第44回全日本女子サッカー選手権大会 皇后杯1回戦早大31-02-11バニーズ群馬FCホワイトスター【得点】(早大)21・74分:笠原綺乃、87分:髙橋雛(バニーズ群馬FCホワイトスター)85分:大矢歩 ア式蹴球部女子(ア女)の『皇后杯JF…

第44回全日本女子サッカー選手権大会 皇后杯1回戦
早大1-0
2-1
バニーズ群馬FCホワイトスター
【得点】
(早大)21・74分:笠原綺乃、87分:髙橋雛
(バニーズ群馬FCホワイトスター)85分:大矢歩

 ア式蹴球部女子(ア女)の『皇后杯JFA第44回全日本女子サッカー選手権大会』(皇后杯)での戦いが幕を開けた。昨年は2回戦で皇后杯の舞台から姿を消すこととなったア女。今年こそ、昨年の結果を上回り、チームとしての目標であるWEリーグ勢撃破を達成したいところだ。そんなア女の1回戦の相手は、なでしこリーグ1部に所属するバニーズ群馬FCホワイトスター(群馬)。1年前に苦杯を味わった地・セイホクパーク石巻での一戦に臨んだ。序盤は相手にチャンスをつくられる場面もあったが無失点で切り抜ける。21分にMF笠原綺乃(スポ3=横須賀シーガルズJOY)のゴールで先制し勢いに乗ったア女。試合の主導権を握ると、74分に笠原の2得点目でリードを2点に広げる。その後1点を返されるが、直後にFW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)のダメ押しとなる一発が決まり3-1と快勝。皇后杯初戦を見事に突破した。

 


2ゴールで勝利に導いた笠原

 

 開始早々いきなりピンチを迎えたア女。自陣でのミスからディフェンスラインの背後に抜け出され、1対1の状況をつくられるが、GK近澤澪菜副将(スポ4=JFAアカデミー福島)の好セーブで間一髪、難を逃れる。このビッグプレーにより流れを手繰り寄せると、21分、ピッチ中央でボールを持った髙橋が右サイドへスルーパス。反応したMF三谷和華奈(スポ3=東京・十文字)がワンタッチで折り返し、最後は笠原が冷静にゴールへと流し込む。流れるような崩しを見せ、先制に成功した。続く34分にもMF築地育(スポ2=静岡・常葉大橘)の背後へのボールに再び抜け出した三谷がシュートを放つが、これは枠をとらえきれない。追加点こそ奪えなかったものの、リードして前半を折り返した。

 


開始早々のピンチを防いだ近澤。本当に止めて欲しいところで止める、まさに守護神としての働きを見せた

 後半に入ってもア女がボールを握る時間帯が続く。ボールを奪われてもすぐに奪い返すア女らしい守備を見せ、相手に反撃の機会を与えない。すると69分、ゴール前の混戦から髙橋が放ったシュートが相手のハンドを誘発し、PKを獲得する。しかしキッカーの髙橋が蹴ったボールは、相手GKにコースを読まれ止められてしまう。絶好機を逃し、相手に流れが渡ってしまうようにも思えたが、その直後に待望の追加点が生まれる。74分、ペナルティエリア手前でボールを拾った笠原が右足を一閃。シュートは相手GKの手が届かないコースに飛びそのままゴールへ吸い込まれた。「打ち切ったら良い感じに入ってくれた」と笠原。相手を突き放す貴重な一発となった。このまま逃げ切りたいア女だったが、85分、クロスから失点。1点差に詰め寄られる。嫌な展開が頭をよぎる中、そのわずか2分後、右サイドを強引に突破した吉野がエリア内でシュート。GKが弾いたこぼれ球を髙橋が押し込み、試合を決定づける3点目を奪う。そのまま3―1で試合は終了。ア女の皇后杯初戦は快勝に終わった。

 


笠原の2点目エリア外から放ったシュートはゴール左隅に吸い込まれた

 

