第37回関東大学女子サッカーリーグ早大20-0(前半)2-0(後半)0日大【得点】(早大)67分:築地育、90+2分: 杉山遥菜(日大)なし 関東大学女子サッカーリーグ(関カレ)第7節、ア式蹴球部女子(ア女)はアウェイ日大戦に臨んだ。前半か…

第37回関東大学女子サッカーリーグ
早大0-0(前半)
2-0(後半)
日大
【得点】
(早大)67分:築地育、90+2分: 杉山遥菜
(日大)なし

 関東大学女子サッカーリーグ(関カレ)第7節、ア式蹴球部女子(ア女)はアウェイ日大戦に臨んだ。前半からア女が主導権を握りながら、多くのチャンスを創出。後半に入り67分、最前線でパスを受けたMF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)が落ち着いて決め先制する。押し込まれる時間も続いた追加タイムには、コーナーキック(CK)のクリアボールをDF杉山遥菜(スポ1=東京・十文字)がダイレクトに叩き込み2点目。見事、関カレ3連勝となった。

 


2点目を喜ぶ選手たち。杉山のスーパーゴールには会場が沸いた

 2022年12月28日、第31回全国大学女子サッカー選手権(インカレ)3回戦、日大戦。ア女の2022シーズンが終わった日だ。1リーグ戦とはいえ、今季の日大戦には特別な重みがある。「(今日の試合を)乗り越えなければいけないところだと思っていた」と語ったのはDF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)。2023シーズン、新たなア女のスタイルと想いを示すべく、苦い記憶を想起させる深紅のホームカラーが随所にあしらわれた、日大稲城グラウンドに乗り込んだ。

 開始直後から、試合はまさに“熱戦”の様相を帯びた。11分、左サイドからクロスを上げられるが、相手フォワードのトラップが大きくなったところを杉山とGK石田心菜(スポ3=大阪学芸)が抑えた。13分には、右サイドでMF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)のパスを受けた築地が、思い切りよくゴールを狙うがキーパー正面。この時間帯から、次第にア女が主導権を掌握する。26分、右サイドのプレスからMF三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)がボールを奪うと、引き取ったMF宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)が強烈なシュートを放つ。28分にもMF後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)のパスを受けた宗形がエリア内まで運び、相手ディフェンダーをさらりとかわしてシュート。いずれもゴールとはならなかったが、2年生で唯一スタメン入りを果たしている宗形はこの日もア女の攻撃をけん引した。しかし40分には築地のバックパスを奪われ際どいシュートを許すなど、危険なシーンも。随所で相手の怖さも見せられた前半の45分。スコアレスで試合を折り返した。

 


インサイドハーフで出場した築地。昨年慣れ親しんだポジションで躍動した

 後半に入ると、序盤は相手の勢いに押される展開に。53分には中央の守備網を突破されると、エリア外からシュートを許したが枠外。56分には自陣内でスローインを奪われると、25メートル超の強烈なロングシュートを食らうが、石田がはじき出した。シュートこそ打たれど決定機を作らせない守備陣の奮闘生きてか、試合は徐々にア女ペースに。62分には三谷のクロスにMF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)が飛び込むが惜しくも合わず。それでも67分、中盤で受けた宗形から、途中投入されたFW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)に鋭いスルーパスが入る。最前線まで上がってきていた築地が千葉からのパスを受けると、少し運んでから落ち着いて左足を振り抜きゴール。値千金の先制点となった。さらに78分、巧みなボールさばきでキープした宗形からパスを受けた築地が、左サイドからクロス。逆サイドからMF木南花菜(スポ3=ちふれASエルフェン埼玉マリ)が飛び込んできたが、惜しくもシュートはキーパーの好セーブに防がれてしまう。両チームの意地の見える攻防が続く試合終盤、追加タイム。CKのクリアボールを、エリア外で待ち構えていた杉山が捉えダイレクトシュート。地を這う鋭いシュートはゴール右下に突き刺さり、貴重な2ゴール目となった。結局試合はそのまま、2-0で終了。6月の対強豪4連戦の初戦を、完全勝利で飾った。

 


