令和5年1月2日、3日。早稲田大学応援部は3年ぶりに東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)の沿道応援に臨んだ。計217.1キロメートルにわたってタスキをつなぐ競走部の選手を現地で応援できるのは3年ぶり。大手町、芦ノ湖、西新橋の3地点で選手に直…

 令和5年1月2日、3日。早稲田大学応援部は3年ぶりに東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)の沿道応援に臨んだ。計217.1キロメートルにわたってタスキをつなぐ競走部の選手を現地で応援できるのは3年ぶり。大手町、芦ノ湖、西新橋の3地点で選手に直接エールを届けた。また、箱根駅伝応援は例年、新体制一発目の表舞台でもある。令和5年度執行委員を筆頭に新生応援部がこの1年をスタートさせた。

 1月2日の早朝、応援部の姿は大手町にあった。下級生を中心に応援活動の準備を進める。全体集合ののち、朝7時を迎えるとついに各大学の応援が一斉に始まった。早大は『紺碧の空』からスタート。間垣皓介旗手(スポ3=宮城・仙台一)によって大校旗が高らかに掲揚され、永田新代表委員主将(教3=静岡・掛川西)を中心に校歌を3番まで振る。3年ぶりに第一応援歌と校歌が大手町の地に響いた。校歌を終えると、応援曲メドレーを繰り返す。早稲田を代表する応援曲の数々に、早朝から足を運んだ多くの観客も手拍子で盛り上がった。濃いエンジに染まった腕章を巻いたリーダー4年生が堂々とセンターリーダーを務めると、途中ではリーダー下級生もセンターリーダーを務めあげた。バンド演奏曲『SMILY』ではチアリーダーズが笑顔と演技で元気をもたらす。日の出から間もない寒さの中、観客の心を温め、早大全体の士気を確実に高めた。スタート時刻の8時に近づくと、応援曲メドレーを『コンバットマーチ』で締め、『紺碧の空』へ。1区走者の間瀬田純平(スポ1=佐賀・鳥栖工)を温かく送り出した。


間垣(右)の掲揚する大校旗と永田を先頭に送った『紺碧の空』


『早稲田』のパネルとともに『紺碧の空』で1区走者・間瀬田を見送る応援部

 間瀬田を送り出し、応援部は初日のゴール地点となる芦ノ湖へ直行する。移動の間に井川龍人(スポ4=熊本・九州学院)などの快走で早大は14位から5位へ急浮上。応援の熱意はさらに高まった。大手町から100キロメートル以上離れた芦ノ湖の沿道にも多くの観客が来訪する。準備が整うと、選手通過前から再び応援曲メドレーで空気を温めた。この日の芦ノ湖応援ではスペースが制限されていたこともあり、帝京大とスペースを共用するかたちに。帝京大の応援時には手拍子で盛り上げに貢献した。4度目のメドレーが終わりに差しかかり、ポイント人員から5区走者・伊藤大志(スポ2=長野・佐久長聖)が近づいているとの情報が。『コンバットマーチ』を終え、リーダー4年生6名を先頭に『紺碧の空』を繰り返す。4度目の『紺碧の空』を迎えると、ついにその瞬間は訪れた。通過する伊藤の方向を向きながら『紺碧の空』を送る。ラストスパートの伊藤の背中を後押しした。1日目の応援は往路5位という結果に結びついたが、目の前には多くの反省点が残る。夜はホテルで各パートや応援企画部門で集合、反省が行われ、翌日の応援に備えた。


『早稲田』『頑張れ』のパネルとともに5区走者・伊藤にエールを送る応援部

 総合順位を決する2日目。極寒の中、早朝にホテルを出発すると、準備ののち、この日も出走1時間前から応援が開始された。前日と同様、応援曲メドレーを繰り返すが、この日の芦ノ湖では『幸せの歌』『早稲田の翼』『大地を踏みて』『いざ青春の生命のしるし』など多くの応援歌を披露。バリエーション豊かな応援に加え、下級生も反省を踏まえ、より一層力を込めて演奏や応援に勤しんだ。出走時刻の8時を迎えると『コンバットマーチ』から『紺碧の空』へと切り替え。6分後、北村光(スポ3=群馬・樹徳)を見送り、応援部はすぐさま最終地点の西新橋へ向かった。


