ロッテ・佐々木朗希は、昨年オフからポスティングシステムを使ってのメジャー移籍を訴え続けていたが、「時期尚早」とする球団側との話し合いが長期化。キャンプ直前の1月27日にようやく契約更改を行ない今季の移籍はひとまず消滅したが、まだまだメジャ…

 ロッテ・佐々木朗希は、昨年オフからポスティングシステムを使ってのメジャー移籍を訴え続けていたが、「時期尚早」とする球団側との話し合いが長期化。キャンプ直前の1月27日にようやく契約更改を行ない今季の移籍はひとまず消滅したが、まだまだメジャー挑戦をめぐっては今後もひと波乱ありそうな様相を呈している。

 そこで1960年代後半に現地でメジャーを見てきて、以来、"メジャー通"となった球界のご意見番・広岡達朗に今回の騒動について語ってもらった。


プロ入り後、一度も規定投球回に到達していないロッテ・佐々木朗希

 photo by Koike Yoshihiro

【規定投球回到達は一度もなし】

「佐々木が優秀な投手であるのは間違いない。ただ、中7日、中10日の間隔で投げても故障してしまう。それでもメジャーに行きたいというのは、どういうことか。考え方が自分本位すぎる。佐々木を見るために、ファンはお金を出して球場まで来ている。まずはきちっと1年間ローテーションを守りきらないと、アメリカに行っても誰も味方しないよ」

 広岡は厳しく吐き捨てた。

 佐々木は昨シーズン、7月24日のソフトバンク戦に先発後、左脇腹の肉離れにより離脱。1カ月半後の9月10日のソフトバンク戦に先発復帰し、同17日の西武戦にも登板するも、その後発熱を訴え、再び戦線離脱。

 ソフトバンクとのクライマックス・シリーズ(CS)ファーストステージ初戦で先発し、3回を打者9人完璧に抑えたところで交代。わずか41球での降板となり、これが佐々木にとって2023年シーズン最後の登板となった。

 昨シーズンの成績は15試合(91イニング)に登板して、7勝4敗、防御率1.78、奪三振135。

 1点以内に抑えながら6、7回で降板する試合が7試合もあり、球数も80〜90程度。首脳陣はこれだけ慎重に起用したにも関わらず、右手のマメ、左脇腹痛、発熱など、アスリートとして体力的な弱さを露呈している。まだ体ができていないのか、それとも強さが備わっていないのか。いずれにしても、そろそろ評価を下す段階にきている。

 佐々木の存在が一躍注目されるようになったのは、大船渡高3年だった2019年春、U−18日本代表合宿で163キロをマークしてからだ。その後、4球団競合の末にロッテ入団を果たすも、当初から体力面を不安視する声が多かった。そのためルーキーイヤーは、一軍はおろか、二軍でも投げさせずに体力強化に励んだ。

 2年目以降は体への負担を考慮して、十分に間隔を空けて登板。2022年は完全試合を達成するなど、才能の片鱗を見せつけたが、プロ入りしてから2ケタ勝利はもちろん、規定投球回に到達したことがないというのが現状だ。

「今すぐアメリカに行って、完璧にプログラムされたトレーニングで体づくりに励みたい気持ちはわからないわけではない。とはいえ順序というものがあるし、ロッテでやってきた4年間は無駄だったというのか? そうじゃないだろう。監督の吉井(理人)がコーチ時代からつきっきりでトレーニングして、球団も過保護と思われても仕方ない育成プランを作成し、体力強化に努めてきた。そこまでしたのは、なんとか育ってほしいと思ったからにほかならない。メジャー挑戦するにしても、応援されて行くべきではないか」

【ポスティングは選手の権利ではない】

 そして広岡は、佐々木が主張しているポスティングシステムについても、こう意見を述べる。

「ポスティングというのは球団の権利であって、選手の権利ではない。自分の意思でメジャーに行きたいなら、FAを獲るしかない。しかも25歳までにアメリカに行くと、マイナー契約しかできない仕組みなんだろ。仮にロッテがポスティングを認めたとしても、中4日で投げられないならメジャーなんて夢のまた夢。メジャーは日本みたいに中6日、中7日で回すことはしないだろうから、当然マイナーで調整することになる。球団も無理にメジャーに上げてケガでもされたら困るし、FA取得も早まるから中途半端な状態では上げない。中4日できっちり投げられる体力をつけてからメジャーに上げ、6年間やったほうが球団側も見返りが大きいはず。

 とにかく20歳ちょっとの選手が、メジャー願望があるからといってごねてまで交渉するなんて、自分の判断ではできないだろう。誰かがうしろで糸を引いているのかは置いておいて、佐々木の球速やポテンシャルだけで議論しても仕方がない。なにより耐久性がいまだ証明されていない投手であり、こういう選手をメジャーは本当にほしいのだろうか。まずは佐々木が、今シーズンをどう戦うかが重要だろう」

 最後に広岡は、新たなルールづくりが必要だと、声を大にして言った。

「なんで日本のいい選手をメジャーが獲って、メジャーで通用しなくなった選手を日本が獲らなきゃいけないの? 結局、日本は素人が道楽で球団を持っていたツケが回ってきたんだよ。何年も前から叫ばれているけど、このままずっと今と変わらない状態でいたら、佐々木のように『オレはメジャーに行く』って、25歳になる前にどんどん流出するかもしれない。そうなれば、日本のプロ野球は確実にダメになる。こんなわかりきったことをいつまで言わせるんだ。メジャーに行った者は何年間か日本球界に戻れないとか、ポスティングを含めてもっと健全的なルールづくりをしていかないと」

 これまでも大谷翔平をはじめ、「日本球界の至宝」たちが次々と海を渡った。広岡は何もせずに、ただ指をくわえて見過ごすことが許せないのだろう。日本球界の尊厳を守るためにも、きちんとルールをつくるべきだと主張する。いずれにしても、本当の意味で転換期に来ているのは間違いない。