サッカーの勢力図に、変化が起こるかもしれない。現在カタールで開催されているアジアカップで、東南アジア勢の奮闘が目立つの…
サッカーの勢力図に、変化が起こるかもしれない。現在カタールで開催されているアジアカップで、東南アジア勢の奮闘が目立つのだ。潮流の変わり目に、サッカージャーナリスト大住良之が目を凝らす。
■敗退した2チームの奮闘
カタールで行われているAFCアジアカップもグループステージが終了し、ラウンド16からのノックアウトステージが始まる。ここまで36試合。目を引いたのは、東南アジア勢の躍進だ。ノックアウトステージに残ったのは、F組を2位で通過したタイとD組3位ながらも他のグループとの比較で生き残ったインドネシアの2チームだけだが、D組のベトナムとE組のマレーシアも大奮闘を見せた。
フィリップ・トルシエ監督が率いたベトナムは、初戦で一時、日本を2-1とリード、結果的には2-4の敗戦となったが、クォリティーの高い攻守を見せた。その後、インドネシアに0-1で敗れたものの、イラクを相手にした最終戦では、先制し、逆転されても後半アディショナルタイムに追いつき、残念ながらアディショナルタイムの12分に決勝点を許すという好勝負を演じ、観客席を熱狂させた。
「3連敗」という結果だけでなく東南アジアのライバルでもあるインドネシアに敗れたことで、ベトナム国内ではトルシエ監督に対する批判が殺到しているという。しかし、トルシエが指揮を執り続けるなら、ベトナム国民の勤勉な性格を生かしたサッカーはこれからどんどん伸びるのではないかと思われた。
マレーシアを率いたのは、韓国人の金判坤(キム・パンゴン)監督。ヨルダンに0-4で屈し、バーレーンにも0-1で敗れて臨んだ最後の韓国戦では、後半に追いついて逆転し、アディショナルタイムに逆転を許したものの、その15分目に劇的な同点ゴールを記録して3-3の引き分けに持ち込んだ。
韓国に圧倒的に支配され、攻め込まれながらも、小柄な左FWのファイサル・ハリムを中心にカウンター攻撃をかけ、守ってはベルギーU-19代表の経歴をもつDFディオン・コールズを中心に、孫興民(ソン・フンミン)、李康仁(イ・ガンイン)、曺圭成(チョ・ギュソン)といった韓国のスター攻撃陣のシュートを最後のところでブロックした。
■かつてのアジアサッカーの中心地
東南アジアは1960年代までアジアのサッカーの中心地と言ってよかった。しかし、どの国も体が小さく、韓国やイスラエル、イランといったフィジカルの強い国々が伸びてくると、次第に競争力を弱め、出遅れていたサウジアラビアや日本にも1980年代には勝てなくなって弱体化した。
アジアカップでは、インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナムの「4か国共同開催」で行われた2007年大会にホストの4か国が予選抜きで出場したが、4チームの合計成績は3勝2分け7敗、総得点11、総失点26。ノックアウトステージに進出できたのは日本が入ったB組で2位になったベトナムただひとつで、このベトナムも、準々決勝でイラクに0-2で敗れて姿を消した。
続く2011年大会、2015年大会では、東南アジアのチームはすべて予選で敗退して出場はゼロという寂しい状態が続く。アジアカップの決勝大会に出場できないようでは、ワールドカップ出場など遠い夢であるのは当然だ。過去22回のワールドカップに東南アジアから出場を果たしたのは1938年(フランス大会)の「オランダ領東インド(現在のインドネシア)」1つだけ。それも、日中戦争の長期化で日本が予選を棄権したため、予選なしの出場だった。決勝大会では1回戦でハンガリーに0-6で大敗を喫している。