引いて守られる展開が多くなるのがアジアカップという大会だ。グループリーグはもちろんのこと、決勝トーナメントに入ってもそ…
引いて守られる展開が多くなるのがアジアカップという大会だ。グループリーグはもちろんのこと、決勝トーナメントに入ってもその傾向が続く可能性が高い。
そこで、日本最大のストロングとなるのが、伊東純也(スタッド・ランス)と三笘薫(ブライトン)の両サイドの槍。彼らはこれまでの日本代表にいなかったカテゴリーの選手だと元日本代表FW李忠成も言う。
「サイドアタッカーは伊東と三笘で決まりだと思います。三笘は今、ケガをしていますけど、能力的に突き抜けているのは間違いないですね。
2人の凄さはやはりタテへの推進力。そこは本当に圧倒的です。堂安(律=フライブルク)、久保(建英=レアル・ソシエダ)、三好(康児=バーミンガム)は僕の中では同タイプで、南野(拓実=モナコ)含めて足元でドリブルしながら攻めを組み立てる選手ですけど、伊東と三笘のフリーランニングというのは別格。あそこまで速く行ける選手はそうそういないし、日本の1つの形になっていますよね。
相手が格上になれば、その力がより一層光る。2022年カタールワールドカップ(W杯)でもそうだったと思います」
■日本がやるべきサッカー
彼ら2人に対し、アジアの相手は人数をかけてマークについてくる可能性もある。ゴール前にもスペースがなく、日本としては点を取る形を自由自在に作ることが難しくなりそうだ。
「そこで日本がやるべきなのは、マンチェスター・シティのようなサッカー。堂安や南野、久保たちならボールを回して回してっていうマンC的なサッカーができますから、サイドを有効に使えるはず。そういう形に持って行かないといけないし、それが勝ち上がるカギになってくるでしょう」と2011年カタール大会決勝スコアラーは力を込めた。
伊東と三笘もゴールを奪う力があるが、やはりかつての李のように最前線のFW陣にも点を取ってもらわなければいけない。今回は浅野拓磨(ボーフム)、上田綺世(フェイエノールト)、前田大然(セルティック)、細谷真大(柏)という陣容だが、2019年UAE大会の大迫勇也(神戸)レベルまで突出した存在はいない。横一線と言ってもいい状況だけに、誰が突き抜けるかも非常に興味深いところだ。
「まず若い細谷にはラッキーボーイ的な感じでブレイクしてほしい。それだけの可能性が彼にはあると僕は思っています。
エースになるのはチャンスをつかみ取った選手。おそらく森保(一=監督)さんが最初に起用した選手が本命候補なんだけど、その人間が必ずしも結果を出せるとは限らない。コンディションがよくて、ここ一番で決める選手がメインFWになっていくんだと思います」
■求められる“ギラギラした人間”
2011年カタール大会も前田遼一(日本代表コーチ)が最前線の軸を担ったが、最終的においしいところを持っていったのは李だった。
もう1人のFWである岡崎慎司(シントトロイデン)が右サイドで使われたこともあるが、李にとっては「自分がチームを優勝させる」「ヒーローになる」と鼻息が荒かった。そういうギラギラした人間が今回も出て来れば、タイトルに大きく近づく。それが4人の中の誰なのか。非常に興味深いところだ。
「とにかく森保ジャパンに求めるのは優勝。絶対に優勝してほしい。それを3年後のW杯つなげてもらいたいんです。
キャプテンの航(遠藤=リバプール)も『W杯優勝』を大目標に掲げていますけど、そこから逆算して自分たちが何をしなければいけないかを今の選手たちは考えられる。そういう意味でも本当に楽しみですね」
代表の先輩の期待を今のメンバーはどう受け止めるのか。13年前と同じカタールの地でキャプテン・遠藤が優勝カップを掲げる日が本当に訪れるのを、我々も信じて待ちたいものである。
(取材・文/元川悦子)