第22回早慶女子サッカー定期戦早大21-0(前半)2-1(後半)1慶大【得点】(早大)43分: 白井美羽、59分:築地育(慶大)53分: 大橋桜子 第22回早慶女子サッカー定期戦が、大学サッカーの聖地・西が丘サッカー場で行われた。4年ぶりに…

第22回早慶女子サッカー定期戦
早大1-0(前半)
2-1(後半)
慶大
【得点】
(早大)43分: 白井美羽、59分:築地育
(慶大)53分: 大橋桜子

 第22回早慶女子サッカー定期戦が、大学サッカーの聖地・西が丘サッカー場で行われた。4年ぶりに男女共催となる今年は、857人の観客が駆けつけ、会場は熱気に包まれた。序盤からア女がボールを保持する時間帯が続くが、なかなか決定機をつくることができない。それでも43分、ついにMF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)が待望の先制点を挙げる。しかし53分、慶大にペナルティキック(PK)を献上し、同点に追いつかれてしまう。なんとか追加点を奪いたいア女は59分、MF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)がPKを獲得すると、自ら落ち着いて沈める。これが決勝点となり、見事早慶戦無敗の歴史を紡いだ。

 


試合後の写真撮影で笑顔を見せる選手・スタッフたち

 「指示も聞こえない初めての感覚だったが、互いにアイコンタクトやジェスチャーで伝え合った」と築地が振り返るほど、両校の熱い応援が西が丘に響き渡る中、試合は行われた。ア女は序盤から主導権を握るが、慶大の粘り強い守備に苦戦する。28分には、DF浦部美月(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)が中に切り込んで相手のファウルを誘発。MF宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)が会場もどよめくフリーキック(FK)を直接ゴールに放つが、惜しくも枠外に飛んだ。得点にはつながらないものの、ア女がボールを回すことで慶大を徐々に疲弊させていく。そして43分、宗形のパスから白井がゴール前でパスを受け、角度のないところから左足を振り抜き、先制点を挙げた。前半終了間際には慶大のコーナーキック(CK)を防ぎ、1-0で前半を折り返した。

 


先制点の白井。最前線でア女の攻撃をけん引した

 前半とは打って変わり、後半は開始直後に試合は動いた。53分、慶大のFKからゴール前は混戦となる。53分、慶大のFKからゴール前が混戦状態になると、相手のクロスを阻止しようと試みた浦部が痛恨のPKを献上してしまう。慶大は落ち着いてGK石田心菜(スポ3=大阪学芸)の逆をつき、ア女は同点に追いつかれてしまう。しかし、タイスコアの緊張した時間帯は予想より早く終わりを告げる。59分、宗形のCKのこぼれ球を回収した築地が前に攻め上がり、慶大選手に倒されるとPKを獲得。今度は築地が落ち着いて相手GKの逆をつき、勝ち越し点を挙げた。FW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)の惜しいヘディングや、築地の豪快なシュートが惜しくもバーに弾かれるなど、最後まで攻めの姿勢を見せるも得点にはいたらず、2-1で無敗記録を更新した。

 


MVPの築地。「お客さんがたくさんいることが力になる」と大観衆の中でもさすがの安定感を見せた

 2年連続の早慶戦MVPを獲得した築地は、昨年の全日本選手権(インカレ)でのPK失敗の悔しさから、石田と1日1本、PKの練習をしていたと話す。「緊張はしなかったですし、絶対に決めて盛り上げるところだと思った」(築地)と、悔しさを忘れず、毎日練習を積み重ねてきた日々の努力が、大舞台でのPK成功を導いた。築地の堂々たるプレーの裏に隠された努力も含め、この伝統ある早慶戦のMVPにふさわしいだろう。

 


最終ラインでスタメンフル出場の堀内。相手のカウンターを封じる好プレーが目立った

 「ここに立てたメンバーは早稲田の誇りを持って闘えた」と後藤が振り返るように、同点に追いつかれたとしても、一人一人が勝ちにこだわり、無敗の歴史を紡いだ。関東大学女子リーグ(関カレ)では強豪相手に連敗を重ね、しばらく勝利をつかめていなかったア女。白井が今季初得点となる先制点を決めるなど、課題であった得点力にも兆しが見えている。リーグ戦に引き続きスタメン出場のDF杉山遥菜(スポ1=東京・十文字)は、今回の早慶戦を「チームの強さや先輩方のすごさを分かっていて、頼もしいと思っているからこそ(同点に追いつかれても)巻き返せるだろうという自信があった」と振り返る。後藤、浦部、MF三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)、MF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)、DF堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)、途中出場のDF藤田智里(スポ4=神奈川・大和)ら4年生の活躍や、チームへの関わり方が、学年を超えた信頼関係や、ア女の一体感を生み出しているのだろう。早慶戦という大きな舞台を経験し、一回り大きくなった今年のア女はさらなる飛躍を、これからさまざまな舞台で見せてくれるはずだ。

