全日本学生選手権(インカレ)直前特集・第3回はフリースタイル部門の杉本志巧(スポ1=岐阜・帝京大可児)と宮沢海帆(スポ1=長野・白馬)。アルペンスノーボードを専門とする杉本選手と、エアリアルを専門とする宮沢選手の今まで、そしてこれからの競…

 全日本学生選手権(インカレ)直前特集・第3回はフリースタイル部門の杉本志巧(スポ1=岐阜・帝京大可児)と宮沢海帆(スポ1=長野・白馬)。アルペンスノーボードを専門とする杉本選手と、エアリアルを専門とする宮沢選手の今まで、そしてこれからの競技生活を伺った。

※この取材は10月11日に行われたものです。なおインカレはフリースタイル種目がないため、杉本選手、宮沢選手はインカレには出場されません。

「1年生全員仲がいい」(宮沢)


Wポーズをする杉本(写真左)と宮沢

――お互いに紹介をお願いします

宮沢 スノーボードアルペンをやっている杉本志巧さんです。団体で世界一を獲得しています(2022年ジュニア世界選手権、チームパラレルスラローム)。意外と周りから見てほんわかしている性格なんですけど、1年生内でミスがあった時には厳しく1年生をまとめ上げてくれる人です。

杉本 宮沢海帆さんはエアリアルの選手でもともとトランポリンをやっていたんですけど、スキーのエアリアルの競技を始めてすぐに大会で表彰台とか優勝、日本のトップになった選手です。優しそうなふわってした感じに見えると思うんですけど、仲良くなったら超イケイケな、First Loveを歌っちゃう感じの女の子です。

――お2人は結構仲がいいですか

宮沢 はい、いいと思います。1年生全員仲がいいです。

――この夏の印象的な思い出はありますか

杉本 自分たち2人とも別々の場所で海外に行っていて、自分はニュージーランドに行っていました。海帆は

宮沢 アメリカとか

杉本 に行っていました。ニュージーランドは毎年行っています。久しぶりにコロナが解禁されて、昨年も少しは行けたんですけど、今年は本格的に長く遠征に行けて、友達に再会できたのがいちばんの思い出です。

宮沢 寮内の話になるんですけど、1年生はすっごいみんなが仲良くて振り返って思い出に残っているのは、1年生同士で誕生日の人に向けて色紙に一言ずつメッセージを書いて送り合ったのが、私的には寮生活が始まったんだなと思って、すごい楽しかったり幸せだなって思ったりしました。

――お2人が初めて会ったのはいつか覚えていますか

杉本 入学して、寮に入った時です。

――その時の印象と今違うなと感じることはありますか

杉本 もう違うことだらけです。本当にこの今の対談の感じが初対面の感じだったんです。大人しい感じなのかなと思っていたんですけど、会ってみたら全然違います。

宮沢 初回はほんわかしてる選手で結構なんでも許してくれるのかなと思ってたら意外ときちっとしているところはきちっとしてて、でも楽しむ時とかきちっとしなくていいところはすごい笑ってくれる人なので、メリハリがある人だなと思います。

――スキーを始めたきっかけを教えてください

宮沢 もともとトランポリンをしていたんですけど、腰を痛めて伸び悩んでいた時期がありました。その時期にトランポリンのコーチに今のエアリアルという競技を教えていただいて始めました。

――エアリアルに出会ったのはいつ頃でしたか

宮沢 高校2年生です。

――杉本さんはいかがですか

杉本 スノーボードの競技をやっているんですが、お父さんがもともとW杯とかを回っていた選手で、父の影響で気づいた時には2歳くらいからボードをしていました。自分の競技はレースなんですけどお父さんもレースをやっていて、でもお父さんと同じ道は行きたくないという反抗心が昔はありました。スノーボードだとジャンプとかハーフパイプとか派手なスポーツが私はかっこいいと思っていて、中学生くらいまではずっとそっちの道を行っていました。お父さんに連れて行ってもらって平昌オリンピックを観戦しに行った時に韓国の選手がメダルを取って、その姿にすごく感動して自分もレースをやってみようと思ったのがきっかけで高校生になってから始めました。

――演技の種目からスピードの種目に変わると大変なことはありますか

杉本 大変なことというか、正直技や演技の種目は採点する審判のさじ加減で結果が変わってしまうところがあります。でもレースはそれがタイムなので、タイムは裏切らないというか、ちゃんと努力した人がタイムにつながります。だからこそ自分がちょっとでも怠けてしまうと負けてしまうというのがいちばん難しいなと思います。

――早大を選んだきっかけを教えてください

宮沢 トランポリンをやっていた時に一緒に練習していた早稲田の先輩でもあり高校の先輩でもある碓氷衣織(令5卒)さん、中学生の時から一緒に練習させてもらっていて、私は衣織さんの人柄がすごく好きで、ずっと仲良くさせていただいていました。たまたまご縁があったのか衣織さんと一緒の競技を始めて、衣織さんが早稲田に進学していたので私もチャレンジしてみたいなと思い、早稲田を選びました。

