2017年のスーパーラグビーで頂点に立ったのは、ニュージーランドのクルセイダーズだった。南アフリカのジョハネスバーグ(エミレーツエアラインパーク)で8月5日、プレーオフ決勝がおこなわれ、約6万人の地元サポーターを味方につけたライオンズを2…

 2017年のスーパーラグビーで頂点に立ったのは、ニュージーランドのクルセイダーズだった。南アフリカのジョハネスバーグ(エミレーツエアラインパーク)で8月5日、プレーオフ決勝がおこなわれ、約6万人の地元サポーターを味方につけたライオンズを25-17で下し、9年ぶり8回目の優勝を遂げた。
 悲願の初制覇を目指したライオンズは、前半38分にハードワーカーのFLクワッガ・スミスが危険なプレーでレッドカード(退場)となり、14人での戦いを余儀なくされながら、不屈の精神で22点ビハインドから追い上げたものの、ミラクルは起こせず、2年連続決勝で涙をのんだ。

 流れを大きく左右する先制点を取ったのはアウェイチームのクルセイダーズだった。
 前半7分、自陣22メートルライン付近まで相手に攻め込まれたが、ライオンズSOエルトン・ヤンチースに対するNO8キアラン・リードのハードタックルでボールを奪い返し、WTBセタ・タマニヴァルがカウンターで80メートル近く独走してトライを挙げた。

 そして、リスタートのキックオフをライオンズのヤンチースが失敗すると、クルセイダーズは相手のミスでめぐってきたチャンスを逃さなかった。グラウンド中央のスクラムで再開、クイックハンドとオフロード、タテへの力強い走りで一気にゴールへ迫り、テンポよく左へまわしてCTBジャック・グッドヒューが左隅に飛び込み追加点。12-0となった。

 追うライオンズはその後、PGで3点を返したが、38分に問題のシーンが生まれる。ハイパントをキャッチにいったクルセイダーズのFBデイヴィッド・ハヴィリに対し、着地する前に、ライオンズのFLクワッガ・スミスが体当たりにいったような格好となり、南ア人のヤコ・ペイパー レフリーはTMO(テレビジョンマッチオフィシャル)で確認したあと危険なプレーと判断し、スミスにレッドカードを提示して退場を命じたのだった。

 1分後、1人少なくなったライオンズのFWはスクラムで反則をとられ、クルセイダーズがPGを決め、15-3で折り返した。

 クルセイダーズは後半の立ち上がりもよく、NO8リードのトライで点差を広げる。ライオンズは52分(後半12分)にもスクラムで反則をとられ、クルセイダーズのSOリッチー・モウンガがショットを決めて25-3となった。

 しかし、レギュラーシーズンを1位で通過したライオンズはこのままでは終わらなかった。
 相手の堅守やラインアウトスチールで何度もチャンスをつぶしたものの、63分、敵陣深くでアドバンテージをもらって攻めたて、HOマルコム・マークスが力でインゴールにねじ込みチーム初トライを挙げる。
 72分には12フェイズを重ねたあとPRコーネ・フーリーが力強いレッグドライブでフィニッシュし、25-17と8点差に詰めた。

 サポーターの大声援も力となり、押せ押せムードとなったライオンズ。だがその後、敵陣でのラインアウトを連続で失敗し、勢いは止まった。ピンチだったクルセイダーズは、75分は途中出場のLOルーク・ロマノが、77分はLOサム・ホワイトロック主将がスチールするファインプレー。

 そして、やがてフルタイムとなり、試合巧者のクルセイダーズが12回目の決勝で最多優勝回数を8に伸ばし、歓喜の抱擁を交わした。

 決勝後のテレビインタビューで、負傷離脱したワーレン・ホワイトリー主将に代わってライオンズのゲームキャプテンを務めたヤコ・クリエルは、「このチームがこれで終わってしまうのは残念。本当にいいチームだった」と話したあと、唇をかみしめて、こぼれそうな涙をこらえた。

 ライオンズは2013年にスーパーラグビーからの降格を経験している。そこから、ヨハン・アッカルマン ヘッドコーチのもとで必死に鍛え、チームを再建して2016年、2017年と準優勝。指揮官はこの試合を最後に退任してグロスター(イングランド)に移ることが決まっていたため、このチームでの初優勝への思いは強かったのだ。

 しかし最後はクルセイダーズを称え、「彼らはすばらしかった。彼らは今日、勝利を喜ぶに値するチームだと思う」とコメントし、舞台を降りた。

 クルセイダーズのホワイトロック主将は、「今日は非常に苦労すると思っていた。常に頑張っていかなければいけない、タックルし続けなければいけないという気持ちでやっていた。選手たちがよく力を発揮してくれた」と、激闘を振り返った。

 クルセイダーズはスコット・ロバートソン ヘッドコーチ体制となって1年目での優勝。9年ぶりに、スーパーラグビーの栄冠をクライストチャーチに持ち帰る。