伊福陽太(政経3=京都・洛南)にとってエンジデビューとなった昨年の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)から一年。一年前とは異なり、上級生として、箱根経験者として迎えた今年の箱根は伊福にとってどのようなものとなったのか。そしてエンジラストイヤーの…

 伊福陽太(政経3=京都・洛南)にとってエンジデビューとなった昨年の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)から一年。一年前とは異なり、上級生として、箱根経験者として迎えた今年の箱根は伊福にとってどのようなものとなったのか。そしてエンジラストイヤーの目標とは。

※この取材は1月15日にオンラインで行われたものです。

コースを知っているので気持ちは軽かった


昨年も8区を走った伊福

ーー直前期はどのように調整していましたか

 10日前くらいから練習を落とすイメージでやっていて、最後の仕上げみたいな感じでした。

――体調などは問題なかったですか

 僕自身は問題なく、熱が出ることもなかったです。

――事前対談の際に「駅伝の怖さはまだある」とおっしゃっていましたが、箱根までに心理面などの変化はありましたか

 変化はなく、やはり怖くてブレーキになったらどうしようというのはありました。ただもうそれはしょうがないので、ある程度腹をくくるような感じではいました。

――8区の出走が決まったのはいつ頃ですか

 結構早くて、12月の頭の日体(日本体育大学長距離競技会)が終わった一週間後くらいには8割5分から9割くらいは8区のつもりでと言われていました。去年と違って、割と早めから伝えられていました。

――8区での出走が決まった時はどのような気持ちでしたか

 去年も走った区間なので、怖さはあまりなかったです。去年走ったイメージができたので、あれこれ考えたということもなかったです。

――経験がある区間での出走となりましたが、準備面で何か変えたことなどはありましたか

 レースプランは基本去年と同じで遊行寺の坂からが勝負する、ということでした。

――経験があったからこその、昨年と違いはありましたか

 気持ちは楽でした。レース配分とかコースの特徴とかはある程度把握しているつもりでいたので。

――7区のエントリー変更が前日に決まり、洛南高の諸冨湧(文4=京都・洛南)選手からタスキをもらうと決まった時に、何か思ったことなどはありましたか

 前日の夜に変更の話は聞きました。大学だけでなく高校から(一緒に)やってきた人なので、そこは素直にうれしかったです。

流れは変えないといけないと思っていた


箱根前合同取材での様子。色紙の言葉通りの走りを見せた

――7区までのレースというのはどのように見ていましたか

 直前にインフルで大志(伊藤大志次期駅伝主将、スポ3=長野・佐久長聖)と北村さん(光、スポ4=群馬・樹徳)が走れないことが決まりました。あまり想定していないエントリーになったところがあった中で、往路はいいかたちで終えてくれたと思います。ただ復路の6、7区は耐えのレースになるのかなと思っていました。自分がタスキもらうときは、5位で芦ノ湖をスタートしてから、9位まで落ちていたので、何とかしないととは思っていました。

――レース直前の調子はどのような感じでしたか

 若干腰と背中が張っていました。しかし、朝練をした感じで状態自体は悪くないと思っていました。割と走れるのかなと思ってスタートラインに立ちました。

――去年同様前後が近い中でタスキを貰いましたが、タスキを貰った時はどのように感じていましたか

 今年は前後に誰がいようが焦ることはなく、気にせず走ろうと思っていました。直後にもらった明大も芦ノ湖一斉スタート組なので、見かけより差はありましたし、前の帝京大は自分の力通り走れれば抜けると考えていました。ですので、そこまで意識はしなかったです。

――事前のレースプランと変えたところなどはありましたか?

 そんなに変えたところはなかったです。後ろに6秒差くらいで明大がいたので、追いついてくるだろうなとは思っていました。そこで最初は明大に引っ張ってもらおうかなとも考えていたのですけど、そこでけん制してペース落ちるのが一番良くないので。自分でペースを作ろうと思っていきました。

――シード権を争うチームとの差が少し縮まった中でタスキをもらいましたが、その差は意識していましたか

 9位だったので、自分が流れを変えないとシード争いにまきこまれてしまう可能性がありました。差はありましたけど、安全圏ではないなと思っていました。

――6、7区の結果というのは想定内でしたか

 6区は想定より悪いなという感じでしたけど、7区は想定通りでした。ただ総合的に見るといい流れではなかったなと思います。

――3キロ付近で明大と、5キロ過ぎで帝京大と集団を形成することになりました。集団走になってからもペースは変えずに走ったのでしょうか

 そうですね、あまりペースは変わってないと思います。マイペースに走りました。

――給水はどなたにお願いしましたか?

 僕からお願いしたわけではないですけど、10キロ地点が宮本(優希、人1=智辯学園和歌山 )で15キロが日野(斗馬、商3=愛媛・松山東)でしたね。声かけに関してはタイム差とか、今どれくらいで来てるかとかでした。日野に関しては「頑張れ」って励ましてくれました。宮本も何か言ってましたけど、それは聞き取れなかったです(笑)。

――レース中の花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)からの声かけで何か印象に残っているものはありますか?

