第100回箱根駅伝が1月2日に開幕する。今大会は、出雲駅伝と全日本大学駅伝を制した駒澤大の2年連続での「学生駅伝3冠」が達成されるかに注目が集まる。そんな優勝争い、シード権争いの展望も含めて、スポーツライターたちが独自目線で上位の10校を…

 第100回箱根駅伝が1月2日に開幕する。今大会は、出雲駅伝と全日本大学駅伝を制した駒澤大の2年連続での「学生駅伝3冠」が達成されるかに注目が集まる。そんな優勝争い、シード権争いの展望も含めて、スポーツライターたちが独自目線で上位の10校を予想した。


箱根駅伝に向けた

「監督トークバトル」で完全優勝を目標に掲げた駒澤大の藤田敦史監督 Photo by 日刊スポーツ/アフロ

【駒澤大の優勝は硬い。面白いのは東海大】

■佐藤俊(スポーツライター)

1位 駒澤大
2位 青山学院大
3位 創価大
4位 中央大
5位 國學院大
6位 城西大
7位 早稲田大
8位 法政大
9位 大東文化大
10位 東海大

 駒大の箱根駅伝2連覇、2年連続の学生駅伝3冠はかなり堅そうだ。

 出雲駅伝、全日本大学駅伝はともに1区から一度も首位を譲ることなく、ぶっちぎりの優勝。全日本以降は、佐藤圭汰(2年)、鈴木芽吹(4年)、篠原倖太朗(3年)が揃って1万mで27分台を出し、花尾恭輔(4年)ら故障組も復帰。非常にいい流れで来ている。

 区間配置では山川拓馬(2年)と伊藤蒼唯(2年)、篠原、安原太陽(4年)が補欠登録だが、"山"を含めてオーダーは盤石だ。3区以内でトップに立てば、そのまま独走の気配が漂う。

 対抗馬は、青学大と創価大、中大か。

 青学大はとにかくノーミスでいくしか勝機が見えてこない。昨年の6区のようにミスが生じれば、後半までもつれる展開は望めない。1区から3区まで引き離されず、4区、5区で駒大の前に立ち、復路で勝負。そういう意図が見えるオーダーだが、カギは補欠登録の黒田朝日(2年)と太田蒼生(3年)がどこまで駒大の"モンスター"たちと戦えるかだろう。

 創価大は、出雲2位、全日本6位と安定感が抜群だ。「響・凌」のダブル吉田(ともに3年)とスティーブン・ムチーニ(1年)が3本柱になるが、とりわけ大きいのは、5区の吉田響(3年)の存在だ。4区まで粘り、トップと1分30秒以内で5区の響にバトンを渡せれば、往路優勝が見えてくる。響が"4代目・山の神"になれば、総合3位内は十分可能だ。

 中大は今回、昨年の箱根1区から3区まで同じメンバーを並べた。補欠登録の吉居駿恭(2年)が4区に入れば、往路の平地は昨年と同布陣で戦うことになる。ただ、昨年と違うのは、前回5区3位の阿部陽樹(3年)を8区に置くなど復路に力を入れている点。往路は離されず、復路で勝負の区間配置をしているが、阿部が抜けた"山"でどれだけ駒大に対抗できるかに注目だ。

 面白い存在なのは東海大だ。箱根予選会は13位通過だったが、エントリーメンバー上位10名の1万m平均タイムは、28分32秒14で全体の4位。エースの石原翔太郎(4年)が7区、越陽汰主将(3年)が補欠登録ながら戦列に復帰し、2区の花岡寿哉(2年)、補欠登録された鈴木天智(2年)、1区の兵藤ジェダ(2年)と強い2年生が上級生を支えている。問題は"山"だ。5区は喜早駿介(4年)が担うが、彼と6区の走りがハマれば3年ぶりのシード権確保が見えてくる。

 東海大に加え、順大、東洋大、大東文化大が10位内を争うだろうが、エースに頼らない堅実な走りができれば、シードの尻尾が見えてくるだろう。

【中央大の総合優勝もありえる】

■酒井政人(スポーツライター)

1位 駒澤大
2位 中央大
3位 國學院大
4位 青山学院大
5位 創価大
6位 城西大
7位 大東文化大
8位 早稲田大
9位 帝京大 
10位 法政大

 駒大は往路、"山"の区間、復路も非常にハイレベル。1区で大きく出遅れない限り、連覇は固いと予想する。2区終了時でトップ付近なら、3区の佐藤圭汰(2年)で抜け出して、そのまま独走するだろう。