リーダー4年生を先頭に6区走者・北村にエールを送る応援部

 西新橋に余裕を持って到着すると、ここでも下級生を中心に準備開始。ゴールの大手町から約1キロメートル手前、ここまで200キロメートル以上タスキをつないできた早大に最後の一押しをすべく、全員が気合を持って臨んだ。初日の大手町と同様、『紺碧の空』、校旗掲揚で応援を開始し、チアリーダーズ演技や応援曲メドレーで10区走者・菅野雄太(教2=埼玉・西武文理)にエールを送る。応援開始から45分、13時15分を過ぎた頃、菅野が西新橋に近づいてくると、『紺碧の空』。隣にそびえ立っていた大校旗は、通路にまで旗をなびかせる迫力満点の旗礼を見せた。菅野の姿が見えなくなるまで『紺碧の空』で見送ると、その後は『コンバットマーチ』『紺碧の空』『得点校歌』、そして校歌1番。威力ある曲を次々と繰り出し、大手町へ駆ける菅野に最後の最後までエールを送った。


『早稲田』のパネルとともに10区走者・菅野にエールを送る応援部

 3年ぶりの箱根駅伝応援を終えた応援部。新体制移行直後から準備が急ピッチで進められ、現役部員全員にとって初の沿道応援を終えた。早大のランナーを力強く応援したことはもちろん、引退前に現地応援復活がかなわなかった令和3年度、4年度の執行委員への思いを背負った応援となったことであろう。無事に箱根駅伝応援を終えた応援部だが、代表委員主将の永田はその応援の出来について、「まだまだ」と語り、課題点を口にする。部員はこの1年間で着実に成長し、パワーアップした応援を見せていってくれることだろう。さあ、令和5年度早稲田大学応援部の始まりだ――。

(記事 横山勝興、写真 横松さくら、横山勝興)

コメント

永田新代表委員主将(教3=静岡・掛川西)

――箱根駅伝応援を終えて率直な感想を教えてください

 とても楽しかったです。新年一発目の活動でしたが、本当に濃厚な活動で、これからの1年で活動が次々と復活していくことが楽しみで仕方ないです。

――どのような目標を持って臨まれましたか

 競走部の方が目指している『総合5位以内』という目標はわれわれも意識していました。応援としては、箱根駅伝応援前の合同練習で「演技をしているだけ、演奏しているだけ」で気持ちが乗っていないと感じました。そういう団体にはなってはいけないと思っているので、この箱根駅伝応援で気持ちを前面に出していけたらと思っていました。

――目標を踏まえて、この2日間の出来はいかがでしたか

 まだまだですね。6位という結果で、5位まではあと一押しのところでした。そのあと一押しをするのが応援部だと思っていて、選手が限界を感じた時に応援部が応援することで選手を後押しできることもあると思います。おこがましいかもしれませんが、5位まであと一歩のところで箱根駅伝が終わってしまったところで、まだまだ自分たちに甘いところがあると感じました。演技自体もミスが散見されたりしたので、やはり甘いと思います。

――どのように修正していきたいですか

 一つ一つ向き合っていくしかないですね。例えば太鼓だったら、太鼓練習が2月から始まるので、ミスについて心配することなく想いを乗せて、心から楽しんで太鼓をたたくことができるような人間を育てたいです。他パートに関しては、演技と演奏だけに終始してしまっているところがあるので、他パートの責任者に伝えて、練習を通して改善してもらいたいと思います。