 特別な声かけというよりかは全日本(全日本大学駅伝)の時と違って、ずっと後ろにいる安心感というのがありました。

――去年は上りで離されたとおっしゃっていましたが、今年は去年の経験が生きたのでしょうか

 いえ、経験は関係なく、それ以上に上りは苦手なのでひたすら耐えるだけでした。今年は去年ほど離されなかったので粘れたのかなと思います。

――レース後の取材でタスキを落としたと話していましたが、その時のことを振り返っていかがですか

 引っかかって、焦ってしまったのかなという感じです。結果的にそれで8区の早稲田記録を逃したのは悔しいですけど、今はもう割り切っています。

力は出せたが満足はしていない


今年の箱根で同期の日野から給水をもらう伊福

――事前対談の時に目標と言っていた、8区の早稲田記録に1秒と迫る結果となりましたが、ご自身のタイムについてはどう思いますか

 前半は割といい感じでしたけど、後半あまり伸びなかったので大満足ではないです。最低限、64分台が出せたので良かったです。

――結果的に8区でシード権は安全圏になったと思いますが、箱根全体で見た時のご自身の走りはどのように振り返りますか

 8区で流れは多少は戻せたのかなと思いますけど、満足はしていないです。

――自身の結果に関して花田駅伝監督から何か言われたことはありますか

 全日本と同じような展開の中で、今回は自分の力が出せたのは良かったと言われました。ただ、区間5位ですし、来年はもっと上の結果が求められるのでそこを目指して頑張ろうという感じです。

――自分自身の走りの満足度はどれくらいですか

 75点くらいですかね。80点はいかないです。悪い部分ももちろんありましたし。

――来年も8区を走りたいと思いますか

 2年走ったし、来年も走ろうかなと。適性がない区間なのは分かってますけど、経験してきた区間ですし、どうせなら最後早稲田記録作って名前を残したいとは思ってます。

――全日本のリベンジは成功したと思いますか

 駅伝の怖さはなくなりました。リベンジが完全に果たせたかは分からないですけど、悪いイメージは払しょくできたかなと思います。ただ全日本のリベンジは全日本を走らないと何とも言えないので。ただいいきっかけにはなったのかと思います。

――10区を走った菅野雄太選手(教3=埼玉・西武学園文理)と2年連続でまったく同じ区間順位となりましたが、ライバル意識はありますか

 ライバル意識というよりも、お互い頑張っていければいいなと思います。区間順位が2年連続で同じなのは、面白いと思いました。

――解散期間はどのように過ごしていましたか

 解散期間はありましたけど、すぐ延岡のマラソン(延岡西日本マラソン)があるので練習してました。少しはゆっくりしましたけど、箱根の1週間後にはポイント練習をしてました。

――チームで箱根の結果を振り返りましたか

 今年はシード権を取れてよかったかなと思う一方で、こんな順位で終わるチームではないよと、来年はもっと上を目指さいないといけない、という話は花田さんからされました。

――新チームに変わっていきますが、箱根後のチームの雰囲気はどのような感じでしょうか

 今は僕らが最上級生になって、これからどうしていとくかミーティングをしている段階です。箱根が終わって次は各々の競技に切り替えて行く時期なので、個人個人がしっかり高い目標をもってやっていると思います。

――チーム内での自身の立ち位置の変化はありますか

 あまり意識はしていないですけど、見られることが多くなる立場だとは思います。僕そこまで口で言えるタイプでもないので、変わらず黙々とやれればいいかなと思います。

――自分以外に期待している選手はいますか

 期待しているというか、自分たちの同期で今回走っていない、和田(悠都、先理3=東京・早実)、草野(洸正、商3=埼玉・浦和)、日野の三人は最後の一年になるので頑張ってほしいなと思います。やはり同期に頑張ってほしいです。

――今後の予定や目標を教えてください

 直近は延岡のマラソンなので、まずはそこで航希さん(佐藤、スポ4=宮崎日大)の去年の記録を超えたいと思っています。そのあとはトラックシーズンですが、関カレ(関東学生対校選手権)でハーフで勝負するのか1万に挑戦するのかというのはわかりません。ただ、今年の課題はトラックでのスピードだと思っているので、5000で13分代とか、1万でも28分20秒代とかそのあたりを目指して頑張っていきたいです。

――最終学年の目標を教えてください

 学生最後になるので悔いなく終われればいいと思います。

――ファンの方へメッセージをお願いします

 最低限元気に走ってる姿は見せれたと思うので、来年はもっと活躍していいかたちで終えられるように頑張りたいなと思います。今後とも応援お願いします。

――ありがとうございました!

(取材・編集 出口啓貴)

◆伊福陽太(いふく・ようた)

2002(平14)年12月23日生まれ。172センチ。京都・洛南高出身。政治経済学部3年。第100回箱根8区1時間4分56秒(区間5位)。京都出身の伊福選手、上京して3年がたちますがまだまだ関西弁は抜けないそうです。取材中もこてこての関西弁で応じてくれました。