高校相撲は、誰が高校横綱になるのかという個人戦も面白いが、1校3~5人で競い合う団体戦も魅力である。全国高等学校総合体育大会(インターハイ)の場合は5人制での戦いとなり、先に3人が勝利した時点でそのチームが勝つということになるが、どんな場合…
高校相撲は、誰が高校横綱になるのかという個人戦も面白いが、1校3~5人で競い合う団体戦も魅力である。
全国高等学校総合体育大会(インターハイ)の場合は5人制での戦いとなり、先に3人が勝利した時点でそのチームが勝つということになるが、どんな場合でも5人が戦っていく。誰をどう配置していくのかというオーダーの組み方も、大事な作戦のひとつとなっていくであろう。
一発勝負でもあり、力の差がある相手であっても、ちょっとした番狂わせがあるのも面白さだ。そして、そのことにより、チーム全体が崩れていくことがないとも言いきれない。そのようなメンタル面も加味したうえで団体戦の戦いに注目した。
代表46校の2日間にわたって行われた予選(1~3回戦)の結果を踏まえて、優秀32校による決勝トーナメントは、8月6日(日)の朝9時から行われた。会場は団体戦独特の緊張感で包まれていた。
地元・宮城県の小牛田農林や加美農、あるいは岩手県の平舘などが登場すると、より厚い歓声で会場が包まれた。駅伝と同じで、一番一番は個人の対戦ではあるのだけれども、エントリー外の部員や控えの選手、番を終えた選手など、周囲のサポートの声が熱いのも団体戦ならではであろう。
熱い声援の中で「大丈夫、大丈夫!」という声が多く聞かれた。これは、学生相撲などでもよく聞かれる声援なのだが、肉体と肉体のぶつかる相撲競技。やはり、相手に対する恐怖心がまったくないのかと言えば、そんなことはないだろう。だから、その恐怖心に対して、仲間からの「大丈夫」の声によって勇気をもらえるのではないだろうか。
足立新田・田太隆靖君(左)と中津東・斉藤善君
多くの声援を浴びながら繰り広げられた熱戦は、都立足立新田の健闘が光った。1回戦では先鋒・田太隆靖君のはたき込みや、先の金沢大会で個人戦優勝を果たしている二陣の羽出山将君が突き落としで勝つなどして4対1で中津東(大分)を退けた。そして、2回戦でも田太君、羽出山君と連勝して、吉野魁人君は古庄海人君に寄り切られたものの、副将・二見颯騎君、大将・今関俊介君がともに押し出してのベスト8進出となった。
準々決勝でも、力では上かと思われた新潟の海洋に副将・二見君のすくい投げなどで勝利し3対2で、インターハイでは初となる準決勝進出を果たした。
準決勝では金沢学院に力負けし1対3で勝負が決したものの、大将戦で170cm75kgの今関君が182cm180kgの川渕一意君に対して、鋭い出足と速い動きにより翻弄して押し出したのは見事だったし、3年生としての意地も示したと言っていいであろう。
ベスト16(優秀16校)以降の戦いは以下の通り。
【2回戦】
諫早農(長崎)1-4足立新田(東京)
平舘(岩手)2-3海洋(新潟)
三本木農(青森)2-3箕島(和歌山)
文徳(熊本)2―3金沢学院(石川)
飛龍(静岡)1-4拓大紅陵(千葉)
近大附(大阪)1-4埼玉栄(埼玉)
鳥取城北(鳥取)5-0樟南(鹿児島)
愛工大名電(愛知)4-1向の岡工(神奈川)
【準々決勝】
足立新田3-2海洋