(記事 渡辺詩乃、写真 大幡拓登、永田怜、中村由愛)

 


スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション背番号名前学部学年前所属
GK石田心菜スポ3大阪学芸
DF杉山遥菜スポ1東京・十文字
MF◎後藤若葉スポ4日テレ・メニーナ
DF堀内璃子スポ4宮城・常盤木学園
MF浦部美月スポ4スフィーダ世田谷FCユース
MF笠原綺乃スポ4横須賀シーガルズJOY
MF三谷和華奈スポ4東京・十文字
→90+2分12藤田智里スポ4神奈川・大和
MF10築地育スポ3静岡・常葉大橘
MF11宗形みなみスポ2マイナビ仙台レディースユース
MF白井美羽スポ3ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
FW18千葉梨々花スポ1東京・十文字
→HT19﨑岡由真スポ1埼玉・浦和レッズレディースユース
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)

――初めての男女共同での早慶戦となりましたが、率直に振り返っていかがでしたか

 やはりこの舞台に立てたということ、この早慶戦を準備するにあたって本当にいろんな人が尽力してくれたと思いますが、このような舞台をつくってくれて本当に感謝しています。ここに立てたメンバーは早稲田の誇りを持って闘えたと思いますし、男女ともに勝てて良かったというのが一番です。でも、今日の試合の内容的には、自分たちが目指しているところはもっと上のところなので、突き詰めていかないといけないところはもちろんありますけど、ここから後半戦に向けてというところで、全員でつくり上げたこの舞台で勝利というかたちでしっかりと締めくくれたところでは、今後につながる試合になったのかなと思います。

――相手のPKのシーンについては、少々厳しいシーンだったのかなと思うのですが

 相手の選手が頭をけがしていて、レフェリーも怖かったというのがあると思います。でも自分たちのPKの方も正直どうなんだろうというところはあったので、おあいこかなというところで(笑)。まあそういったところに流されずに、自分たちで締めて試合をしっかりと勝ち切れたのは大きいかなと思います。

――インカレの決勝や準決勝などと同じくらいの観客動員数であったと思いますが、そこについてはいかがですか

 女子の時間はどうやっても男子より早くなってしまうので、それでも800人の方が暑い中集まってくれたことや、あの中でサッカーをできたことは本当にうれしかったですけど、男子のこの盛り上がりを見たら自分たちもこの中でやりたいと思ってしまいました。でもやはり自分たちは4年目で初めて男女共催での早慶戦というものを経験できたので、すごく楽しかったというのと、今後もこういう伝統ある一戦というのは引き継いでいかないといけないという中で、今年また無敗記録を更新できた紡げたことはすごく良かったなと思います。

――この勝利をどのように今後のリーグ戦につなげていきたいですか

 試合の中でも、引いてきた相手に対してどうやって崩し切るというところとか、ここ最近のリーグ戦では失点の後に立て続けに失点してしまうという、そういったところで踏ん張れないと、その先というのは見えてこないと思います。守備の面でも攻撃の面でもチームがもう一個、二個レベルアップしていき、後期から一つ一つの試合を積み重ねていった先にインカレや皇后杯につながってくると思うので、今日の勝利は大きいかなと思います。

 

浦部美月副将(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)

――4年間で初めての男女共催になりましたが

 率直に嬉しかったし、楽しかったです。ですが試合が終わった時に、これがラストだったんだなと悲しい気持ちがありました。何よりも男女共に勝てて、早慶戦自体が無事終わったのが何よりでした。みんなに感謝したいです。

――4年生最後、気持ちの部分では大きかったですか

 そうですね、今まで女子だけの早慶戦に携わっていたので、開催することの大変さは身に染みて感じていたので、それを男女共催で開催できたのは4年生としてすごくうれしいです。

――会場の雰囲気は

 女子も意外と早稲田の方がすごく観客が入ってて、それがすごく嬉しくて。ですが男子の方を見たらやっぱりすごいなと思いました。自分が4年前の時に、場所は人数は違いますが、等々力でやった早慶戦をほうふつさせるものを経験できたのはすごく良かったです。

――同点に追いつかれた状況下から、盛り返しました。試合を振り返って

 押し込めていた時間帯は多かったと思うのですが、そこで点を決め切ったり、ゴールを奪い切れないのは関カレや関東リーグ含め、今のア女の課題だと思っています。自分自身PKを与えてしまった側だったので、率直にホッとしました。

