イランは前回3−0で完勝した相手だが、その試合でも前半は五分五分の内容で、後半に一瞬の隙を逃さず、南野拓実のアシストか…
イランは前回3−0で完勝した相手だが、その試合でも前半は五分五分の内容で、後半に一瞬の隙を逃さず、南野拓実のアシストから大迫勇也が先制ゴール。イランの自滅を誘う形となった。イランは当時のカルロス・ケイロス氏からアミール・ガレノイー監督に代わったが、基本的な特長は変わっていない。違ったのは徹底した日本対策を施してきたことだ。
エース格のメフディ・タレミを出場停止で欠いたイランだが、サイドから対角線にロングボールを入れて、折り返しにFWのサルダル・アズムンやサマン・ゴッドスが飛び込む形で、日本を脅かしてきた。それでも日本は左サイドを起点に、守田英正がFW上田綺世の粘り強いポストプレーを生かして中央を突破し、先制ゴールを流し込んだ。
1−0とリードした前半の残り時間も、日本はイランのロングボールに苦しめられていたが、左サイドでスタメン起用された前田大然の精力的な守備で、右の”発射台”であるラミン・レザイアンからのボールを限定することに成功しており、攻撃になれば久保建英がキープ力を生かして、イランのタイトな守備から中盤高めの主導権を握る流れを作っていた。
■機能しなかった交代策
後半にその前田と久保に代えて投入された三笘薫と南野拓実が十分に機能しなかったのは彼らだけのせいではない。遠藤航と守田がうまく守備参加できなかったように、攻撃してくるイランに対して、まず守備面の修復をしないまま曖昧に攻撃的なカードを切ってしまった。しかも、それまで日本の生命線になっていた二枚を削る形になったことで、イラン側は戦いやすくなったのだ。
試合後に遠藤が指摘していたように、もしイラン戦に勝つことだけを考えるなら相手を逆手に取って相手の裏を狙う”ロングボール返し”という方法もあったかもしれない。あるいは前半から対応に不安の出ていた板倉滉をチェンジするか、3バックにしてロングボールを跳ね返すパワーを高めてから、次の策に出るのか。
確かに延長戦も想定される中で、敵将のガレノイー監督が一枚もカードを切ってこなかったのは不気味だったが、手をこまねいていては危険な状況で、攻撃的なカードを二枚切っただけで、具体的な対策を伝えないまま、選手の”ピッチ内解決力”に委ねてしまったことは森保監督の失策と取られても仕方がない。
■「なりふり構わず戦っていくモード」
問題はその理由に、これだけ苦しい戦いの中で、やはり目線を世界に向けてしまっていたことだろう。このアジアの戦いにおいて、特定の対策に頼るようでは世界で戦っていけないという目線が、危機的な状況を乗り切るプランの実行に向かわせなかった。正直に言うと筆者も、今回の日本代表がチーム力を発揮できれば、相手の対策を乗り越えてアジアの頂点に立てる期待は持ってしまっていた。
選手たちのピーキングが、完璧に整っていたら、あるいはそうした理想的な流れもあったかもしれない。しかし、実際はグループリーグから苦しい戦いを強いられた中で、一旦は世界を頭から外して、このアジアカップを勝ち抜くために、なりふり構わず戦っていくモードになるべきだったかもしれない。
ただ、何事でもそうだが時間を巻き戻すことはできない以上、ここから最終予選など、どうアジアに向き合っていくか。そこで勝つために必要な一つ一つがけっして世界で戦う基準にはならないかもしれないが、アジアに目を向けずにアジアで勝ち切るほど、日本は圧倒的ではないという現実を受け入れて、成長と結果を並行させていくしか道がないのではないか。
(取材・文/河治良幸)