途中出場の木南。積極的にゴール前へ走りこみゴールを狙った

 良い守備から良い攻撃を繰り出す、ア女の良さが前面に出た試合だった。「戦術的なところは積み重ねつつも、みんなで戦うという意識はどんどん高めていけたら」と話したのは先制点の築地。築地がインサイドハーフで出場したこと然り、細かな選手のポジションチェンジが功を奏したとも言える。これで関カレは3連勝。勝ち星を重ねられているだけでなく、失点数も2と第7節終了時点でリーグ最少だ。関カレはここから佳境に入る。未だ負けなしで首位に立つ山梨学院大から4位の帝京平成大までの、実力が拮抗(きっこう)した強豪校同士の直接対決が目白押しだ。それでも「相手の順位が上だとか、強豪だとかは考えずに自分たちの中で向き合って、良い結果に結びつけていきたい」と夏目。敵は自分自身。向き合い、高め合いながら、ア女は頂の景色を目指す。

(記事 大幡拓登、写真 星野有哉、渡辺詩乃)

 


スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション背番号名前学部学年前所属
GK石田心菜スポ3大阪学芸
DF夏目歩実スポ4宮城・聖和学園
DF堀内璃子スポ4宮城・常盤木学園
DF25杉山遥菜スポ1東京・十文字
MF◎後藤若葉スポ4日テレ・メニーナ
→82分28﨑岡由真スポ1埼玉・浦和レッズレディースユース
MF浦部美月スポ4スフィーダ世田谷FCユース
MF笠原綺乃スポ4横須賀シーガルズJOY
MF三谷和華奈スポ4東京・十文字
→76分13木南花菜スポ3ちふれASエルフェン埼玉マリ
MF10築地育スポ3静岡・常葉大橘
MF白井美羽スポ3ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
→61分26千葉梨々花スポ1東京・十文字
MF11宗形みなみスポ2マイナビ仙台レディースユース
◎=ゲームキャプテン
コメント

夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)

――まずは90分間を率直に振り返っていかがですか

 ひとまず2-0の勝利という結果で終えられてほっとしています。

――ア女ペースの時間もありましたが、90分間主導権を握り合った、という展開でした

 前半の入りは特に良くてそこから良いペースをつかめた時間もあったんですが、やっぱり流れの悪い時間も長く合った中でそこを耐え抜くことができたというのは大きかったと思います。後半の入りもなかなか締まらずに入ってしまったので、そこは自分たちの課題だなとは思いつつも、そこで失点しなかったこと、攻撃陣が1点を取ってくれたこと、そして最後まで気を引き締めて勝ち切ることができたということに関しては、主導権を握られる時間があったにしろ、今日の収穫になったかなと思います。

――今日の最終ラインは夏目選手が中央に入っていました。日大対策が反映された配置でしたか

 日大だから、というわけではないとは思います。今週のトレーニングの試合で、左をやったり真ん中をやったりとどっちもやらせてもらった中で、ハマったのがたまたま自分が中で璃子が左だった、という感じで今週はこれで行こうとなったんだと思います。

――日大が後ろからつないでくるというスタイルだからこそコーチングの生きる場面も多かったんじゃないかと思いますが、いかがですか

 やっぱり自分の武器の1つとしている部分ですし、(最終ラインの)中央だと1番よく見えるので、そこはコーチングしやすかったというところも含めて、声を切らさないことを意識してプレーしていました。

――学連の選抜チームでチームメイトだった選手(FW渡邊莉沙子、日大)とのマッチアップシーンも多かったと思いますが、どのように感じましたか

 やっぱり一緒にやっていて上手いのは分かっていましたし、身長もあってスピードもあってという、なかなかフォワードでいないタイプの選手なので、「うわー」というか(笑)。地域対抗戦もアメリカ遠征も一緒に行っていた選手だったので、「マッチアップは嫌だな」と思いつつも、もちろんやらせたくないという思いはあったので、結果的にゼロで抑えられたのは良かったかなと思います。

――日大戦、というとリベンジの意味も込められた試合になったと思いますが、試合前に思うところはありましたか

 試合前は特に考えなかったですが、試合前日には「あそこから5ヵ月か」という気持ちはありましたし、ここは乗り越えなければいけないところだと思っていました。チームが変わったとはいえ、あそこで昨シーズンが終わってしまったのは記憶に大きく残っている部分ではあったので、今日こうやって1つ壁を乗り越えることができて安心しています。

――ここから6月は日体大、東洋大、帝京平成大とタフな相手との試合が続きます。意気込みを聞かせてください

 毎シーズン6月は強豪との対戦が重なる時期で、試合後に史さんも言っていたことですが、試合の内容を見つめ直して、一つずつ積み上げていけば良い結果にもつながっていくと思います。相手の順位が上だとか、強豪だとかは考えずに自分たちの中で向き合って、良い結果に結びつけていきたいです。