――意気込みをお願いします

 再来週から関カレも後期が始まって、夏は合宿も挟んでくるので、ここで1段階チームとしても、個人としてもレベルアップしなきゃいけないのは前期で痛感して、やるしかないので一歩一歩、一戦一戦自分にできることをしっかり準備して、後期は前期勝てなかった相手にもしっかり勝ち切って、インカレや皇后杯で見せつけたいと思います。

 

三谷和華奈副将(スポ4=東京・十文字)

――男女共催での早慶戦、いかがでしたか

 やっぱり楽しかったですね。来年もあればいいのに、と思うのですが、来年自分たちはもうこのピッチには立っていないので、このスタジアムを見て余韻に浸っています(笑)。感慨深いです。

――一度追いつかれてから盛り返す展開でした。チームの地力みたいなものは感じましたか

 やっぱり慶應さんって早慶戦になると特別、強さが増すというか、手強い相手になるというのは今年も感じました。自分たちが前半から主導権を握ることのできる試合展開の中で、試合の入りに関してはもっと自分たちらしさを出せたんじゃないかというところは個人的に少し納得のいっていない部分です。ボールロストやらしくないパスミスが結構あったので、緊張やプレッシャーがかかる試合はこれからもありますし、そういった意味では課題が見えたのも逆によかったと思います。ただ後半はしっかりとつないでゴールに迫ることもできていましたし、判定も含めてこういう試合はあると思うので。その中でも勝ち切れたというのはポジティブに捉えてもいいのかなと思います。

――リーグ戦も含めると、かなり久しぶりの勝利になったという意味でもこの結果は大きいのではないでしょうか

 正直1点取られた時は大東文化大戦のことを思い出して「またか」となったんですが、しっかり盛り返せてよかったです。

――この勝利を今後のシーズンにどのように生かしていきたいですか

 やっぱり私たちが目指しているのはWEリーグ撃破と(大学)日本一というところですし、リーグ戦後期まで数週間ありますが、今日のピッチ、試合を見て大半の人が悔しい思いをしたと思うんです。私はその選手たちがこの後期にその悔しさをぶつけてくれるかというところが、チームの力になってくると思うので。今のスタメンが確定だとは思っていないし、そういうチームにはしたくないので、そういった気持ち、向上心は今日の試合をきっかけにできていったらいいなと思います。

 

築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)

――入学後初めての男女共催の早慶戦を終えて感想をお願いします

 私はお客さんがたくさんいることが力になるので、今年は男女共催とあって昨年よりも多くの人に来てもらい、いろんな人が準備してつくりあげた会場で試合ができて本当に楽しかったです。

――試合中の応援はいかがでしたか

 こんなにすごい応援の中でやるのは初めてだったので、指示とかも聞こえないなど初めての感覚でした。お互いにアイコンタクトやジェスチャーで伝え合う初めての体験もしましたが、そこの部分も楽しめました。

――2年連続の早慶戦MVPについていかがですか

 見ている人の印象に残るプレーヤーになることを毎試合の目標にしていたので、たくさんのお客さんに来ていただいた中での投票で、選んでもらってありがたいです。

――PKで相手ゴールキーパーと対峙(たいじ)してみて

 相手が圧力をかけてきたので、絶対に目をそらさないようにと思って自分もにらみ合いました。インカレのことがあったので、払拭したいと思って、今シーズンは毎日の練習後に照明が消えるまで時間があるときは、心菜(GK石田心菜、スポ3=大阪学芸)に「決めても外しても1本だけ(PKを)一緒にやって」とお願いして練習していたので、緊張はしなかったです。逆に「絶対に決めて盛り上げるところだな」と思って、実際にあのようなチャンスをもらって、盛り上げることができたので良かったです。

――PKを決めていかがですか

 試合後に心菜から「あそこで外したらもう練習付き合わないからね」と言われたので、決められて良かったと思いました。今日は静岡と山梨から祖父と祖母が見に来ていて、友人にもたくさん声をかけていました。その人たちを前に「声をかけたからには、いいところを見せないと」と思っていたので、結果として決めることができて良かったです。

――リーグ戦も含めて久しぶりの勝利でしたが、この結果をどう生かしていきたいですか

 リーグ戦の前期が終わって中断期間に入っている中で、(リーグ戦前節が)引き分けに終わったことで勢いはなかったですが、大きな舞台で緊張やプレッシャーもありながら、ア女のサッカーを体現できたのは後期にもつなげられると思います。加えて、改めてア女を応援してくれる人がいることが目に見えるかたちとなった試合だったので、またそこも力になっていくと思います。監督も「ここで満足するようなところではないから、ここから後期が始まるまでに2、3歩いろいろなところを伸ばしていかなければならない」とみんなの前で話してくれたので、「早慶戦が終わって良かった」ではなく、もっと高いところを目指して明日から練習します。

*出場選手コメント集は別途掲載