2023年のドラフト会議では9人の大学生がドラフト1位指名を受けるなど、「大学生豊作イヤー」だった。そして、2024年のドラフト戦線もまた大学生に逸材がひしめいている。現段階でドラフト1位が有力視される10選手をピックアップしてみたところ…

 2023年のドラフト会議では9人の大学生がドラフト1位指名を受けるなど、「大学生豊作イヤー」だった。そして、2024年のドラフト戦線もまた大学生に逸材がひしめいている。現段階でドラフト1位が有力視される10選手をピックアップしてみたところ、実に9選手が大学生になった。それでは、今年のアマチュア野球を熱くするであろう10選手を紹介していこう。


明治大のドラフト1位候補・宗山塁

 photo by Ohtomo Yoshiyuki

宗山塁(明治大/遊撃手/175センチ・78キロ/右投左打)

 遊撃手としては鳥谷敬(元阪神ほか)以来の大物。おそらく2024年のドラフト戦線は宗山を中心に回っていくはずだ。最大の武器は破綻のない遊撃守備。力感なく、流れるような身のこなしで打球をさばき、三遊間深い位置からのスローイングも強い。今すぐプロの一軍に入れても通用するだけの守備力を持っている。打撃面はクセがなく、シュアなスタイル。大学3年間で通算94安打、打率.348、8本塁打、44打点と立派な成績を残している。俊足タイプではないものの、50メートル走のタイム(光電管計測)は大学2年時の6秒48から1年間で6秒31と縮めている。天性のスター性を備えた成長途上の遊撃手は、最終的に何球団から1位指名を受けるだろうか。


2023年秋のリーグ戦で圧巻の投球を披露した関西大・金丸夢斗

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金丸夢斗(関西大/投手/177センチ・77キロ/左投左打)

 現時点で「2024年ドラフト戦線ナンバーワン投手」と言っていいだろう。兵庫・神港橘高(市神港と兵庫商が統合して2016年に設立)で台頭した好素材が、関西大でますます本格化。体格的に目を引くものはないものの、しなやかな腕の振りから放たれるストレートの伸びは逸材揃いの大学球界でも頭ひとつ抜けている。昨秋のリーグ戦では6戦6勝、51イニングを投げて74奪三振、失点2、防御率0.35と圧巻の数字を残した。スライダー、スプリット、チェンジアップなどの変化球も精度が高く、強打者のインコースを正確に突くコントロールも併せ持つ。高校、大学の大先輩である、関西大・山口高志アドバイザーとの師弟関係も要注目だ。


パワーと確実性を兼ね備える大商大のスラッガー・渡部聖弥

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渡部聖弥(大阪商業大/外野手/177センチ・88キロ/右投右打)

 東の野手の目玉が宗山(明治大)なら、西の野手の目玉はこの男。広島・広陵高の同期コンビがドラフト戦線の主役になりそうだ。最大の見どころはスイングの瞬発力。ボールを手元まで呼び込み、目にも止まらぬターンで弾き返す。高確率でヒットゾーンに運べるコンタクト能力と、センターからライト方向にもスタンドインできるパワーは上の世界でも武器になる。俊足と強肩からも類まれな馬力が滲み出ており、プロのレギュラー外野手として活躍するイメージが描きやすい。その愛嬌のある風貌とたくましい肉体は、ゼラス・ウィーラー(巨人巡回打撃コーチ)を彷彿とさせる。


大学日本代表で4番を任された青山学院大の西川史礁

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西川史礁(青山学院大/外野手/182センチ・81キロ/右投右打)

 急成長を見せる右のスラッガー候補。龍谷大平安高時代は高校通算8本塁打と目立つ存在ではなかったが、大学進学後にウエイトトレーニングに取り組み大変身。3年時からレギュラーを奪取すると、春のリーグ戦で打率.364、3本塁打、10打点を記録してMVPを受賞。夏には大学日本代表で4番打者を任されるまでに出世した。打球に角度をつけられるスラッガーらしいスイングで、レフト方向中心に放り込む。現在はチーム事情で左翼を守っているものの、三塁など内野をこなせる素養もある。大学最終年も爆発力を見せつけられれば、名実ともにドラフト1位候補になるだろう。


1年春のリーグ戦で4本塁打の衝撃デビューを飾った青山学院大・佐々木泰

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佐々木泰(青山学院大/三塁手/178センチ・83キロ/右投右打)

 チームメイトの西川とともに、大学屈指の右の大砲として要チェックすべき逸材。県岐阜商高では高校通算41本塁打を放ち、鳴り物入りで進学すると1年春から打率.371、4本塁打と衝撃デビューを飾った。その後は課題の確実性が改善されず、やや停滞している印象もある。とはいえ、ツボにはまった際の一発には野球場のムードを一変させる力がある。瞬発力、しなやかさ、パワーを兼ね備えたスイングは間違いなく非凡なだけに、あとは公式戦で結果を残せるかどうか。右打ちの強打の内野手はプロ側の需要が高まる傾向があり、ドラフトに向けて評価が急騰する可能性は十分にある。