杉本 もともとずっとこの競技で世界を目指すと決めていました。この競技だけをやっていても、マイナースポーツということもありそれだけで食べていくというのはすごく難しいことだなと自覚していました。自覚しだしたころからセカンドキャリアのことも考えるようになって、早稲田大学にはスポーツビジネスなどスポーツをやる側だけじゃなくて、支える側、ビジネスという部分も特化している教授の方が多く、自分の競技力を活かしつつも競技を引退してからもしっかり自分で食べていけるように学んで知識を身につけたいなという気持ちがあり早稲田を選びました。

――入学して半年くらいですが、寮生活の好きな点はありますか

杉本 寮はスキー部だけの寮ですごく一体感があります。遊ぶ時はみんなで遊ぶし、厳しくする時はみんなで厳しくトレーニングに励むし、そういったメリハリがあってちゃんと楽しむところは楽しめるところが自分は好きです。

宮沢 私自身友達と一緒に楽しいことをするのが好きなので、みんなで遊びに行ったり、アイスを食べに行ったりするのが好きです。

「(昨シーズン)満足はできていない」(杉本)

――オフシーズンの練習の満足度や現在の調子はいかがですか

杉本 入学してから7月末までのトレーニングをいろいろな教授の方に見ていただいてトレーニングを積んだことで、競技に特化した体作りができていたなという自覚があって、それもニュージーランドの遠征の時の雪上トレーニングをしてみて改めて実感しました。

宮沢 夏の海外トレーニングの時に腰を痛めてしまって、私についていただいているトレーナーさんと相談しながら自分のメニューを少しずつやっています。すごく成長したという風には言えないんですけど、悪い状況から少しずつ変わってきているので、これからも変わっていきたいと思います。

――今年の夏は何に重点を置き練習していましたか

杉本 自分のやっているレースという競技は体重によって力の差が出るところがあります。今W杯に出ている選手は90キロ、100キロくらいの選手で、そのくらいの選手しか勝てないような世界です。自分は4月頃は65キロくらいしかなくてまだまだ世界の選手とは引けを取っていたので、体重を増やしつつもしっかりと動ける体を作っていかなければいけないと目標を立てていました。ただ食べて体重を増やすだけじゃなくて、しっかりと動ける体で体重を増やすということを意識していました。

宮沢 私自身が世界と比べてエアリアルの難しい技があまりたくさんできないです。すごくビビりで新しい技をする時に泣いちゃうんですよね。その怖いことに向かって自分を制御して立ち向かっていくことを頑張りました。

――昨シーズンの目標の達成度やシーズン全体の満足度はいかがですか

杉本 昨シーズンは2つ目標を立てていて、全日本選手権の優勝と世界ジュニア選手権の優勝を目標にしていました。満足度としては30、40%くらいで、あまり満足はしていません。なぜかというと全日本選手権は優勝することができたんですけど、世界ジュニア選手権は選考基準を満たすことができなくて出場すらできなかったことがいちばん悔しくて、満足はできていません。

宮沢 私が目標にしていた大会は(フリースタイルスキー)ノースアメリカンカップ(コンチネンタルカップ)で、入賞することを目標にしていました。あまり結果が良くなくて、そもそも自分の技の難しさと世界ですごく差がありました。昨年チャレンジした要素がたくさんあったんですけど、全然予定通りに進まなかったので私自身もあまり満足のできないシーズンになりました。

――昨シーズンの収穫や課題で今シーズン活かしたい点はありますか

杉本 昨シーズンからメンタルの面を克服すべきだなと感じています。世界ジュニア選手権に出場するための選考基準は自分の中では通過点としか考えていなくて、でも逆にしっかりとした結果を残さなければ、目標としている舞台にすら立てないということをスタート台ですごく考えてしまい、自分の滑りをすることができませんでした。その結果切符を取ることができなかったので、そういった状況になっても自分の実力を発揮できるようなメンタルを作っていかなければならないと感じています。

宮沢 私自身あまり良くないことなんですけど、1できるようになり次に2にチャレンジしている間に1を忘れてしまうことがあります。それのせいで何回も繰り返し繰り返しになって、イメージ練習もたくさんしていたんですけど昨年そういうダメなところを再発見できました。今シーズンはどうしたら自分は1を保ったまま2にチャレンジできるんだろうというのをすごく意識しながら練習できています。

――フリースタイル部門はどのような雰囲気ですか

杉本 フリースタイル部門は同じ競技の人がほとんどいない部門でそれぞれの練習というかたちになっています。クロスカントリー部門だとそれぞれがアドバイスし合えるという感じだと思うんですけども、(フリースタイル部門は)自分の競技のことは自分がいちばん分かっているというかたちです。それぞれ練習に専念しているという感じで、部門で集まった時はみんな仲良く、楽しくという雰囲気です。