 昨年は早々に去ることとなった皇后杯の舞台、さらに昨年敗れた石巻での試合。多少なりとも苦手意識や嫌な感覚はあっただろう。それでも「選手達がこの大事な初戦に勝つ、という強い意志のもとタフに戦ってくれた」と後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)。「楽しんでチャレンジャー精神をもって戦いました」と笠原。その結果、見事なでしこリーグ1部に所属する相手を撃破した。2回戦、同1部・ラブリッジ名古屋戦でも確実に白星を手にし、3回戦、4回戦と駒を進めていきたい。そしてその先に待ち受けるのがWEリーグ勢だ。「一つ一つ勝ってWEリーグへの挑戦権を自分たちでつかむ」と後藤監督。WEリーグ勢撃破のために、チームとして次なるステージを目指すア女の戦いの火蓋が今切って落とされた。

(記事 髙田凜太郎、写真 前田篤宏、取材 大幡拓登)

 


笠原の得点に喜ぶ井上。「今までで1番走ったんじゃないかな」とやり切った表情を見せた。

 

早大メンバー
ポジション背番号名前学部学年前所属
GK◎1近澤澪菜スポ4JFAアカデミー福島
DF夏目歩実スポ3宮城・聖和学園
DF13浦部美月スポ3スフィーダ世田谷FCユース
DF15田頭花菜スポ2東京・十文字
MF三谷和華奈スポ3東京・十文字
→63分18白井美羽スポ2ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF井上萌スポ4東京・十文字
MF14笠原綺乃スポ3横須賀シーガルズJOY
MF19築地育スポ2静岡・常葉大橘
→81分27生田七彩スポ1岡山・作陽
MF26宗形みなみスポ1マイナビ仙台レディースユース
FW10髙橋雛社4兵庫・日ノ本学園
FW11吉野真央スポ4宮城・聖和学園
◎=ゲームキャプテン

 

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――試合を率直に振り返っていかがですか

 3-1という結果でしたが相手の時間帯もありましたし、選手達がこの大事な初戦に勝つ、という強い意志のもとタフに戦ってくれた結果だと思っています。

――WEリーグ撃破という目標を掲げた中で、今日の試合はどのような位置付けでしたか

 なでしこリーグ1部は自分たちの上位リーグだと思っているので、チャレンジャーとして臨みました。ここから2つ、またなでしこリーグどの試合が控えていますし、一つ一つ勝ってWEリーグへの挑戦権を自分たちでつかんで、WEリーグという目標に自分たちの力を全てぶつけていくという思いでやっています。なのでフラットにというか、変に構えるとかではなく挑戦者としてただチャレンジしていくという感じです。

――井上選手の活躍も見られました

 試合が苦しくなればなるほど目立つというのはすごく良いことで、体力面も含め良いプレーをしてくれました。

――1点返されて嫌な雰囲気になったところでもう1点返して盛り返しました

 どの選手もですが、特に前線の選手が最後までよく走ってくれて、あそこで3点目を叩き込んでくれました。あの1点は本当に大きかったです。

――次戦は1週間後に迫ります

 次戦の相手は今年とても調子がいいので、そこをしっかり超えられるかどうか、今大会通してとても重要だと思います。黒柳美裕(令4スポ卒)や山田仁衣奈(令2スポ卒)も所属するチームなので、しっかりと戦っていきたいと思います。

 

近澤澪菜(スポ4=JFAアカデミー福島)

――今日の試合を終えて率直にいかがですか

 WE撃破という目標を掲げた中で、良い発進ができたので良かったと思います。

――大一番を前にチームの雰囲気はいかがでしたか

 関カレが終わってからチームの雰囲気はすごく良くて、トーナメントに向けて「やってやろう」という感じでモチベーションは高かったと思います。練習の中でも声かけや良い形はすごく多かったですし、そういった部分が今日しっかりと発揮できたかなと思います。

――今日の試合会場である石巻は去年の2回戦敗退の場でもありました。今日のプレーはいかがでしたか

 前半はもう少し落ち着いて、視野も広くプレーしなければいけないなと思いました。後半に入ってからは割と落ち着いて前線の方も見えていたし、裏に抜けてくる選手やショートカウンターに関しても対応できました。あの失点はもったいなかったですが、去年ここで負けてしまったのを払拭できたかなと思います。

