2024 年最初に開催されたフリースタイル・ラップバトルの大会、「Red Bull Roku Maru」が1月6日(土)に東京・渋谷の「WOMB」で開催された。2021 年から始まった「Red Bull 韻 DA HOUSE」から「Red …
2024 年最初に開催されたフリースタイル・ラップバトルの大会、「Red Bull Roku Maru」が1月6日(土)に東京・渋谷の「WOMB」で開催された。2021 年から始まった「Red Bull 韻 DA HOUSE」から「Red Bull Roku Maru」へとリニューアルした今大会。1対1のフリースタイルバトルで、各自の持ち時間は60秒の2ラウンド制。3人のジャッジによる投票で勝敗を決めるトーナメント形式だ。
今大会の参加 MC は、Yella goat、Fuma no KTR、MAKA、龍鬼、瀧澤彩夏、Ry-lax、NARIMIMI、RunLine、呂布カルマ、DOTAMA、018、SATORU、MOL53、COCRGI WHITE、L.B.R.L、そして予選を勝ち抜いた gable の16人。ベテラン、若手といずれもシーンから注目を集めるメンバーが名を連ねた。そして審査にあたったのは、レジェンドの漢 a.k.a. GAMI、ERONE、KEN THE 390 とバトルシーンを支えてきた3人。また、ホスト MC として怨念 JAP と ACE が、DJ ブースでは DJ YANATAKE と DJ TIGU が腕を振るった。
Suguru Saito / Red Bull Content Pool
1回戦のオープニングバトルとなったのは、Yella goat と Fuma no KTR。フロー巧者同士のバトルは初めからハイレベルな戦いとなった。ステージ全体を使いながら、Fuma no KTR が開始から飛ばしていくと、Yella goat はメロディアスなフローで応戦するが勢いに押される形で Fuma no KTR が勝利を手にした。
Suguru Saito / Red Bull Content Pool
シーンに彗星のように現れた「アイドルラッパー」瀧澤彩夏は Ry-lax と対戦。先攻後攻の決定から、Ry-lax が「Lady first」と COCRGI WHITE の言葉を”サンプリング”して、試合開始前から会場の空気をつかむ。急成長を見せる瀧澤彩夏も同じ「Lady first」とバースを蹴って口火を切りましたが、Ry-lax が円形のステージを生かして観客とグータッチをするなど巧みなステージングで流れを離さず勝利を手にした。
Suguru Saito / Red Bull Content Pool
1回戦で最大の盛り上がりを見せたのは、呂布カルマと DOTAMA の一戦。優勝候補同士が初戦で当たるとあって、入場から会場のボルテージはマックス。先攻のDOTAMAが「対戦相手は呂布さん、マイメン」と親しみをこめつつ、「まあ良い勝負できるよ、かろうじて / これが俺からの社交辞令」と皮肉を吐いて”らしさ”全開。呂布カルマも「きっつ、人生で一番長い1分間だったかも」と応じて、「俺は1分間じゃ足らねぇくらいベロと頭が回っているぜ」と自らのバースを締めくくる。互いに「らしさ」がぶつかりあうバトルで、勝利を手にしたのは呂布カルマ。
Suguru Saito / Red Bull Content Pool
そのほか、格闘技大会などでも存在感を発揮し、ジャンルレスに活躍するSATORUが登場。独特のステージングと、フリースタイルでも着実にスキルを積み重ねていることがわかるフローで観客を沸かせた。
COCRGI WHITE は「シグネチャームーブ」ともいうべき、座り込みのスタイルで対戦相手の L.B.R.L に背を向け「俺以外の 60 秒が安くなる」「俺の後ろのやつの声なんて」と若手を相手にしないスタイルを見せた。参加したMCそれぞれが、相手をディスるだけでなく、自身の音楽性やスタイルを示していく、レッドブルの大会ならではのバトル風景が広がった。
MOL53 が圧巻の勝利
Suguru Saito / Red Bull Content Pool
様々なベストバウトが生まれた大会のなか、決勝は MAKAとMOL53に。準々決勝でCOCRGI WHITE、準決勝で呂布カルマという強豪を立て続けに下した MOL53 が先攻となると、試合を一気に押し切った。MAKA は今大会に出場していない同郷のラッパーや、格闘技大会で結果を出したSATORUなどを効果的にネームドロップして会場を沸かせたが、MOL53 のパンチラインには及ばず。
圧巻は MOL53 の2本目。「これがラストだ、聴いておきな」というシャウトから始まったバースは、MOL53 が観客に向けて「俺らのシーンは終わらない」「俺の音楽をパワーでねじ伏せようとするやつに応戦するぜ」「勝ち方、客の上げ方 そんなもん必要ねえだろ 耳かっぽじってよく聴きな」とヒップホップカルチャーを前面に出したスタイルで会場の空気を味方につけ、優勝を手にした。
Suguru Saito / Red Bull Content Pool
優勝後のウィニングラップでは、「2024(年)、アタマから災難ばかりがある」と切り出すと「日本が大変な時だ バトルなんかやっているヒマじゃねぇけど マイクで与えられるものはなんだ」「得たものよりも与えたもの 何かをつなげていこう」と語りかけるように歌い上げた。
自然災害や大規模事故に揺れる日本社会にあって、ヒップホップに何ができるか――。そう訴えかけるようなラップは、エネルギーに満ち、それぞれのスタイルがぶつかり合った大会を象徴するものとなった。
Text by 古和康行 / Kowa Yasuyuki
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