2016年関東学生春季リーグ(春季リーグ)以来、早稲田女子ハンドボール部が成し得ていなかった壁をついに乗り越えた。それは総当たり戦の一次リーグで4位以内に入り、上位リーグに進出すること。今年の目標としても上位リーグ進出を掲げており、ここま…

 2016年関東学生春季リーグ(春季リーグ)以来、早稲田女子ハンドボール部が成し得ていなかった壁をついに乗り越えた。それは総当たり戦の一次リーグで4位以内に入り、上位リーグに進出すること。今年の目標としても上位リーグ進出を掲げており、ここまでの試合では強豪を次々と撃破し順当に駒を進めてきた。この日行われた桐蔭横浜大戦は上位リーグ進出を賭けた大一番の試合であり、両校にとって負けられない戦いとなった。前半から早大がリードするも、後半一時は桐蔭横浜大にリードを許してしまう。しかし試合終了間際、山本桃虹(スポ3=東京・佼成学園女) が同点弾となるゴールを決め、23-23のドローで試合を終えた。得失点差で桐蔭横浜大に勝る早大は、2016年以来7年ぶり、創部以来2度目の上位リーグ進出を決めた。

 前半から試合の主導権を握ったのは早大だった。浦野詩織副将(スポ4=愛知・旭丘) のアウトカットインで先制点を奪うと、「タイミングを外すなどして決めることができた」という村上楓主将(スポ4=福岡・明光学園) のミドルシュートや青木里奈(スポ4=東京・白梅学園) のサイドシュートで幸先のいいスタートを切る。浦野とPV杉浦亜優(スポ2=愛知・名経大市邨) のコンビネーションも光りポストからも得点。試合終盤には同点に追いつかれるも浦野が3点連続でゴールを割り、12-10で前半を折り返した。


シュートを放つ浦野 今試合一段と得点力が光った

 逃げ切りたい後半、早大は退場者を出したことによる数的不利の状況に苦しんだ。後半6分、山本が退場するとディフェンス中に負傷した浦野も一時交代。桐蔭横浜大はその好機を逃さず、速攻やペナルティスローの獲得で勢いづく。そして後半中盤、ついに同点に追いつかれてしまう。山本や村上が相手ディフェンスの意表をついたシュートで得点するも、桐蔭横浜大も3連続得点で応戦。浦野も退場し、桐蔭横浜大が完全に主導権を握るかと思われた。しかし村上主将のチームを鼓舞する声かけで、守備からリズムをつくり着実に攻撃につなげていく。


ゴールを守る川村 この日相手の7メートルスローを止めるなど、1試合を通してキーピング力が光った 

 試合終盤は前戦の国士舘大戦に引き続き、1点を争う攻防となった。後半29分には井橋萌奈(スポ1=東京・白梅学園)のサイドシュートで22-23、同点の可能性を残して最終局面を迎えた。29分46秒、早大オフェンスに残された時間は14秒。「最後強く攻めよう」と浦野。誰一人として消極的な気持ちの選手はいなかった。体育館に熱気と緊張感が漂う中、落ち着いたパス回しから浦野がディフェンスを引き寄せ「あとは打つだけだった」(山本)シュートを山本が放ち、試合終了の笛が鳴った。この瞬間、歓声を上げ喜びで抱き合う選手たちの姿があった。  


試合後、喜びで抱き合う選手たち 

 「今回の試合は勝つ気でいたので、引き分けで上位リーグ進出というのは悔しい。」と川村が振り返るように選手たちは同点となった今回の試合に満足していない。だが、1試合を通してリードし最後の土壇場でも臆することなく攻め切った早大はドローゲーム以上の戦いをした。得失点差による上位リーグ進出とはなったが、選手一人一人が「勝ちたい」という強い気持ちで毎試合臨んだことが、得失点差で早大が勝った結果につながったのだろう。ここから始まる二次リーグは、一次リーグで早大が敗戦したチームとの戦いになる。「リベンジするチャンスなので、チャレンジャーとして勝ちにいきたい」と村上。更なる高みを目指す早稲田女子ハンドボール部から二次リーグも目が離せない。

(記事 渡辺詩乃、写真 丸山勝央)

 

