失点を減らすことだけがディフェンスの役割ではない。ボールを奪えばオフェンス陣が良い形で攻撃できるよう、ボールを回し、チャンスと見れば果敢に攻めかかる。さらに、ラクロスの基本戦術とされるクリアライドは最後尾からグラウンドを俯瞰(ふかん)す…
失点を減らすことだけがディフェンスの役割ではない。ボールを奪えばオフェンス陣が良い形で攻撃できるよう、ボールを回し、チャンスと見れば果敢に攻めかかる。さらに、ラクロスの基本戦術とされるクリアライドは最後尾からグラウンドを俯瞰(ふかん)するディフェンス陣の的確な指示出しなしでは成り立たない。第3回の対談では、そんな早大の守備陣を率いるMF杉本衡星副将(人科4=神奈川・桐光学園)、DF坂龍斗(社学4=東京・早実)、DF日吉壮太(政経4=埼玉・早大本庄)の3人に、4年間のラクロス人生そして集大成となる関東学生ラクロスリーグ戦(リーグ戦)への意気込みを伺った。
※この取材は7月5日に行われたものです。
「ディフェンスは何でもできる」(坂)
歓声にこたえるDF坂
――まず選手の方から見て右隣の方の紹介をしてください
日吉 杉本くんは、最近は日常生活では留学に向けて、英単語帳を使って勉強しています。ラクロスでは体が小さいのですが、あたりが強くて力強い選手です。
杉本 坂は仲が良い友達で普段プライベートでも遊びます。とにかくいいやつでDFリーダーをやっているのですが、DF陣のマネジメントを、優しさを使いながらうまくまとめているのかなと思います。
坂 日吉は最初の方は結構とがっていたのですけど、最近は大人になり始めて丸くなってきたなと思います。人間的にも4年間ですごく成長したのかなと。
――続いてラクロスを始めたきっかけを教えて下さい
日吉 姉がもともとラクロスをやっていて結構試合も見に行っていたので大学ではラクロスをやりたいなと思っていました。今は休部中の佐々木くん(MF佐々木優輝、教4=埼玉・早大本庄)と体験会に行ったらやはり面白くて入部を決意しました。
杉本 体育会に入りたくて。高校の時は サッカーをやっていたのですけど、やり切ったなというのがあって大学から始められそうなラクロスを選びました。
坂 同期に誘われたのと、高校までは遊んでちゃらちゃらしていたので、大学では真面目にガチな部活をやろうと思って入りました。
――今のポジションを始めたきっかけはありますか
日吉 自分はラクロスの動画を見ていて、オフェンスの人は叩かれて痛そうだったので。逆に叩く側だったら楽しいのではないかなと、あと棒が長くて持ったらかっこいいなと思ったのでディフェンスを始めました。
杉本 自分はショート(クロス)を使うDFなのですけど、最初は皆ショートを使って練習していたので、慣れているからというのがあります。あと3年生の時にショートでディフェンスをやった時にすごく楽しかったので、継続してやろうとなって今に至ります。
坂 自分はオフェンスのセンスがなさすぎて、ディフェンスを選びました。
――オフェンスのセンスとは具体的に何ですか
坂 1対1のキレですね。それが全然できなかったので、逆にDFは相手に着いていければ良かったので自分でもできるかなと思いました。
――やられているポジションの面白さは何かありますか
日吉 ディフェンスは単純に守っているだけでは、ボールを奪うことができないので。常に固定ではなく、最初から奪いに行ったり、相手が何をするのかを予測して動いたりするのが面白いと思います。
杉本 僕のポジションは長いクロスの人と比べて短いのですけど、短いクロスでも自分がボールを落とさせた時に対する喜びや、チームでうまく守れた時に魅力を感じます。
坂 ディフェンスは結構なんでもできるのかなと思っていて。守ることもできますし長さを活かしてオフェンスに参加して点を取ることもできるのでそこが魅力なのかなと思います。
――自分の強みや注目してほしいところはありますか
日吉 自分は今、クリアライドという戦術を担当していて、ライド(ボールを奪う戦術) に力を入れているのでそこに注目してもらえるとありがたいです。
杉本 相手を抜く力と、ボールを落とす力に注目してほしいです。
坂 僕は1対1に注目してください。
「強みを伸ばしているだけではうまくいかない」(日吉)
早慶戦で戦況を見つめるDF日吉
――今シーズンを振り返っていかがですか
坂 4年生は大変なのだなと思いました。今までは先輩に着いていくだけでなんとかなっていたのですけど、自分たちがチームを引っ張らなくてはいけないので。早慶戦(早慶定期戦)でも勝てなくて、うまくいかないなという時もあったのですけど、責任感があるおかげで勝つために頑張ろうと思います。
杉本 僕も同じになるのですが、4年生という最上級生としてまとめることにどうしたらうまくいくのかを自分自身も試行錯誤している段階で。最後の試合で、マネジメントをしてきてよかったと喜びを感じられるようにしたいので、まだまだ段階の途中です。
日吉 クリアライドという戦術の特性上、強みを伸ばしていくだけではうまくいかなくて全体の理解度を上げる必要性があるので。下級生が多いチームの中で、全体がどれだけ理解できているのかどこまで理解度を上げるのかと苦労している状況です。
――前半シーズンで出た課題は具体的に何かありますか
坂 まだ、思い切りが足りないかなと思います。いつも相手を吹っ飛ばすくらいでやれとは言っているのですけど、そこに関してはまだまだ伸ばす余地があります。
