2022年にチャレンジしたシンガポールリーグ1部・アルビレックス新潟シンガポールでの2年間の挑戦を終え、20年間のプロ…
2022年にチャレンジしたシンガポールリーグ1部・アルビレックス新潟シンガポールでの2年間の挑戦を終え、20年間のプロキャリアにピリオドを打った李忠成。11月26日のシンガポールカップ、タンピネス・ローバーズ戦を終え、12月に帰国してからは、メディア出演や北京五輪時代からの盟友・本田圭佑が立ち上げた「4v4」のスペシャルマッチに出場するなど、多忙な日々を過ごしている。
そんな李だが、38歳の誕生日を迎えた12月19日に新プロジェクト「点取り屋-TENTORIYA」を立ち上げた。2024年は1年間かけて全国を回り、FWに特化した少年指導を進めていく考えだという。
「僕らが子どもだった頃、セルジオ越後さん(解説者)が全国各地を回ってサッカー教室をしていましたけど、僕も体が動くうちにそういうことをやりたいと思っているんです。元プロ選手が直々に教えてくれた経験というのは一生の思い出になりますよね。
僕はFWに特化した指導をしていきたいんです。中盤だったら中村俊輔さん(横浜FCコーチ)や小野伸二さん(解説者)といったそうそうたる方々がいますけど、ストライカーを育てられる引退間もない人材となると前田遼一さん(日本代表コーチ)や佐藤寿人さん(解説者)など数人しかいない。僕も役に立てるんじゃないかと思うんです」と彼は現役感覚を生かしたアプローチを行っていくつもりだ。
■ストライカーから見た佐藤寿人、前田遼一のスゴさ
確かに日本の育成現場を見ると、GKとフィールドプレーヤーという区分けはあるものの、ポジション別指導を実施しているところは少ない。プルアウェイやダイヤゴナルランなどFWにとって必須の動きがいくつかあるものの、小中学生年代でそれがしっかり教えられていないケースも散見される。
「僕は代表やJ1だけでなく、高校生とかJ2・J3の試合も結構、見ているんですけど、感覚でやっているなという印象がまだまだ強い。FWのセオリーの動きを引き出しとして持っているか持っていないか、その後の成長や活躍度が大きく変わってくると思うんです。
寿人さんは裏抜けなどのオフ・ザ・ボールの達人で、遼一さんは前線でのキープや収める仕事などオン・ザ・ボールの名手。僕の指標として彼ら2人の存在があって、それを教えて、発展させられれば、個々のプレーの幅は確実に広がる。今はそう考えています」と彼は神妙な面持ちで言う。
もちろん成功している点取り屋はFWとしての基本的な動きを理解したうえで、自身のストロングに磨きをかけている、日本代表50ゴールという偉大な記録を残している岡崎慎司(シントトロイデン)などはダイビングヘッドやゴールに突っ込む迫力が頭抜けている。
「オカはドリブラーじゃないし、オフの動きで勝負して結果を残してきたムービングFW。いかにマークを振り切って、ボールをはたいて突っ込むかを追求してきたから成功したんだと思います。
2002年日韓W杯で活躍した鈴木隆行さん(解説者)だったらキープしながらファウルをもらう駆け引き、柳沢(敦=鹿島ユース監督)なら動き出し、玉田(圭司=長崎アンバサダー)さんなら左45度からのシュート、大黒(将志=G大阪ユースコーチ→枚方コーチ)さんなら振り向きざまのシュートという感じでそれぞれの象徴的なプレーがある。基本の上に自分の必殺技を上乗せした選手が沢山出てくるようにしたいですね」と李は目を輝かせた。
(取材・文/元川悦子)