サッカー日本代表が、アジアカップで白星発進を果たした。ベトナム代表相手の4-2という勝利だったが、この一戦はアジアカッ…

 サッカー日本代表が、アジアカップで白星発進を果たした。ベトナム代表相手の4-2という勝利だったが、この一戦はアジアカップの活用法も示した。サッカージャーナリスト後藤健生が、アジアでの戦いぶりを紐解く。

■奇妙な符合

「幸い」と言っては変だが、これから日本と対戦するイラクやインドネシアのスタッフも日本の2失点を見たはずだ。当然、彼らも同じような形を使ってくるだろう。とくに、イラクにはフィジカルに優れた選手が何人もいる。

「幸い」と言ったのは、つまり、日本チームはイラク戦までにベトナム戦の反省を生かしたセットプレーでの守備の修正を行うはずだが、イラクもまさにそこを狙ってきてくれるので、中4日のトレーニングの間に日本チームが準備してきた守備の修正を実戦で試すことができるからだ。

 つまり、イラク戦の大きな見どころは、CKあるいはゴールに近いところでのFKという場面での日本の守備が完全に機能するか否かということになる。

 セットプレーからの失点を防ぐために、ファウルをせずに、FKを与えないように守るという方法もあるが、中盤での激しいプレッシャーというのは日本のストロングポイントの一つだ。

 アジアの相手だとちょっとしたコンタクトで相手が倒れることがあり、またアジアのレフェリーは選手が倒れると簡単に笛を吹く傾向があるので、FKが増えてしまうのは仕方がない。むしろ、「セットプレーでの守備の練習になる」とポジティブに考えるべきだろう。

 本来であれば、日本チームはアジアカップを通じて無失点での優勝を狙ってほしかった。だから、格下相手のグループリーグでは、ベトナム戦の二の舞のような失点は絶対にしないでほしいものだ。

■イラクの強さ

 さて、日本代表はグループリーグではこの後、イラクとインドネシアと対戦する。

 面白いことに、ベトナム、イラク、インドネシアは、ワールドカップ・アジア2次予選ではすべてグループFに所属しているチームである(日本代表の分析スタッフにとっては、3つの対戦相手国がワールドカップ予選で同組にいることで分析はしやすくなったはず)。

 各チーム2試合ずつを終了した時点で、イラクが2勝しているが、イラクの初戦はホームのインドネシア戦でスコアは5対1、2戦目はアウェーのベトナム戦で1対0でイラクが勝利した。

 従って、イラクがベトナム、インドネシアよりランクが上のチームであることは間違いない。

 そもそも、イラクは2007年のアジアカップ優勝国なのだし、「ドーハでのイラク戦」といえば日本代表にとっても、当時のMFとしてプレーしていた森保監督にとっても苦い思い出のある相手だ。1986年のメキシコ・ワールドカップにも出場した経験もあり、かつては中東諸国の中で最も近代的なサッカーをする国だった。

 ただ、2003年にアメリカのブッシュ(息子)政権が強引に仕掛けたイラク戦争の後、イラクは長く政治的な混乱が続き、テロが横行。ホームゲームの開催もできない状態が続いた。

 そのため、イラクにはかつてのような強さは失われてしまった。

■繰り返してはいけない不用意な失点

 最終予選でインドネシアには5対1で勝利したが、前半2点を先行した後、インドネシアに1点を返され、その後はかなりバタバタした試合になった(筆者は11月のU-17ワールドカップ取材でインドネシア滞在中にイラク対インドネシア戦の実況中継を見たが、残念ながら衛星回線の不良で終盤のイラクの3ゴールは見ることができなかった)。

 また、ベトナム戦ではモハナド・アリのヘディングによる決勝ゴールが決まったのは後半のアディショナルタイム、90+7分のことだった。

 ワールドカップ予選でのイラク代表を見ると、フィジカル的に強い選手がいて攻撃力は高いが、守備の組織は機能していない印象がある。

 日本としては、まず、不用意な失点をしないように戦って、速いパスを使って崩していけば間違いなく再び複数得点を決めて勝てるはず。

 重ねて言おう。ベトナム戦のような不用意な失点は絶対に繰り返してはいけない。そして、複数得点をして完勝すること。イラクとはアジア最終予選で対戦する可能性もあるので、絶対に隙を見せてはいけないはずだ。

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