今季は攻撃面に意識を強く置く川真田紘也 photo by SHIGA LAKES「リアル桜木花道」川真田紘也インタビュー 後編 昨夏のFIBAバスケットボール ワールドカップの男子日本代表で、「リアル桜木花道」として話題を呼んだ赤髪のビッグ…


今季は攻撃面に意識を強く置く川真田紘也

 photo by SHIGA LAKES

「リアル桜木花道」川真田紘也インタビュー 後編

 昨夏のFIBAバスケットボール ワールドカップの男子日本代表で、「リアル桜木花道」として話題を呼んだ赤髪のビッグマン・川真田紘也(滋賀レイクス)。ポジションとするセンターは、アメリカやヨーロッパでキャリアを積んだ猛者が揃い、Bリーグで最も世界基準を体感できるポジションだ。切磋琢磨の日々を重ね、ワールドカップ前に話していた「3人目の外国籍の選手のような存在になりたい」という理想の選手像を目指している。11月に負傷で長期離脱をしたものの、年明けからB2西地区首位を走るチームに戦線復帰を果たし、再びその存在感をアピールし始めている。
 川真田にワールドカップ後のコート内外の変化やパリ五輪に向けた抱負を聞いた。

【点を取ってナンボ、という意識に】

――今シーズンの半分が消化したタイミングです。ここまでの振り返りをお願いします。

「僕やフィリピン代表でワールドカップに出たキーファー(ラベナ)の合流が遅れたこともあって、シーズン序盤は少しプレーが合わず黒星が先行しましたが、勝つべき試合は勝てているし、ここまでは順調だと思います。ただ、小さいことの積み重ねでもう7敗しているので(23勝、1月19日時点)、改善は必要です」

――離脱した時期があるとはいえ、今シーズンは得点、リバウンド、出場時間など、主要スタッツのほとんどでキャリアハイを更新しています。ワールドカップ効果もありますか?

「そうですね。去年まではどちらかというとディフェンス寄り、相手のビックマンを守る選手というイメージがあったと思うんですけど、今季はワールドカップを経験したことで、やっぱり得点ももっと狙っていこうという意識が生まれました。点を取りに行く選手ほど良い選手、点を取ってナンボだなと。ワールドカップの経験は良い成長、プラスになっています。

――天理大時代や滋賀に入る前は、得点への意識はあまり強くなかった?

「大学まではこの身長(204cm)だけでなんとかなったところがありましたし、天理はセンターに攻めさせるスタイルだったので、得点の意識は強かったです。ただプロではマッチアップする相手が自分よりでかい、大きい、うまいのが当たり前なので、壁にぶつかりました。

ただ、今はチャンスがあれば自分が行く気持ちが強いですね。ゴール下でボールをもらったら自分のボールだと思って、力強く点を取りに行く。それがうまいこと作用して、今シーズンは2ケタ得点をマークする試合が増えてきました」

――ワールドカップや親善試合でいろんな強豪国のビッグマンと対峙されました。Bリーグでプレーする上で、気持ち的に余裕が生まれたところもありますか?

「そんなことはないです。Bリーグのセンターは本当にうまい人が多いし、全然勝てないことも多いので。でもワールドカップで"Bリーグで外国籍選手とやり合えないと世界クラスでは戦えない"ことを体感したので、そこは逃げずにバチバチやっていく意識を持ってやっていますね。相手が外国籍の選手だろうとなんだろうと」

――イメージされるのはぶつかり合いながら得点を取りに行くことでしょうか? テクニックでいなすことも考えていますか?

「どっちもですね。ゴール下で当たり合いながら決める時もありますし、ピック&ロールでボールをもらった後に、状況を見てシュートを打ったり。両方でどんどん成長できていったらいいなと思って、頑張っている途中です」

【知名度アップは実感も気持ちは変わらず】

――チームのSNSを拝見すると、マイクパフォーマンスなどオフザコートでのご活躍も絶好調のようです。

「そこは変わらず楽しくやっています。ワールドカップ以前から、自分が楽しまないと周りが楽しくできない、やっぱり自分が楽しんでナンボだと思っていることに変わりはありません。自分が楽しむことでチームメートたちが笑ったり、ファンの方々が"もっと応援に来よう"って思ってくれたらうれしい。それが今季も発揮できていると思います」

――ワールドカップ以降、知名度が上がったことを実感しますか?