――実際に目の前で選手を見送った時の感想は

 本当に熱い気持ちでした。どんどん胸が熱くなっていきました。最初から気合は入れていましたが、選手が来るとまた違いました。20キロメートルを普通では考えられないペースで走っていますが、応援部の前を走っている時は少しだけ早く走っているように見えて、応援できて良かったと感じました。

――今後の意気込みをお願いします

 応援の場に来てくださる方々を統制して指揮すること、そしてその心をまとめて一丸にすることが応援部の目標だと思っています。応援部の助けがあったから勝てたと思ってもらえることが応援部の存在意義につながると思うので、これからこの代で目標を実践していきたいです。多くの人からの信頼を後輩に残してあげたいので、サークルの方々、一般の方々、一般学生の方々、OBOGの方々をつないで、応援部を中心に早稲田大学を一丸にしていきたいです。応援部としてもより魅力的な団体を目指していきます。

小野泰助副将兼リーダー練習責任者(文3=群馬・沼田)

――箱根駅伝応援を終えて率直な感想を教えてください

 たくさんのお客さんに見ていただいて、応援部としての自覚を改めて感じました。

――どのような目標を持って臨まれましたか

 一発目の大きな応援だったので、各学年がしっかり役割を果たすことが一番の目標でした。

――今回特に工夫した点は

 今回は発声ができなかったので、選手に気づいてもらうために、チアのパネルに加えて『紺碧の空』を流す時に校旗の校章が大きく見えるように傾けていました。視覚的なところを強化しました。

――実際に目の前で選手を見送った時の感想は

 長く走ってきた選手に応援部がいることを感じてもらって力になれればいいなと思っていました。「少しでも届いてくれ」という気持ちで(テクを)振っていました。

――1日目の夜には集合、反省を行っていました

 1日目の反省を2日目に生かせた部分はあると思います。決められた役割だけではなくて、端の方で当番が「今~位」「法政抜かすぞ」とスケッチブックに書いて部員に見せてくれていて、当番の思いが感じられて良かったと思います。

――今後の意気込みをお願いします

 応援をつくる3年生の想いに4年生がしっかり応えて、4年生も最大限自分ができることを考えて1年間実行していきたいです。

永井武尊リーダー会計責任者兼広報責任者(文3=熊本・済々黌)

――箱根駅伝応援を終えて率直な感想を教えてください

 3年ぶりということで、1個上、2個上のOBOGの方は現地で応援できなかったので、しっかり形にして終えられたことにほっとしています。

――どのような目標を持って臨まれましたか

 3年ぶりというところに大きな意味を感じています。1個上、2個上の方々は現地で応援を経験できなかったという点で、おのおのが先輩方の分までやり切りたいと思っていたのかなと感じています。

――実際に目の前で選手を見送った時の感想は

 思っている以上に一瞬で、そこは驚きました。

――選手に応援が届いた実感はありますか

 おこがましいかもしれませんが、一つ形として想いを(応援で)伝えることはできたのかなと思います。

――1日目の夜には集合、反省を行っていました

 昨日と比べて今日は臨機応変に対応してくれた部分は大きかったと思います。指示を受けてミスをしないという部分で補佐は大きな責任を持っていたと思うのですが、きっちりとこなしてくれたところは昨日と比べて改善された部分で、「よくやった」という思いです。

――今後の意気込みをお願いします

 選手があっての応援だと強く感じました。自分たちが応援できるのは選手の方々がいてこそなので、その選手の想いに応えるためにも選手に寄り添った応援を補佐とともにこの1年間考え抜いて一つ一つ形にしていきたいと思います。

平賀小絢応援企画責任者兼広報責任者(スポ3=東京・成蹊)

――箱根駅伝応援を終えて率直な感想を教えてください

 本当に楽しい2日間で、準備からいろいろ大変なこともありましたが、無事にみんなで応援して帰ってこれたことがまずは良かったと思います。

――2日間での変化は

 事前準備も頑張ってくれていましたが、2日間を通してさらに成長できたと感じたので、部全体としての意識も高まったと思います。あと今回の応援はかなり人数が限られていたので、これからは部全体にいい雰囲気を伝播させていくことができるように練習を重ねていきたいと思います。