昨年秋の神宮大会で上武大を3安打完封した富士大・佐藤柳之介

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佐藤柳之介(富士大/投手/179センチ・85キロ/左投左打)

 実戦で光り輝く大学生左腕。狭い幅のなかで投球するフォームは、伊藤将司(阪神)を彷彿とさせる。2023年は春秋とも全国ベスト4進出に大きく貢献。とくに秋の明治神宮大会で上武大を3安打完封した投球は見事だった。常時140キロ台前半と驚くような球速はないものの、捕手に向かってひと伸びする好球質でコントロールも正確。縦に割れるカーブを筆頭に、スライダー、カットボール、ツーシーム、スプリットと多彩な変化球を高次元で操れる。近年はプロ側がアマチュア投手に求める要素が「パワー」よりも「正確性」に向く傾向があるだけに、佐藤が最高の評価を受けても不思議ではない。


最速152キロを誇る環太平洋大の徳山一翔

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徳山一翔(環太平洋大/投手/177センチ・87キロ/左投左打)

 中国地方から虎視眈々とドラフト1位をうかがうサウスポー。徳島・鳴門渦潮高では投手として3番手格の存在だったが、高校野球引退後にトレーニング施設に通い身体感覚を見つめ直したところ急成長。大学2年秋の明治神宮大会で国際武道大を7回ノーヒットに抑える圧巻の全国デビューを果たした。最速152キロの快速球はわかっていても振り遅れる、打者に向かって加速するような球質。スライダー、チェンジアップなどの変化球も精度が上がっている。2023年には左ヒジ痛を発症するなど、大学で年間通して活躍したシーズンはまだない。素材は間違いないだけに、コンディションを維持できるかが最大の焦点になる。


昨年12月の大学日本代表候補強化合宿で157キロをマークした愛知工業大の中村優斗

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中村優斗(愛知工業大/投手/176センチ・80キロ/右投左打)

 底が知れない剛球右腕。長崎・諫早農高では全国的に無名の存在だったが、愛知工業大に進学後は1年春から中心投手として活躍。2023年12月に召集された大学日本代表候補強化合宿では、寒風吹きすさぶ松山坊っちゃんスタジアムで157キロを計測して話題をさらった。ゆったりとした二段モーションから重量感のあるストレートを投げ込むだけでなく、変化量を自在に操るスライダーも勝負球に使える。球速が出せる一方でボールに角度がつくタイプではなく、ストレートで空振りを量産できるタイプではない。緩急を活用するなどプロでも長いイニングを投げられるだけの適性を示せれば、ドラフト1位指名される可能性は高まりそうだ。


星稜高時代に「スーパー1年生」と騒がれた日本体育大の寺西成騎

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寺西成騎(日本体育大/投手/186センチ・85キロ/右投右打)

 不死鳥の如く蘇った本格派右腕。石川・根上中ではU−15日本代表に選ばれ、星稜高1年夏には甲子園で最速143キロをマークして「スーパー1年生」ともてはやされた。長身ながら柔らかく、バランスのとれた投球フォームには夢が詰まっていた。だが、高校2年夏に右肩を痛めて以降、その存在は表舞台から消えてしまう。3年に及ぶ気の遠くなるようなリハビリの末に、大学3年春のリーグ戦から戦線復帰。いきなり5勝0敗、防御率0.31と結果を残してみせた。若き名投手コーチ・辻孟彦コーチの辛抱強いサポートも後押しし、シーズンを追うごとに球威が増してきている。現段階で最速153キロを計測しているが、まだまだ発展途上。長い冬を越え、これから旬を迎える右腕だ。


強打の大型遊撃手、花咲徳栄の石塚裕惺

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石塚裕惺(花咲徳栄高/遊撃手/181センチ・83キロ/右投右打)

 現時点で「ドラフト1位指名は間違いない」と言える存在がいない高校球界で、ひときわ輝きを放つ強打の遊撃手。まるで大学生がグラウンドに立っているような泰然とした佇まいで、走攻守に大物感を感じさせる。昨秋の関東大会1回戦・横浜高戦では高校通算18号となる本塁打を放ったあと、2回の申告敬遠を受けるなど3四球と勝負を避けられた。大型内野手ながらプレーにスピード感があり、進境著しい遊撃守備はまだまだ成長の余地が残されている。野村佑希(日本ハム)ら岩井隆監督が「これは」と見込んだ野手を次々にプロに送り込む花咲徳栄だけに、ドラフトイヤーに向けて着実に仕上げてくるだろう。