「前までは滋賀のファンの人からは声をかけてもらっていましたけど、ワールドカップ後はいろんな方から『あの人、見たことがある』みたいな感じで声をかけていただく回数がだいぶ増えましたね。こんなにデカくて髪が赤いやつはなかなかいないですからね(笑)」

――ホームコートを含めて会場で川真田選手のレプリカユニフォームを着ている方や名前が入ったタオル、うちわを持つ方も増えましたか?

「だいぶ増えました。 試合終わりにコートを1周とかする時とか、もう目で追えなくなるくらいです」

――Bリーグオールスター(1月12日―14日)でもエンターテイナーぶりを発揮されていましたね。

「初日からイベントがいっぱいあり、2日目はASIA RISING STAR GAMEに出たり、3日目は初体験の中継解説があるなど、3日間総じて楽しくオールスターを過ごすことができました。代表メンバーとも久々に会うと懐かしい感じがしてうれしかったです。(川真田劇場は)いつも通りの僕をしているだけなので、それでいろんな人が喜んでくれればいいなと思ってやっていたので、良い方向に行ったのであれば良し、です。やり切りました!」


沖縄でのオールスターウィークエンドでも会場を大いに盛り上げた

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【「リアル桜木花道」が好きなキャラは――】

――滋賀レイクスの密着動画でチームメイトの柏倉哲平選手が「ワールドカップから帰ってきてすごく自信がついて変わった」と話していましたが、ご自身ではそういった変化は自覚していますか?

「うーん...どうなんですかね。僕的にはワールドカップに行ったから、めちゃくちゃ変わったとは思いませんよ。もちろん、高いレベルに触れて多少は変化したと思いますけど」

――例えば外国籍の選手とマッチアップする時に昨シーズンよりも「やったるで」みたいな意識が強くなったこともない。

「そうですね。自分がわかってないだけで、周りから見たら変化があるのかもしれないですけど、やったるぞっていう気持ちはこれまでも今季も、変わらないつもりです」

――赤い髪とプレースタイルを理由に「リアル桜木花道」というキャッチフレーズがつけられました。どう感じられていますか?

「同じセンターのゴリ(赤木剛憲、湘北高)じゃねえのかよ、とは思いました(笑)。赤髪にしたのは、実は桜木は関係なく、富樫さん(勇樹、千葉ジェッツ)や比江島さん(慎、宇都宮ブレックス)に『(日本代表のチームカラーの)赤にしろよ』みたいなことを言われたからなんですけど、自分をきっかけに少しでもバスケを見ようと思ってくれた人が増えたらいいなと日頃から思っていたので、うれしかったです」

――ちなみに『スラムダンク』の登場人物だと誰が好きですか?

「僕は魚住(純、陵南高)が好きですね」

――確かに、サイズやプレースタイル、境遇は桜木より魚住に似ていますよね。カレイのように泥にまみれてますし。

「桂剥きしてるとこっすよね。あそこめっちゃ、好きなんですよ」

――パリ五輪まで間もなく半年となり、再び代表選考レースが始まってきます。ここに向けてどのように成長していきたいですか。

「五輪まで時間がないですし、Bリーグでの試合経験がとても大事だと思っています。そういう状況の中、ケガで長くコートを離れてしまいましたが、そんなに悲観的にとらえていません。どんなに気をつけていてもケガをするときはしてしまう。今できることを全力でやろうと思って過ごしていました。外国籍の選手とマッチアップすることでまだまだ成長できると思っているし、リバウンドや得点のスタッツももっと伸ばしていけるようにしたい。とにかく全力でやるしかないです」


多くの人々の心をつかむ性格も魅力だ

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【Profile】川真田紘也(かわまた・こうや)/1998年6月16日生まれ、徳島県出身。城南高(徳島)→天理大→佐賀バルーナーズ→滋賀レイククスターズ(現・レイクス)。中高校時代は全国大会の経験はなし。天理大では主力として活躍し、名を馳せたのは大学4年時で、インカレでは優勝することになる東海大相手に奮闘。Bリーグの佐賀と特別指定選手として契約し、卒業後の2021年に滋賀とプロ契約を果たす。2022年に日本代表候補に名を連ねると2023年2月に行なわれたワールドカップ・アジア地区ウィンドウ6のバーレーン戦で初の日本代表入り。同年夏のワールドカップ日本代表最終12名のメンバー入りし、4試合に出場を果たした。愛称は「マイキー」。