――今回特に工夫した点は

 リーダーとチアリーダーズの発声が基本的に禁止されている状態で、走っていてこちら側をあまり見られない選手に一番届けられるのは音だと思っていました。他の2パート分の想いも乗せて届けることができるように下級生にも呼びかけて心がけるようにしていました。

――実際に目の前で選手を見送った時の感想は

 私たちが大手町の辺りから芦ノ湖まで移動しているところを5人の選手たちで走ってつないできていることに感銘を受けました。タスキがつながってきていることを往路と復路のゴール地点での応援で感じました。そういうところで応援させてもらえることがとてもありがたかったです。

――1日目の夜には集合、反省を行っていました

 2日目は慣れという部分もあるとは思いますが、補佐のみんなの表情が明るくなっていました。自らいろいろなメッセージを発信したり、笑顔でこちらに指示をしてくれている補佐が多かったので、そういう部分はこれからも生きてくると思います。これからも続けていってほしいです。

――今後の意気込みをお願いします

 参加した下級生や上級生の一人一人が応援に取り組んでいくことについて、役割を持っていない人でもしっかり考えて挑んできてくれたとこの2日間で感じました。より良い応援や自分たちができる最高の演奏やパフォーマンスについて常に考えながら、普段の練習や活動に取り組んでいく雰囲気づくりをしていきたいです。

大堀蘭乃音チアリーダーズ総務兼応援企画責任者(社3=東京・早実)

――箱根駅伝応援を終えて率直な感想を教えてください

 まずは安心感が一番大きいです。2日間通してOBOGの先輩方がたくさん来てくださっているのを見て、代交代をした実感が湧きました。

――どのような意識を持って臨まれましたか

 合同練習の後に小野が「応援を実現できなかった2代分の気持ちを込めて」と言っていたのを聞いて、そこから改めて全員がその気持ちで臨まないといけないと思っていました。例年、代交代後一発目の応援が箱根駅伝応援だと思うのですが、そこで2代分の思いを込めて、自分たちが完璧なものを持っていかないといけないという意識は、補佐も私たちも持っていました。

――今回特に工夫した点は

 遠くから選手が来るのでチアはパネルを見せることを工夫しました。あと私個人としては早スポさんの記事や連載を読んだりして、選手のことを知るようにしていました。元々応援する気持ちはあったのですが、記事を読んでさらにモチベーションを上げて応援させていただきました。

――実際に目の前で選手を見送った時の感想は

 選手の方々の速さに驚きました。

――選手に応援が届いた実感はありますか

 結果として6位という順位で、競走部さんの目標の『総合5位以内』には少し届かないかたちとなりました。選手に応援が届けられたか判断するのは難しいのですが、すごく悔いが残ったり大きなミスをしたわけではなかったので、(応援は)届けられたのかなと思っています。やり切る部分はやり切れたかなと思っています。

――1日目の夜には集合、反省を行っていました

 これが初めての応援企画補佐の仕事というのが純粋にうらやましいなと思いました。6月いっぱいまで彼らは応援企画補佐として活動するので、一発目でこれだけできるなら、あと6カ月でどうなっていくのかすごく楽しみですし、私たちももっとしっかりしていかなきゃいけない部分もこの2日間でたくさん見つかりました。自分たちは1年間ですが、補佐の彼らと今年度前期の応援企画部門をどれだけ良くしていけるか楽しみになりました。

――今後の意気込みをお願いします

 応援することについて、とことんこだわり抜いて考えたいと今回の応援活動を通じて改めて思いました。特に芦ノ湖の応援は選手との距離も近くて、走っている選手の表情も見えた中で、応援することについて自分の中で改めて考える機会を今回いただけました。応援に対して真摯に向き合いながら、もっと考え抜いていい応援をつくっていきたいと改めて思いました。