関東学生春季リーグ
早大2312-10
11-13
23桐蔭横浜大
スタメン
GK 川村夏希(スポ4=東京・佼成学園女)
LW 井橋萌奈(スポ1=東京・白梅学園)
LB 浦野詩織(スポ4=愛知・旭丘)
PV 杉浦亜優(スポ2=愛知・名経大市邨)
CB 村上楓(スポ4=福岡・明光学園)
RB 山本桃虹(スポ3=東京・佼成学園女)
RW 青木里奈(スポ4=東京・白梅学園)
途中出場
LB 山野紗由(スポ2=北海道・釧路江南)
GK 作本夕莉(スポ1=福岡・明光学園)
 
コメント

※早大対桐蔭横浜大戦の次に控えていた国士舘大対日女体大の試合結果により、早大の上位リーグ進出の有無が変わる状況でこのインタビューを行いました。国士舘大対日女体大の試合結果により、早大の上位リーグ進出が確定しました。

川村夏希副将(スポ4=東京・佼成学園女)

――まずは上位リーグ進出おめでとうございます、率直な感想は

 実はまだわからなくて(笑)。(次に控える)試合で国士舘大と日女体大が対戦して、国士舘大が勝ったら上位リーグ進出が確定します。今回の試合は勝つ気でいたんですけど、引き分けで色々なことが重なって上位リーグ進出というのは悔しいです。勝って決めたかったのはまず一番にあります。ですがここ最近早稲田は上位リーグに行けていなかったので、OBOGの方もすごく喜んでくれると思うし、自分たちもすごくうれしいです。

――前半からリードする展開となりましたが、試合を振り返って

 リードはしていたのですが、なかなか自分たちのペースに持ち込めずに向こうのゆったりとしたペースにのまれてしまったと思います。ですが、その中でも頑張ってディフェンスをしてずっとリードし続けられたのは良かった点だと思います。

――桐蔭横浜大のオフェンスに対してはどのように守っていこうとしていましたか

 キーマンが3番と10番の子だったので、そこに強めに当たりにいってあとはポストだけを警戒しようと言っていました。最初の方はやられていましたが、試合が進むにつれて少しづつ対応できたのは良かったと思います。

――川村さんのキーピングで早大を引っ張っていましたが個人のプレーを振り返って

 私はこの試合も、春リーグ全体を通してあまりうまくいってないと思っているのですがみんながディフェンスをすごく守ってくれたからコースが限定されて私が止めることができました。そういったことも大事だとは自分でも思うのですが、もう少し止められるシュートがあったと自分の中では思うので、それは次の二次リーグにいかしていきたいです。

――二次リーグへの意気込みをお願いします

 上位と言っても、他の上位のチームには全敗しているところで絶対勝てると思っているので、絶対に勝って一つでも順位が上げられるように頑張りたいと思います。

村上楓主将(スポ4=福岡・明光学園)

――率直な感想は

 同点で終われて嬉しいですが、勝てない試合ではなかったので、せっかくなら勝って終わりたかったというところでは少し残念です。でも上位リーグに行ける可能性が高くなっているので嬉しいです。

――どのようなプレーがあれば勝ちきれましたか

 正直レフェリングに対して不満もありましたが、後半エースの浦野(詩織、スポ4=愛知・旭丘)が退場してしまったところが大きく、1人退場している場面で自分達の攻撃がなかなか上手くできませんでした。人数が少なかったですが、落ち着いてしっかりとシュートを決め切ることが出来れば、その後の流れを崩すことがなかったと思うので、そこがもったいなかったなと思います。

――個人のプレーを振り返っていかがですか

 今季なかなかミドルシュートが入りませんでしたが、今日の試合ではタイミングを外すなどして決めることができたので良かったです。ただもっと大事な場面で決められるところがたくさんあったので、もう少し確率を上げていく必要があると思います。

―― 一番最後のタイムアウトでは何を話しましたか

  相手が途中、自分に対してマンツーマンついてきていたので、もしかしたら最後自分にマンツーマンついてくるかもしれないねと話していて。もしマンツーマンつかれたら、自分が下がって7人攻撃をしようと言われていました。でも、つかれなかったので、エースの浦野が「最後強く攻めよう」と話をしていて、最後山本(桃虹、スポ3=東京・佼成学園女)が決めてくれたのでよかったと思います。