宮沢 みんな違う競技で私はすごくジャンプをする競技で、志巧はそういう競技ではありません。例えば私に必要なトランポリンのトレーニングとかを志巧も一緒になってみんなでやりたいねという話をしていて、普段自分がトレーニングしていないことでもいろいろな経験ができるというのが私はいいところだと思います。

――チーム全体の雰囲気はいかがですか

杉本 部全体の雰囲気としてはやっぱり厳しくする時は厳しくする、みんなで楽しむところは楽しむというようなメリハリがしっかりできているチームです。みんな自分のトレーニングに対してストイックでそういう面に関してはすごく尊敬していますし、楽しむところはみんなで楽しめるのもすごく好きです。

宮沢 同じです(笑)。

――インカレの注目選手はどなたですか

杉本 3年生の大堰徳(スポ3=岩手・盛岡南)さんが自分の中では注目選手かなと思います。スキー部全体の合宿でエンドレスリレーという種目があり、5,6人のチームで800メートル走をリレーで繰り返して1人が800メートルを5本走るまで終われないというトレーニングをやりました。その時に徳さんは本当にとても追いつけないくらいのスピードで最後まで走っていて、フィジカルや陸上でのトレーニングですごくずば抜けているので、雪上でクロスカントリーという種目になった時もどうなるか自分はすごく楽しみで、注目選手だと思います。

宮沢 私はあまり皆さんと一緒に練習ができていないので(練習面のことは)わからないんですけど、日常生活の面では一緒の部屋の梓(小池梓、スポ1=北海道富良野)ちゃんと優風(山崎優風、スポ1=長野・飯山)ちゃんです。2人とも日常生活ではふわふわってしているんですけど、食事やストレッチとか普段からすごくストイックに、お互いを鼓舞し合って頑張っているんだろうなと私は見ていて思うので、2人のインカレの活躍がすごく楽しみです。神幸太朗(スポ1=北海道留萌)君は1年生のクロスカントリー部門の唯一の男の子なんですけど、すごく真面目で、競技に対してもすごく真面目です。

杉本 練習も最後まで真面目に取り組んでいるので大会でもしっかり結果を出してくれるなと感じているので、彼も注目選手です。

――目標としている選手はどなたですか

杉本 自分と同じ競技をやっている韓国の李相昊選手です。平昌オリンピックで銀メダル(パラレル大回転)を取った方で、自分がこの競技を始めるきっかけとなった選手です。彼の種目はアジア人選手は勝てないと言われ続けていました。足が長くて骨格的にも環境的にも雪が1年中あるヨーロッパの選手がずっと勝ち続けていました。そんな世間の声をはねのけて自国開催のオリンピックで銀メダルという活躍をして、W杯のシリーズチャンピオンに輝いた年もあり、同じアジア人の選手としてすごく尊敬できる、自分も目標にしたいと思っている選手です。

宮沢 私も同じ競技をやっているマリオン選手というカナダの選手です。もともとは体操競技をやっていたらしくて、技がものすごくきれいです。1つひとつの技を大切にしている選手で、そんな選手になりたいなと思います。

――今シーズンの目標を教えてください

杉本 今シーズンは昨シーズンと同じ目標を立てました。昨年はその舞台にすら立てなかったので今年はしっかりとメンタル面を強化して世界ジュニア選手権の舞台に立って優勝したいと思います。

宮沢 私は今シーズンW杯に出場できる予定なので、W杯で少しでもいい順位が取れるように頑張っていきたいと思います。

――最後に色紙に言葉を書くとしたらどんな言葉を書きますか

杉本 自分は「まっしぐら」です。それぞれトレーニングと向き合って頑張っている姿を見てきたので、自分たちの目標に向かってまっしぐらに進んでほしいという気持ちと、自分もまっしぐらに進んでいきたいなという気持ちです。

宮沢 私はエアリアルを本当に楽しんでやるぞということを自分の中で意識しているので、「楽しむ」です。

――ありがとうございました!

(取材・編集 堀内まさみ)

◆宮沢海帆(みやざわ・みほ)

長野・白馬高出身。スポーツ科学部1年。フリースタイル部門エアリアル。取材当時は夏の遠征中には手が回らなかった趣味に時間を費やしていたそうです。好きな映画は「レオン」。もともとトランポリンをされていたという経歴をもつ宮沢選手、雪上でのその華麗な技に注目です!

◆杉本志巧(すぎもと・しこう)

岐阜・帝京大可児高出身。スポーツ科学部1年。フリースタイル部門アルペンスノーボード。ハマっていることはカラオケ。杉本選手的スキー部カラオケ王は宮沢選手とアルペン部門の竹内一(スポ2=北海道・札幌第一)選手。「一さんの歌声は心にくる」。全日本選手権優勝という輝かしい実績をもつ杉本選手、今シーズンの滑りにも期待が高まります!