今季米ツアールーキーとして戦う久常涼が、1月11日(日本時間12日)からハワイ州のワイアラエカントリークラブで開催されるソニーオープンに出場する。 久常は昨季欧州ツアーで、青木功、松山英樹に次ぐ日本人3人目の優勝を果たすなど活躍し、年間ポイ…

今季米ツアールーキーとして戦う久常涼が、1月11日(日本時間12日)からハワイ州のワイアラエカントリークラブで開催されるソニーオープンに出場する。

久常は昨季欧州ツアーで、青木功、松山英樹に次ぐ日本人3人目の優勝を果たすなど活躍し、年間ポイントランキング17位に入った。そして、今季の米ツアー出場有資格者を除くとポイントランキング上位10名に入ったことで、米ツアー出場資格を得た。

久常は欧州ツアー参戦1年で、最高峰のツアー、米ツアーへ向かうわけだが、久常の強さは、自身が「ドライバーショットにアドバンテージがあると思っている」と言うほど、飛距離が出るだけでなく高い精度をほこるドライバーショットが支えている。

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■2023年欧州ツアースタッツ

久常のドライバーショット関連のスタッツは高水準だ。ティーショットが‟飛んで曲がらない”ことをデータが物語っている。

昨季の飛距離は79位ながら302.41ヤードを記録。ツアー平均の301.12ヤードを上回った。フェアウェイキープ率は65.43%でツアー平均の58.71%を大きく上回り11位だった。

そしてパーオン率は70.65%でツアー平均の67.10%を上回り19位。ドライバーショットの高い安定感により良い地点からグリーンを狙うことが増え、バーディチャンスを多く獲得することができた。

ドライバーショットのアドバンテージはSG指標を見ても分かる。SG:オフザティーが+0.48で23位。ティーショットでスコアを稼いでいたのだ。

久常涼2023年欧州ツアー、ティーショット関連スタッツ

■スイングの特徴

久常のスイングの特徴を「始動」「バックスイング」「ダウンスイング」「フォロースルー」それぞれから1つずつ、計4つ挙げる。

まず始動。上体を右にスライドさせてからクラブが動き始めている。体と腕の一体感や、適度に手の動きに制限をかけて体のエネルギーをボールに余すことなく伝える、という意識が始動から表れている。

体を右にスライドさせる場合、バックスイングでは右サイドの体重の受け止め方がポイントになる。右脚をふんばり過ぎると‟スウェイ”につながるが、右ひざの伸展がスムーズな体の回転をアシストしている。

そして、右に移動した上体を右に残してダウンスイングに入る。ドライバーショットで飛距離を出すために必要なビハインドザボールによるアッパーブローを実現させるためだ。

久常の持ち球は飛距離が出るドローボールを持ち球にしているが、この球筋は極端に左に曲がるリスクが大きくなる。そのリスクを抑えるために、フォロースルーでは左ひじを抜いて(引いて)、フェースの返りすぎを防止し、左に曲がるリスクを軽減させている。

■ティーの高さとクラブを持つ長さを調整

久常はティーショットでドライバーの選択を多くの選手が躊躇するホールでも、ドライバーを選択する。それはコースレイアウトや風などの状況に応じて球筋を打ち分けられるからだ。

大胆に攻めていけるレイアウトのホールや、フォローの風がふいている場合は、ティーアップを高めにして高いドローを打ち飛距離を稼ぐ。狭めのホールやアゲインストや横風が強い場合は、低いボールを打ち左右のブレを抑えている。

低いボールを打つ時は、ティーアップを低くするだけでなくグリップを短く持っている。ティーアップの高さや、グリップを見て「どういうショットを打とうとしているのか」を予想しながら久常のドライバーショットを見てみるのも楽しいかもしれない。

■サクセスストーリーは続くか

現在21歳の久常は2020年(高校3年時)に日本ツアーの予選会に挑戦した。しかし、ファーストQTで失敗。通過ラインに11打(4日間)も足りなかった。

ただ、そこからが凄かった。2021年にはABEMAツアー(日本下部ツアー)で3勝をあげ、同年後半のレギュラーツアー出場資格を獲得。高額賞金大会の三井住友VISA太平洋マスターズで4位タイに入るなどして、あっさり翌年のレギュラーツアーシード権を獲得した。

2022年は賞金ランキング24位に入り確かな成長を見せたかと思えば、11月に欧州ツアー予選会に挑戦し見事突破。2023年は欧州ツアーを主戦場とし、今季はいよいよ米ツアー出場資格を得た。

日本下部ツアーからレギュラーツアー、欧州ツアーへ。そして米ツアーへ。

一足飛びで力をつけ実績を積み重ねている久常。ソニーオープンから始まる米ツアーでの戦いでも、ドライバーショットを武器にサクセスストーリーを歩み続けるのか注目していきたい。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。