サウナカミーナ座談会 中編(前編:「DDTをサウナにする」ウナカミーナの4人が語る、サウナとプロレスの共通点>>)『マツコの知らない世界』(TBS系列)でサウナの魅力をプレゼンし、そのキャラクターが話題になったDDTプロレスリングの超人気ユ…

サウナカミーナ座談会 中編

(前編:「DDTをサウナにする」ウナカミーナの4人が語る、サウナとプロレスの共通点>>)

『マツコの知らない世界』(TBS系列)でサウナの魅力をプレゼンし、そのキャラクターが話題になったDDTプロレスリングの超人気ユニット「The37KAMIINA(サウナカミーナ)」。上野勇希、MAO、勝俣瞬馬、小嶋斗偉の4人による座談会の中編では、サウナカミーナの前身である「DDTサウナ部」の結成秘話、一時5人ユニットになった経緯、サウナカミーナ存続の危機について聞いた。


ユニット結成のきっかけ、存続の危機について語ったサウナカミーナの(左から)小嶋斗偉、上野勇希、MAO、勝俣瞬馬 photo by 林ユバ

【ユニット結成のきっかけになった竹下幸之介の

「誘い」】

――「DDTサウナ部」結成の経緯を教えてください。

勝俣瞬馬(以下、勝俣):2019年7月に熊本大会があって、大会終わりに竹下幸之介(AEWとDDTの二団体所属)が「西の聖地って言われてる『湯らっくす』っていうところがあるから、サウナ行こうよ」と、僕と上野さんを誘ってきたんです。「サウナ→水風呂→外気浴」という流れを3セットやるという、サウナの入り方もそこで教わりました。「サウナ最高だね!」となって、Twitter(現X)で「#DDTサウナ部」とツイートしたのがきっかけです。

MAO:その時は「#DDTラーメン部」とかいろんなものがあったから。ハッシュタグをつけてツイートするムーブメントがあったんですよ。

勝俣:僕と上野がハマって、MAOに「サウナ、めっちゃ気持ちいいから行こうよ」と誘うようになりました。

MAO:急に、みんなが変な言葉を発し始めたんですよ。「アウフグースがいい」「ロウリュがいい」とか、「整う」「この水風呂、〇℃やな」とか。「何を言ってるんだ!?」って興味が沸くじゃないですか。周りから固められたんです。

勝俣:そこから4人でサウナに行ったりして、鶯谷の「萩の湯」で新年会をしたりしましたね。コロナ禍以降は4人で行くことはなくなったけど、各々で"サ活"はしてました。

MAO:ユニットもバラバラだったので、本当にただの部活でしたね。

勝俣:僕と竹下はALL OUT。MAOはMoonlightExpress。上野さんはDISASTER BOX。

上野勇希(以下、上野):そして、小嶋は練習生。

勝俣:コロナ禍でお客さんを入れない無観客でやった時に、「DDTサウナ部、始動!」っていうカードを組んだんですよ。

MAO:別々のユニットだったんですけど、サウナ部という部活動をリング上に持ち込んだら......それが思いの外、ハマった。

勝俣:(DDT社長の)高木三四郎さんの目に留まったというか。

MAO:会社的にも目に留まったし、我々もしっくり来たし。

上野:サウナに入りながら、「俺らが組んだらこんな連係技できるな」と話してて、「組んだら、強ない?」みたいな発想から、実際に「組もう」となったんです。

勝俣:後々わかったんですけど、竹下は「それを見据えて部活動を作った」と言っていました。竹下、上野、勝俣、MAOが組んだら、めちゃくちゃいいチームができるんじゃないかと思って、我々をサウナに誘い、まんまとみんながハマり、サウナカミーナができたと。

上野:操られてたんやなあ!

勝俣:「俺はわかってたんや」って言ってましたね。

上野:DDTサウナ部で試合をやっていく中で、みんなのユニットが解散して、正式なチームにしようということになったんです。ユニット名もめちゃめちゃ考えました。

MAO:名前を考えるの、楽しかったよなあ。サウナにまつわるいろんな言葉を調べて、サウナは「37」にしようとか。売れてるバンドはだいたい数字が入ってるという、僕の考えがあったので。あとはTHE BLUE HEARTS、THE BEATLESみたいに、読まない「THE」を入れようとか。

勝俣:僕はフィンランド語を入れたくて。カミーナはフィンランド語で「ストーブ」という意味です。

MAO:サウナカミーナとして活動してたら、ある日、つきまとってくる新人レスラー(小嶋)が現れたんですよ。お客さんの前で言えばなんとかなると思ったのか、リング上で「サウナカミーナに入れてください!」と言い出して。「何を言ってるんだ、こいつは?」と思った。

上野:「サウナ、大好きでーす!」って言ってたね。

MAO:明らかに嘘をついてる奴が現れたんですよ。

小嶋斗偉(以下、小嶋):嘘じゃないですよ!