――なんといっても序盤のビックセーブ、振り返っていかがですか

 いきなり入りで1対1がきたのは本当に良くないことだったとは思うのですが、そこで止められればチームに良い流れがくると思ったし、相手を勢いに乗らせないこともできると思っていました。しっかり落ち着いて足を出すことができてよかったです。

――風のコンディションは良くなかったと思いますが

 前半は風上だったのでよかったのですが、後半は向かい風でボールが止まったりするので、長いボールを躊躇してしまう部分がありました。ただ前線へのフィードやゴールキックに関してはファーストセカンドしっかりと拾ってくれたので、みんな良い反応をしてくれたと思います。

――公式戦でしばらく勝ちがついてこなかった中で、インカレの初戦という大事な試合で勝利することができました

 リーグ戦であれば、負けて良い試合はないながらも次があるというか、次改善の機会があると思うんです。でもトーナメントは負けたら終わりなので、その重みというのはみんな理解してくれていたと思います。試合前にもそこを確認しましたし、そこで勝ち切るという部分で次につなげられたと思います。

――今日はなでしこリーグ1部を相手に勝利しましたし、このレベルの相手どの試合がここから続くと思います。意気込みを聞かせてください

 正直なでしこ1部とか、格上とかはあまり気にしていないです。自分たちのやるべきことや理想のサッカーができれば、どんな相手にも勝てると思っているのでそれができるよう頑張っていきたいです。

 

MF井上萌(スポ4=東京・十文字)

――皇后杯初戦無事勝利を収めましたが今の率直な気持ちは

めちゃくちゃ安心してます。

――試合全体を振り返ってみてどういう試合だったと思いますか

相手が結構蹴ってくるチームだったので、そのロングボールに対する対応だったりとか、自分たちの時間がすごくつくりにくい試合だったなと一番に感じています。

――なでしこ1部の相手との対戦で得られた手応えみたいなものはありましたか

なでしこ1部(相手)にも、球際の強さだったり予測の守備は通用したなと思います。後は特に序盤とかは背後へのスルーパスなどのボールを通せたので、もっと怖い選手になれるなと思いました。

――ここから先の試合に向けてどのように準備していきたいですか

やはり大事な試合になってくると思うので、自分たちは守備から入るチームだよというのをもう一度再認識したいです。

 

笠原綺乃(スポ3=横須賀シーガルズJOY)

――試合を終えて率直な感想をお願いします

 守備のところなど課題はまだ残るゲームでしたが、その中でも大事な初戦を勝ち切れたので素直に嬉しいです。

――先制点を決めた瞬間の気持ちを教えてください

 最近の課題として、「こわさ」を出したいというのがあって。シュートや得点を狙っていきたいというのはあったので、それがパスではなくシュートを選ぶという結果につながったと思います。

――2得点目はスーパーなゴールでした

 あのエリアは得意なゾーンで、練習しているところでもあったので、まずシュートの意識を持つことができました。相手が寄せてくるのも感じたのですが、打ち切ったら良い感じに入ってくれました。

――多分1試合複数得点は今季初だと思いますが、得点に対する意識はいかがですか

 今日は後半の入りには外してしまったシュートもあったのですが、シュートの意識は常に持つことができました。今日その結果が出せたので、今後の皇后杯やインカレなど大事な試合で継続して結果を出せるようにしていきたいと思います。

――トーナメントという負けたら終わりの試合の中で、なでしこリーグ1部の強豪との試合でした。どのような感覚で望みましたか

 なかなか普段やれないような相手との試合ということで、まずは楽しんでチャレンジャー精神をもって戦いました。チーム全員の力で、1試合1試合勝利を収めていきたいと思います。

――次戦は名古屋戦です。ア女のOGの選手も多く所属するチームですが、意気込みを聞かせてください

 OGの選手とも対戦できるということでとても楽しみです。ただまずは自分のプレーをまずはしっかりして、得点やアシストという結果を残せれば良いと思います。