――二次リーグへの意気込みをお願いします

自分らが3敗した相手が上位3チームいるので、リベンジするチャンスなので、チャレンジャーとして勝ちに行けるように今週1週間練習したいと思います。

浦野詩織副将(スポ4=愛知・旭丘)

――率直な感想は

 ホッとしたのが率直な感想です。結果は上位にいくか下位にいくかはわからないのですが、最後の方負けていた中で引き分けにできたのはよかったです。

――最後の方は手に汗握る展開でした。試合全体を振り返って

 リードしていた時間は長かったのですが、そこで自分たちの流れに持っていけませんでした。全体的にプレッシャーを感じすぎてみんなの顔がこわばっていた試合でした。

――今日は一段と得点力が光っていました。個人のプレーを振り返って

 自分の中ではリーグを通して成長していかなければならないと思っていたので、いろいろな点を変えてみたり、試合中でも試行錯誤しながらプレーをしていたのが良い感じに出た試合でした。

――具体的にはどの部分を変えてみましたか

 やはり攻める意思があると、ディフェンスとの距離が近づき、自分も焦ってしまいます。スピードがあれば怖くもあるのですが、相手にとっても(距離が近いと)その分止めやすくなるので距離をとって攻めるのをずっと意識していました。

――2枚目の上から打っていたのはディフェンスとの距離感を意識してのことですか

 そうですね。エースはシュートを打たなければいけないポジションなので、序盤の方はアウトでカットインしていましたが、相手が対策してきて下がるのが早くなったのでここで打たなければエースとしてやっていけないと思いました。ちゃんと打ち込んで入ったのでよかっです。

――特に前半、ポストとの連携もうまくいっていたように見えました

 そうですね。ポストに動いてもらった方が自分的にはやりやすいことを練習から(杉浦)亜優に伝えていたことがハマったと思います。

――二次リーグへの意気込みをお願いします

 今日は引き分けでしたが、上位リーグでは自分たちが一次リーグで負けたチームとやります。自分たちがやるべきことをやらないで負けた試合もあったので、自分たちがやるべきことをやった上でどこまで通用するのか、勝つことを目標にして上位リーグに臨みたいです。

山本桃虹(スポ3=東京・佼成学園女)

――率直な感想は

 結果的には上位リーグにいける可能性が高くなって、ホッとしているのですが内容的にはもう少し反省してもう一回チームとして締めていかなければならないと思います。

――内容の反省点というのは具体的には

 前半に相手の左45度の子がすごく打ってきて、そのミドルシュートが入ってしまっていたのでそれを一本目で修正したかったです。打ったら入る人を、打たせっぱなしにしてしまっていたのでそれはこのリーグを通しての課題です。最後打たせないようにしようと言っていたところを今回繰り返してしまったところが駄目だったところだと思います。

――ここぞというところでシュートを決められていましたが、個人のプレーを振り返って

 楓さん(村上楓主将、スポ4=福岡・明光学園) がマンツーマンをつかれた時には自分がガツガツいこうという気持ちは準備していたのでそこはいけてよかったです。ですが後半の中盤に攻められなかったのでそこを強気なプレーをしたらチームの流れを変えられたと思います。なので試合を通してもっと強く攻めていきたいです。

――村上楓主将がマンツーマンをつかれていた時に意識したことは

 とりあえず逆速攻だけは無しにしようと話していました。

――最後に同点に追いついたシュートを振り返ってください

 結構楓さん(村上楓主将)と詩織さん(浦野詩織主将)が後半ガツガツいっていたので、マークが厚くなってくるから私の方フリーになると思っていました。なので最後(浦野)詩織さんが寄せてパスをしてくれて、あとは打つだけだったのでちゃんと決められてよかったです。

――二次リーグへの意気込みをお願いします

 もし上位リーグで戦うとしたら全敗のところなので、そこをもう一回1試合づつ勝ってリベンジしていきたいです。上位リーグに行った同士の一次リーグの結果が二次リーグでも反映されるので、早大は持ち点が0で不利ですがより上を目指していきたいです。