MAO:それを3回くらい繰り返して、見かねた竹下さんが「そんなに入りたいんやったら、自力で勝利しろ」と言って、そこから自力初勝利に向けて頑張る日々が始まったんです。

小嶋:それで頑張ってたら、試合中に肘を脱臼したんです......。

一同:ハハハハハ!

MAO:でも、肘を脱臼しながら闘い抜いた根性を買われて、入れたんですよ。

小嶋:そのあとの復帰戦で自力初勝利して、「勝ちました」と言ったんですが、「お前、後輩に勝ってそんなこと言うのか」みたいになって......それでサウナカミーナの人たちと試合をしたらボコボコにされたんですけど、僕の気持ちを伝えたら入れてもらえました。

上野:"査定マッチ"というか。肘を脱臼した時もそうですけど、小嶋の持ってる思いはアッチアチだったんですよね。だから「一緒にやろうか」という感じで。

MAO:共通の趣味をユニットにして、かつ最前線まで行ったケースはないと思う。

上野:リング上で闘ったりしてユニットになることはあっても、僕たちは完全にリング外で仲良くなり、「試合でもイケるよね」となった。普通とは順番が逆ですね。

勝俣:他のユニットより絆があるのは、やっぱり裸の付き合いをしているから。

MAO:裸の付き合い、あるよねえ。

勝俣:現在DDTにある他のユニットは、たぶん裸の付き合いなんてしてないけど、僕たちは生まれたままの姿を見せ合っている。そういうところから距離は縮まるんです。初めて会った人でも、サウナに入ると仲良くなれますし。

上野:一緒にサウナに行って、そのあとにご飯を食べたりお酒を飲んだりしていると、リズム感がどんどん合ってくる。試合でも「今これをしたいんだな」というのを感じ取りやすくなるんですよね。わかりますもんね、呼吸の吸い方で。

MAO:サウナに入るとニュータイプになるかもしれないですね。

勝俣:どういうこと?

MAO:わかりあえるんです。......『機動戦士ガンダム』の話です(笑)。

【発起人・竹下のまさかの行動に「ああ、もう敵なんだな」】

――昨年7月23日の両国国技館大会後に、サウナカミーナのメンバーだった竹下幸之介選手が、ヒールユニット「DAMNATION T.A」の佐々木大輔選手と共闘。その後、ふたりは上野選手に共闘を持ちかけました。上野選手は迷っているようにも見えましたが、他のメンバーはどう感じていましたか?

勝俣:僕は欠場していたので、口を出せなかった部分もあったんですけど。竹下が佐々木と共闘した時はすごく寂しかったし、「そっちに行かないでほしい」と心の底から思いました。上野さんは「たぶん大丈夫だ」と思っていたけど、僕はリングで闘うことも表現することもできなかったので、悔しい思いはありましたね。

――その一週間後、7月30日の後楽園ホール大会では、勝俣選手が松葉杖でリングに上がる場面もありました。

MAO:そこで佐々木が瞬馬の杖を蹴飛ばして、竹下さんがただただ傍観してたのが僕は悲しかったです。佐々木と共闘するのもわかるんだけど、一歩間違えたら瞬馬の欠場がもっと延びるかもしれないようなことされて、「なんで助けないんですか?」って。友だちなのに。

 あの瞬間に、「ああ、もう敵なんだな、この人は」って思ったかな。それはメインイベントの後だったけど、僕たちは明るく大会を締めたいんです。お客さんに楽しく帰ってほしい。でも、その大会はバッドエンドというか、暗く締まってしまったことは僕の中で後悔として残ってます。

勝俣:僕はキャリアの半分くらい、竹下とプロレスをしてきたんです。ALL OUTから始まり、プライベートでも一緒で、サウナを教えてくれて僕の人生を変えてくれた人が、サウナカミーナを離れようとしたのが本当に悲しかった。

――最初に竹下選手を拒絶したのは小嶋選手でしたね。

小嶋:強くなりたかったら、上野さんも竹下さんのほうに行きたくなるかもしれないと、僕はちょっと思ったんです。上野さんを信じてはいるけど、強くなりたいっていう欲が勝つかもしれない。それをどうしても止めたくて、突っぱねちゃいました。

――上野選手は小嶋選手が危惧していたように、迷いもあった?