 補欠の篠原倖太朗(3年)が1区に入ると、他の大学が引き離すのは非常に難しくなる。ライバル校は、篠原を1区より4区に配置してほしいと思っているのではないだろうか。

 駒大を脅かすとすれば中大だ。前回大会で区間賞を獲得した2区・吉居大和(4年)は"超高速レース"に持ち込むつもりでいるため、1区で駒大にリードを奪うことができれば、2区終了時で意外な大差をつける可能性もある。先制攻撃が成功すれば、28年ぶりの総合優勝もありえるが、果たしてどうか。

 國學院大は2区・平林清澄(2年)が計算できるだけでなく、伊地知賢造(4年)と山本歩夢(3年)を往路に投入するオーダーが濃厚。5区に上原琉翔(2年)を入れてきたのは予想外だったが、往路は面白い戦いができるだろう。前田康弘監督が「区間新記録を狙える可能性がある」と話していた6区は、後村光星(1年)が入った。ルーキーが期待通りの快走を見せれば、次回の第101回大会はⅤ候補になりそうだ。

 青学大は1、2区次第になるが、先に挙げた3校より戦力は落ちると見ている。黒田朝日(2年)の走りに注目したい。

往路では創価大と城西大から目が離せない。両校はケニア人留学生だけでなく、"山の神"候補がいるからだ。創価大・吉田響(3年)vs城西大・山本唯翔(4年)の戦いはどちらが制するのか。往路のパンチ力は城西大のほうが上だが、総合順位は選手層が厚い創価大が上に来るだろう。

 大東大は箱根予選会(トップ通過)と全日本(7位)を見ていても、強さを感じるチーム。9年ぶりのシード権を獲得するだろう。

 早大と帝京大は全日本(それぞれ10位、12位)で振るわなかったが、脱水症状で大きく取りこぼす区間があった。両校とも3区終了時では3位と5位につけていたことを考えると、箱根の高速レースにも対応できるはずだ。

 シード権最後の1枠は順大、東洋大、法大で悩んだが、"山"と復路で計算できる法大の3年連続シードを予想する。

【青学大の調整能力の高さは無視できない】

■折山淑美(スポーツライター)

1位 駒澤大
2位 青山学院大
3位 國學院大
4位 中央大
5位 城西大
6位 創価大
7位 早稲田大
8位 順天堂大
9位 大東文化大
10位 東洋大

 出雲と全日本で隙のない駅伝を見せ、圧勝した駒大の優勝は間違いないだろう。1万mの記録がそのまま通用するわけではないが、初挑戦の1万mで27分28秒50を出した佐藤圭汰は、高校時代から駅伝でも「打倒・留学生ランナー」に挑む積極的なレースを繰り返していた。また、27分38秒66のタイムを持つ篠原倖太郎も、27分台を出す前にハーフマラソンで日本学生記録の1時間00分11秒を出している。ともに実力も裏づけされた記録だ。

 この2人は確実に勝ちきる走りができ、流れを変えられる能力を持っている。さらに他の選手たちも勝つことに慣れて自信を持っているだけに、よほどのことがない限りは自分たちのレースをするはずだ。

 それに対抗する一番手は青学大だろうが、何年かで作り上げてきた「チームとしての調整能力の高さ」は無視することができない大きな武器だ。前回は6区が大誤算で駒大に5分01秒差をつけられたのが敗因になったが、それがなければ接戦を演じていた。そのチームから4年生7名が抜けたが、チーム作りの伝統は今年も受け継がれている。

 國學院大は1、2年生の勢いに注目する。現状では下級生が半数を超えるオーダーになりそうだが、ここで結果を出せればエースの平林清澄と山本歩夢が4年生になる来年は駒大に対抗できるチームになりそう。

 中大は前回大会で2位になったが、2区・吉居大和の田澤廉とのデッドヒートと競り勝った結果があったからこその結果だった。今回も2区でエースの吉居が、チーム全体を燃え上がらせる状況を作り出せるかがカギになるだろう。

 その上位4校に加え、シード権獲得校も含めた注目区間となるのは5区。距離が20.8㎞になって以来、23km超の時代よりタイム差は小さくなったが、シード権獲得争いとなると重要なポイントになる。今回はその"山"に期待できる有力選手も多く、前回の区間記録更新に続き、1時間10分切りへの機運は高まってきている。

 そのターゲットは、5区が20.9kmだった2005年に今井正人(当時・順大)が記録した1時間09分12秒の記録。シューズ改良などで有利な状況になっている今、まずはその記録にどこまで迫れるかに期待したい。