(田太隆靖○ 押し倒し ●深沢成矢/羽出山将○ 上手出し投げ ●中村泰輝/吉野魁人 ●すくい投げ ○嘉陽快宗/二見颯騎○ すくい投げ ●川邉颯太/今関俊介● 送り倒し ○高橋優太)
箕島2-3金沢学院
(福井秀三郎○ 突き出し ●池田俊/坂前由基● 下手投げ ○里山雄樹/山本航大● 押し倒し ○中島由雅/井田翔太○ 寄り倒し ●前田悠翔/松田隆志● 寄り倒し ○川渕一意)
拓大紅陵0-5埼玉栄
(水間龍● 寄り切り ○齋藤大輔/岸本渉利● 押し出し ○納谷幸之助/長谷川柊平● 押し出し ○塚原隆明/岸本梨久● 上手投げ ○神山龍一/大嶋淳史● 小手投げ ○手計富士紀)
鳥取城北5-0愛工大名電
(アマルサナー○ 上手出し投げ ●清水勘太/小関拓道○ はたき込み ●鳥居邦隆/石岡弥輝也○ 押し出し ●安井孝/當眞嗣斗○ 押し出し ●山口遼太朗/志戸俊輔○ 寄り切り● 柴田輝一)
【準決勝】
足立新田2-3金沢学院
(田太隆靖● 突き出し ○池田俊/羽出山将○ 寄り倒し ●里山雄樹/吉野魁人● 押し出し ○中島由雅/二見颯騎● 下手投げ ○前田悠翔/今関俊介○ 押し出し ●川渕一意)
埼玉栄2-3鳥取城北
(齋藤大輔● はたき込み ○アマルサナー/納谷幸之助○ 突き出し ●小関拓道/塚原隆明● 押し出し ○石岡弥輝也/神山龍一● 寄り倒し ○當眞嗣斗/手計富士紀○ 上手投げ● 志戸俊輔)
【決勝】
金沢学院3-2鳥取城北
(池田俊● 押し出し ○アマルサナー/里山雄樹○ はたき込み ●小関拓道/中島由雅●押し出し ○石岡弥輝也/前田悠翔○ 突き落とし ●當眞嗣斗/川渕一意○ 突き出し ●志戸俊輔)
優勝した金沢学院の表彰
優勝したのは金沢学院だったが、優勝候補の筆頭で連覇を狙った鳥取城北を1-2からの戯句点で下しての優勝は見事だった。副将戦で前田悠翔君が巨漢の當眞嗣斗君に真っ向からあたってすぐに突き落としたのが効いた。そして、タイとなっての最後の大将戦は川渕君が志戸俊輔君を圧倒した。
1年生の川渕君は最後の最後でプレッシャーのかかる中で責任を果たし、大きな身体を震わせて感涙にむせびながら勝ち名乗りを受けていたのが印象的だった。
シャープな動きを示した金沢学院・里山雄樹君撮影:手束仁
愛工大名電の部員たち撮影:手束仁
安定した強さを示した鳥取城北・石岡君撮影:手束仁
海洋・川邊君(左)と海洋・津志田君(右)の攻防撮影:手束仁
海洋・八幡君(顔)と明徳義塾・石崎君(明徳義塾)撮影:手束仁
健闘してベスト8に食い込んだ愛工大名電撮影:手束仁
準々決勝を前に、土俵を清める撮影:手束仁
相手の出方をしっかり読む、宇治山田商・小川大響君撮影:手束仁
足立新田・田太君(背中)と中津東・斉藤善君撮影:手束仁
足立新田・二見君撮影:手束仁
大会のポスターが至る場所に貼られている撮影:手束仁
団体戦の決勝トーナメントの熱戦撮影:手束仁
団体戦の最後を飾り優勝を決める金沢学院・川渕一意君撮影:手束仁
鳥取城北・井上俊男監督撮影:手束仁
鳥取城北・當眞嗣斗君撮影:手束仁
入念に土俵を履いて整えていく撮影:手束仁
熱気あふれる会場撮影:手束仁
熱戦!の様子撮影:手束仁
文徳・草野君(右)と金沢学院・前田君撮影:手束仁
優勝した金沢学院の表彰撮影:手束仁
優勝を決めて、感無量の金沢学院・川渕君撮影:手束仁