杉本 4年生が少ない中で、下級生の育成が課題かなと思います。具体的に言うなら戦術理解や試合に出るメンタリティーが足りていないところが今の課題です。
日吉 前回の練習試合の課題として、DF陣のパスキャッチ精度があります。そこの制度を上げてうまくクリアをすることがリーグ戦では重要になると思います。
――今の役職に就かれた経緯はありますか
坂 自分から(DFリーダーに)立候補しました。
杉本 僕も立候補なのですけど。3年生までは、学年キャプテンをやっていて、主将を話し合いで決めるなかで大暉(AT山﨑大暉主将、政経4=神奈川・鎌倉学園)がいいかなとなりました。そのうえで自分が学年キャプテンをやってきたからこそ、支える側になる必要があるかなと思ったので副将に立候補しました。
日吉 自分も立候補をして(クリアライドリーダに)なりました。というのも、2年生の時の、2個上の先輩方のクリアライドがすごくかっこよかったのでいつかそれにかかわる役職に就きたいと思ったからです。
――クリアライドの戦術理解はどのように深めていますか
日吉 実践の練習もそうなのですけど、一番は、動画を見返したミーティングが重要になってくると思います。ただ今年下級生が多いことから、授業抜けがあるので全体として集まってミーティングをできる機会がないので、そういう点では昨年と比べると劣ってしまうのかなと思います。
――リーグ戦に向けて注目している選手はいますか
杉本 2年生の野沢くん(DF野沢想大、政経2=東京・桐朋)に注目しています。前まではロングを使うポジションをやっていたのですけど、それだと活躍する機会が少ないのでショートディフェンスでやっています。適応能力がすごく高くて、また話を自分に聞きに来てくれる姿勢もすごく良くて活躍してほしいなと思います。
日吉 自分は、3年生の坂本くん(G坂本直追弥、政経3=東京・早大学院)に注目してほしいです。去年まではオフェンスの選手だったのですけど、今年からGに転向しました。他大のGとはくらべものにならないくらい、クロスワークやパスがうまいので彼を中心にクリアが決まることを楽しみにしています。
坂 松尾くん(AT松尾昇太、法4=埼玉・早大本庄)です。彼はまだ公式戦で爆発しきれていないので、リーグ戦での爆発を期待しています。
――4年生はどういった学年ですか
坂 ちょうどよく変な奴が多いです。人数が少ない分、全体的に仲が良いかなと思います。全体で集まって話すことが多いので。
――2、3年生はどういった学年ですか
坂 3年生はやんちゃな子が多いですね(笑)。2年生は真面目な子が多いですけど、まだ被っているというか。本性を出し切れていないのかなと思います。
「リーグ戦は初戦次第」(杉本)
1on1をするMF杉本副将
――リーグ戦で山場になる相手はどこだと思いますか
坂 初戦や法大戦含めて全部です。
杉本 初戦次第かなと思います。全部の試合で集中しなくてはいけないのですけど、初戦の結果で出方も変わってくると思うので。
――初戦の武蔵大にたいして注意したいことはあります
坂 ミドルシュートがうまいので、そこでどれだけ点を抑えられるかだと思います。
――法大戦に向けては対策されていることはありますか
杉本 今までの法大戦で出た反省を修正して、相手の強みを守るというのが一つ。あと一つは、自分らの強みはオフェンスもディフェンスも全員で攻めて守ることなのでそこを法大戦で上回れたら勝利は望めるのかなと思います。
――ラクロス部での思い出はありますか
日吉 自分は今年の早慶戦が結構悔しくて、準備していたライドがはまらなかったのもありますし、早慶戦では絶対に勝ちたかったので。
杉本 僕は去年のファイナル4(関東学生リーグ戦ファイナル4)で負けて引退した時が悔しい思い出です。4年生とラクロスをやるのがすごく楽しかったので、これで終わりなのだ、あっけないなと思ったのが記憶に残っています。
坂 逆に楽しかった思い出として。去年の主将(MF斎藤励、令創理5卒=東京・早大学院)がリーグ戦の慶大戦で最後に点を決めて追いついたときにすごく熱くなったことです。
――最後にリーグ戦への意気込みをお願いします
日吉 リーグ戦では早慶戦や六大戦とは違った戦術を使って各試合を戦っていきたいと思います。ですので、1試合ごとに変わっていくクリアライドに注目してほしいです。
杉本 試合で何か特別なことができるわけではなく、今までの練習がすべて反映されるので、空回りをしないように冷静にやることを意識したいです。
坂 点を取ります!
――ありがとうございました!
(取材・編集 飯田諒 写真 廣野一眞、飯田諒、早大ラクロス部男子提供)
リーグ戦に向けて意気込みを書いてもらいました!
◆DF坂龍斗(※写真左)
2001(平13)年6月30日生まれ。173センチ。東京・早稲田実業出身。社会科学部4年。趣味はサウナ巡り。おすすめのサウナは椎名町にある「五色湯」だそうで、温度は100度を超えるのだとか…!
◆MF杉本衡星(※写真中央)
2001(平13)年10月8日生まれ。165センチ。神奈川・桐光学園出身。人間科学部4年。釣りが趣味な、杉本選手は釣りのためだけに沼津に行ったのだとか。朝が早いラクロス部にピッタリの趣味ですね!
◆DF日吉壮太(※写真右)
2001(平13)年6月27日生まれ。178センチ。埼玉・早大本庄出身。政治経済学部4年。二郎系ラーメンが大好きな日吉選手は、全マシが基本。莫大なカロリーを力に変え、パワフルなディフェンスに期待です!