上野:KO-D無差別級チャンピオンになりたい、DDTを背負いたいという気持ちがあるのに、なかなか結果に繋がっていなかった。「強くなるにはどうすればいいか?」「DDTを背負うにはどうすればいいか?」と考えた時に、「自分の中のベストがどこにあるのか」というのは常に考えていましたね。

 佐々木、竹下とやったほうが、簡単に自分が変わった気になれるし、簡単に強くなった気になれるんだろうとは思いました。でも、自分の気持ちの奥底と向き合って「それは本当に自分が表現したいことなのか?」と考えた時に、やっぱり違った。サウナカミーナのクリエイティブさ、貪欲さこそが、僕にとって大事なんだろうなと。それで、ふたりのところには行かなかったです。

――サウナカミーナのクリエイティブさとは?

上野:まず、それぞれにやりたいことがある。例えば10分で終わる試合の中でも、僕たちは常に「どうすれば新しいもの、面白いものをお客さんに届けられるか」を考えて試合に臨んでいる。自分たちが思う面白いものを表現しようとしているのが、この4人。もちろん竹下もそうなんですけどね。

MAO:僕は後先とかを考えないんです。たぶん滅茶苦茶やっても、上野がなんとかしてくれるっていうのがあるから、MAOもMAOでいられる。DDT全体で見ても、ものすごい人たちがいますし。みんなで綺麗な六角形を作るようなイメージですね。足りないところは僕が補うし、逆に僕にはできないことがいっぱいあるから、そこは他の人たちに任せようと。それが結果、クリエイティブになるのかな。

勝俣:その通りですね。自分にないものをみんながカバーし合って闘えるのが、サウナカミーナなんです。

小嶋:僕は"ないもの"だらけなので。今は必死に頑張るしかないし、先輩たちの背中を見て徐々にいいものを取り入れたい。サウナカミーナに入る前から見ていましたが、みなさんが天才としか思えないんですよ。そんな部分が僕にはないから、ついていくには頑張るしかない。

上野:俺たちが天才かどうかはわからんけど、少なくとも小嶋は天才だから大丈夫! 俺らは常人で、一生懸命考えながらやってるんですよ。小嶋、お前は天才だよ。

MAO:紙一重だよね。アホと天才を行ったり来たりする(笑)。

上野:大丈夫。爆発間近ですよ。

(後編:「サウナ界でもプロレス界でもトップを獲りたい」サウナカミーナが語る野望>>)

【プロフィール】
●勝俣瞬馬(かつまた・しゅんま)/水風呂担当

1992年12月9日、千葉県柏市生まれ。The37KAMIINAの長男的存在。サウナ好きが高じて熱波師の資格を取得し、サウナシュラン2021に輝いた館山のサウナ「SeaSaunaShack」の総支配人を務めている。アウフグース、ととのえスプラッシュなどサウナにちなんだ技を多数使う。デスマッチファイターとしても名高い。167cm、75kg。X:@k_shunma_ddt

●MAO(まお)/炭酸風呂担当

1997年1月28日、宮城県大崎市生まれ。中学生時代にプロレスをする動画をYouTubeに投稿し、それがきっかけとなりDDTに入団した異色の経歴を持つ。自慢の跳躍力を生かしたファイトで、海外でも活躍中。社長である高木三四郎を度々車で轢くクレイジーな一面を持つ。DDT UNIVERSAL王者。180cm、85kg。X:@xinomaox

●上野勇希(うえの・ゆうき)/シャワー担当

1995年9月1日、大阪府八尾市生まれ。端正なルックスと鍛え上げられた肉体で、華麗な空中殺法を得意とする。2023年11月、KO-D無差別級王座を戴冠し、名実ともにDDTのエースとなった。竹下幸之介の高校の同級生で、竹下を応援するために会場で観戦したことをきっかけにプロレスラーを志した。KO-D無差別級王者。174cm、80kg。X:@dna_ueno

●小嶋斗偉(こじま・とうい)/薪担当

1999年12月8日、埼玉県さいたま市生まれ。デビューして1年目に自らThe37KAMIINAへの加入を直訴し、その熱意を認められて加入したThe37KAMIINAの末っ子的存在。普段はほのぼのした喋り方の癒し系な存在だが、試合になると鋭いチョップと負けん気の強さを見せるDDT若手の有望株。アジアタッグ王者。177cm、80kg。X:@toy_ddt_k