシ食べに行ったり、飲みに行ったりします。話さなさそうに見えて、意外と2人だとめちゃくちゃ話します。超おもしろい奴なので、ぜひ絡んであげてください(笑)。
井ノ山 1個下の飯島(慶記、人2=茨城・下妻一)とは今年仲良くなって、個人のワークアウトを担当することも多いです。バスケのことやプライベートのことを結構話すようになりました。
――3年生ということで進路を考える時期ですが、今後もバスケに関わることは続けていきますか
春日 僕は、コーチやスタッフとして周りからバスケに関わることをするかは分からないですが、自分でバスケをやったり、試合を見て楽しむことはずっとやっていきたいです。部活を4年間やってきているので、バスケに関係する仕事に就くという選択肢もありますが、そこはまだ考え中という感じですね。
大倉 僕はまず普通に就職して、それと並行して、僕の出身のミニバスを早実のOBの方がやっているので、ミニバスで教えたりとか、あわよくば就職先の実業団のコーチとか、何らかの形でバスケに関われたらなと思います。
井ノ山 僕は大学院に進もうと思っていて、今ゼミでスポーツ心理学をやっているので、その切り口でバスケットを見ていけたらなと思っています。
インカレに向けて
意気込みを話す春日
――インカレまでどのように過ごしていきますか
大倉 4年生と残りわずか一緒にできる切符を獲得できたので、4年生と一緒に楽しみながら、自分にできる最善を尽くして、日本一という目標に向かってやっていきたいです。一番は4年生と一緒にバスケを本気でやりたいです。
井ノ山 僕も大倉と一緒で、4年生と一緒にやれる期間があと少ししかないので、そこで完全に出し尽くすというのと、あと4年生から吸収できるものはまだまだあると思うので、バスケ選手としてもそうだし、先輩としての姿を学びたいです。あとはチームとして、入れ替え戦は勝てたけど、課題が山積みで、インカレに関しても大阪産業大、拓殖大、大東大と留学生がいるチームとの対戦が続くので、相手への戦術的なアジャストをして、チームとしての完成度を上げていきたいです。
春日 来年最上級生になるので、4年生が今やっていることや、どういう姿勢でチームを率いているのかということを残りの期間で学ぶというのが気持ち的な部分です。コーチとしては、早稲田は勢いのある試合とそうでない試合というのが分かれてしまっているので、勢いのある試合がどうやって生まれているのかを個人的に試合を見て分析して、どうやったら選手たちに実践してもらえるのかというのをやっていきたいです。
――インカレに向けての意気込みをお願いします
井ノ山 インカレ日本一です。
春日 日本一です。
大倉 ハードワーク。
――ありがとうございました!
(取材・編集 落合俊 権藤彩乃)
◆井ノ山琉人(いのやま・りゅうと)(※写真左)
2001年5月19日生まれ。東京・豊多摩高出身。スポーツ科学部3年。 色紙『徹底』「徹底してやり切ることが大切だと感じるから」
◆大倉隆太(おおくら・りゅうた)(※写真中央)
2001年5月28日生まれ。東京・早実高出身。教育学部3年。 色紙『嬉し涙』「4年生とラストインカレで勝って嬉し泣きして終わりたい!!」
◆春日裕樹(かすが・ゆうき)(※写真右)
2001年11月5日生まれ。東京・国学院久我山高出身。文化構想学部3年。 色紙『雲を掴む』「倉石さんが理想のチーム像を語るときによくおっしゃる『雲を掴むような話だけどさ〜』から」