 

築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)

――1点目のゴールシーンを振り返っていかがですか

 高い位置でボールをもらったら、ちゃんと前に自分が抜け出すという意識はずっと持っていました。今日はインサイドハーフから裏とかに顔出すというところをしっかり続けてきた中で、りり(千葉梨々花、スポ1=東京・十文字)からすごいいいボールもらえたので、よかったです。

――今日はアンカーではなく、インサイドハーフでの出場だったと思うのですが、その点はいかがでしょうか

 (自分は)元々アンカーなので、本職とは1個高い位置というところで攻撃的な意識を持っていました。去年もインサイドハーフを長くやらせてもらった中で、やっぱり点に絡むというところが自分の強みだったので、そこを結果で出せてよかったと思います。

――日大はパス繋いでくるスタイルでしたが、プレスについて意識していたことはありますか

 やはり前からプレスをかけて、高いところで奪うというのがア女のサッカーなので、それを今日前半からやろうとみんなで話していました。前から(プレスを)かけられてはいたのですが、やはり最後の寄せとか、1個ついてくところで奪い切れなくて、剥がされちゃってというところで苦しい時間もあったので、そこをもう1回みんなで詰めていこうっていう話を全体でもしました。また次節に向けてそこをみんなで合わせていけたらなと思います。

――これでリーグ3試合連続無失点になりました。守備に関してはどのように評価していますか

 自分はアンカーもやっているので、ア女の守備陣の運動量とか体の張り方とか、そういうところが(他の)どのチーム見てもア女の強みだなと思いますね。今日も攻撃になったり、守備になったりと(展開が)激しく変わる中で、みんな集中力を切らさずに守備を続けてくれたというところが、やっぱり前線の人も勢いを持って動ける1つの要因になったと思います。いつも自分も後ろの人にも感謝しているし、心菜(石田心菜、スポ3=大阪学芸)キーパーでちゃんと止めるところで止めてくれて、 チームに勢いをもたもたしてくれるので、またそこでみんな勢いに乗れました。次の試合もみんなで戦っていきたいなって思います。

――次節以降強豪との試合が続きますが、どのように戦っていきたいですか

  チームとして「あ、ハマってるな」と思える時間帯が少ない中で、みんなやることはちゃんと理解してやろうという意識を持って全員で戦おうというのは伝え合っているので、そこの気持ちの部分とか一歩相手より先に動くとか、そういう部分はやっぱり上回っていかないといけないと思います。戦術的なところは積み重ねつつも、みんなで戦うという意識はどんどん高めていけたらなと思います 。

 

杉山遥菜(スポ1=東京・十文字)

――得点シーンを振り返ってください

 いつもディフェンスとして出場しているので、無失点を目標に試合に臨んでいました。その中でも攻撃や得点でチームに絡みたいと思っていた気持ちが最近あったので、コーナーキックのこぼれは前から狙っていました。得点に結びついて良かったです。

――相手のタフな攻撃陣とのマッチアップになりましたが、守備面に関しての自己評価はいかがですか

 相手にチャンスをそれほどつくらせなかったとは思うのですが、当たり負けをしてしまったり、自分のところで相手に起点をつくらせてしまったりしたところもあったので、良い意味で課題が見つかって良かったと思います。

――前半はチャンスを作りながらなかなか得点が生まれないという展開でしたが振り返っていかがですか

 前半の特に最初の方は相手のビルドアップに対して、守備が後手になってしまって、なかなか(ボールを)奪いきれずに苦しい時間帯が続いてしまいました。得点が取れずに0-0になってしまったのはすごく残念なことだったのですが、チームとしてその時間帯を0点に抑え切れたのはすごく大きかったと思います。

――ハーフタイムはどのようなことを修正しましたか

 特にウイングの(三谷)和華奈さんと右サイドでの守備について話していて、なかなか奪い切れなかったところがあったので後半ではもっと攻撃的な守備をして奪い切ることを目標に守備をすることを話しました。

――次節以降厳しい相手との試合が続きますが、どのように戦っていきたいですか

 今日もそうだったのですが、相手の勢いに飲まれずに、もし相手に主導権を握られてしまっても自分たちのサッカーを曲げずに1試合をやり抜くことをチームとしての目標にしたいです。個人的には無失点と、攻撃でも貢献していきたいと思います。