2月7日のインテル・マイアミ戦では、新戦力のオビ・パウエル・オビンナや新井章太、宮代大聖、復帰組の岩波拓也らが新天地デ…

 2月7日のインテル・マイアミ戦では、新戦力のオビ・パウエル・オビンナ新井章太宮代大聖、復帰組の岩波拓也らが新天地デビューを果たしたヴィッセル神戸。このうち、ひと際、注目されたのが、元日本代表井手口陽介だった。

 ご存じの通り、井手口はヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代の日本代表では中盤の主力級に位置づけられた選手。2018年ロシアワールドカップ(W杯)アジア最終予選の大一番だった2017年8月のオーストラリア戦(埼玉)では、ダメ押しとなる2点目をゲット。W杯切符獲得の原動力となっている。

 翌2018年1月にはリーズ・ユナイテッドへ移籍。すぐにスペインのクロトゥラス・レオネッサへレンタル移籍するも、思うように出場機会を得られず、直後のロシアW杯も落選。翌シーズンはグロイター・フュルトへ2度目のレンタルに出るも成功を収められず、1年後の2019年夏にはガンバ大阪へ復帰した。

 それから2年半後の2022年1月にはセルティックへ。再び海外挑戦に赴くも、またも出番を得られず、昨年2月にはアビスパ福岡で再起を図った。その福岡にYBCルヴァンカップ獲得に貢献し、今年からJ1王者の神戸へ。今度はリーグ連覇とAFCチャンピオンズリーグACL)優勝を目指すことになったのである。

■攻撃時はダブルボランチ、守備時はアンカー+2IH

 山あり谷ありのキャリアを過ごしてきた男だが、大迫勇也山口蛍酒井高徳らは代表時代からよく知る面々。神戸への環境適応はスムーズだと見られた。実際、この日も後半15分から扇原貴宏と代わって中盤に入ったが、機を見て前線に飛び出すプレーなど披露。チームに新たなエッセンスをもたらしそうな予感を与えたのだ。

「自分はまだまだチームの戦術理解度を深めていかないといけない。まだまだ全然ダメだったと思います」と本人は厳しい自己評価を下したが、それはシンプルなダブルボランチではない神戸の中盤のメカニズムによるものだという。

 福岡はシンプルな2枚のボランチでやっているため、スッと入りこめたようだが、神戸の場合は守備時はダブルボランチ、攻撃時は1アンカーと2インサイドハーフ(IH)になるため、その都度、立ち位置が細かく変化する。2022年に横浜F・マリノスから神戸に赴いた扇原貴宏も「自分も適応するまでには時間がかかった」と話していたが、同じような壁に井手口もぶつかっている様子だ。

「僕個人としては『こういう時はどこにいたらいいんだろう』って考えちゃう部分がある。それを考えずに、体が先に動けるようになるぐらいまでやらないといけない」と本人もオートマチックに動けていない現状を吐露していたが、それができるようになれば、もっともっと彼のダイナミックさを発揮できるはずだ。

■山口蛍「チームの戦術の幅も広がると思います」

 それは代表でもコンビを組んでいた山口も太鼓判を押す部分である。

「陽介はここまでキャンプ通じてやってきた中で、神戸のテンポにまだ慣れていない気がする。でも彼は海外でも代表でもやっているし、経験があるから、本番までには連携面含めてうまくやってくれると思います」と背番号96をつけるキャプテンは期待を寄せる。

 井手口加入でさまざまな中盤の組み合わせや形が可能になるのもメリットだろう。

「今までだったら、中盤で僕が前に取りに行っていたところで、もう1人、陽介がいるということになるので、すごく大きいですよね。陽介がIHに入れば、アンカーの自分はセンターバック2枚と残ってリスク管理もできるからサイドバックも高い位置を取りやすい。それは昨年なかった形。チームの戦術の幅も広がると思います。

 自分がIHに入って、陽介がアンカーに入ることもできるだろうし、2ボランチでもやれる。ホントにいろんな組み合わせが考えられるんで楽しみですね」と山口は嬉しそうに語っていたが、彼のような新たな活力があってこそ、神戸はさらなる進化を遂げられるのだ。

 中盤の構成が変化することによって、大迫を起点としたタテの推進力に偏りがちだった攻撃に多様性が生まれ、異なる得点パターンが生まれれば理想的。井手口という重要なコマをうまく使いこなせるか否か。それが2024年の神戸のキーポイントと見ていいだろう。

(取材・文/元川悦子)

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