箱根駅伝2024 全チーム紹介シード校編 前回大会は駒澤大と中央大が往路で激しく競り合い、復路は駒澤大が独走。悲願の大学駅伝3冠を達成した。藤田敦史監督が就任した今季も駒大は絶好調。出雲駅伝と全日本大学駅伝を完勝して、2年連続の3冠に王手を…

箱根駅伝2024 全チーム紹介

シード校編

 前回大会は駒澤大と中央大が往路で激しく競り合い、復路は駒澤大が独走。悲願の大学駅伝3冠を達成した。藤田敦史監督が就任した今季も駒大は絶好調。出雲駅伝と全日本大学駅伝を完勝して、2年連続の3冠に王手をかけている。

 記念すべき第100回大会で"強すぎる王者"を止める大学はあるのか。前回大会で10位までに入り、シード権を獲得した各大学の注目選手と戦力をチェックしていこう。

※紹介は前回大会の総合結果順


駒大3本柱のひとり佐藤圭汰(左)と、

「山の妖精」城西大の山本唯翔 Photo by SportsPressJP/アフロ

【駒澤大学】

出雲と全日本は独走V、2年連続の駅伝3冠へ視界は良好

 出雲は1区・篠原倖太朗(3年)が飛び出し、続く佐藤圭汰(2年)も区間賞。最終6区は主将・鈴木芽吹(4年)が2年連続の区間賞で締めくくった。全日本は1区・赤津勇進(4年)がトップに立つと、2区・佐藤が区間新記録でリードを拡大。3区・篠原が日本人トップの快走を見せるなど、最終的には後続に3分34秒もの大差をつけて、悠々と4連覇を果たした。

 11月25日の八王子ロングディスタンス1万mでは"3本柱"が快走した。佐藤が日本人学生歴代2位の27分28秒50(U20日本記録)、鈴木が同3位の27分30秒69、篠原が同5位の27分38秒66を叩き出している。箱根では、主将・鈴木が2区候補で、佐藤は1区を希望。篠原も往路の起用が濃厚だ。

 前回は5区・山川拓馬(2年)が区間4位、6区・伊藤蒼唯(2年)が同1位で走っており、"山"も強力。選手層は厚く、復路の戦力に不安もない。史上初となる2年連続の大学駅伝3冠に向けて、視界は良好だ。

【中央大学】

エース吉居大和でトップを奪って、28年ぶりの総合優勝を狙う

 出雲はエース・吉居大和(4年)を欠いた影響もあって7位。全日本は3区・吉居大の失速がありながら、終盤は2位争いを繰り広げて4位に入った。今季は2年連続で箱根の9区を好走した主将・湯浅仁(4年)の充実が目立つ。出雲6区と全日本7区で区間2位。MARCH対抗戦1万mで自己ベストを28分12秒17まで短縮しており、今回は往路での起用が見込まれている。

 前回大会は、吉居大が2区を1時間06分22秒の区間歴代8位で区間賞。今回は区間新記録ペースでぶっとばすような爆走を見せるつもりだ。前回3区で区間賞の中野翔太(4年)も往路の攻撃ポイントになる。1区は吉居駿恭(2年)と溜池一太(2年)が候補で、どちらかを復路にまわす見込み。

"山"は新戦力が準備を進めており、2年連続で5区を好走した阿部陽樹(3年)を復路で起用したい考えだ。28年ぶりの総合優勝を目指すには、絶対エース・吉居大でトップを突き抜けたい。

【青山学院大学】

出雲5位、全日本2位から箱根で優勝へ。2019年度の再現を目指す

 前回3位のメンバーが7人卒業するも、今季も存在感を見せている。出雲は5位に終わったが、全日本は國學院大、中大とのアンカー決戦を田中悠登(3年)が制して、準優勝に輝いた。

 今季は黒田朝日(2年)の成長が大きい。出雲2区は駒大・佐藤と同タイムで区間賞、全日本2区は従来の区間記録を上回るなど、「エース」と呼べる存在に。箱根は2区 or 5区での起用が有力だ。

 5区は前々回で好走した若林宏樹(3年)も候補。6区は山内健登(4年)と野村昭夢(3年)が候補に挙がっており、"山"はかなり強力だ。3区と4区で快走している太田蒼生(3年)も往路の軸となる選手。佐藤一世(4年)はMARCH対抗戦1万mで28分11秒00の自己新をマークするなど調子を上げてきた。選手層は厚いだけに、2区終了時で駒大に大きく引き離されなければ、2019年度(出雲5位、全日本2位、箱根1位)の再現ができるかもしれない。

【國學院大學】

伊地知、平林、山本の"3本柱"を軸に「てっぺん」にチャレンジ

 夏は主力選手の足並みが揃わず、出雲は4位と振るわなかった。全日本は2区で10位に転落するも、4区・高山豪起(2年)が3人抜きを見せ、7区・平林清澄(3年)が区間賞。最後は主将・伊地知賢造(4年)が中大をかわして目標の「表彰台」を確保。2位の青学大と4秒差の3位に入った。

 箱根は、前回4位メンバーが7人残っている。平林は2区で区間賞争いできる実力があり、山本歩夢(3年)は1区もしくは3区が濃厚。前回1区を務めた青木瑠郁(2年)と、出雲1区と全日本3区を区間3位と好走した上原琉翔(2年)も往路の候補だ。

"山"は1年生に託すプランもあるが、区間上位で戦える計算が立っているという。前回5区を務めた伊地知は平地にコンバート予定。勝負どころで起用されることになりそうだ。5人がエントリーされた1年生にも楽しみな選手が多く、チームは第101回大会の「優勝」をにらみながら、今回も伊地知が目標に掲げ続けてきた「てっぺん」に挑戦する。

【順天堂大学】

出雲と全日本は苦戦もエース三浦龍司の快走で波に乗りたい

 エース三浦龍司(4年)はメイン種目の3000m障害で日本記録を塗り替え、ブダペスト世界選手権で6位入賞。5000m高校記録保持者の吉岡大翔(1年)が入学するも、学生駅伝は不発に終わっている。出雲は三浦が欠場した影響もあって10位。全日本は2区・三浦で8位に浮上したが、その後は苦しいレースが続き、11位に終わっている。

 しかし、12月3日の熊本甲佐10マイルロードレースで、浅井皓貴(3年)が46分05秒の日本人学生最高タイムで優勝するなど、チームは上昇ムードだ。浅井は前回の箱根で7区を区間3位と好走しているが、今回は往路の主要区間で力を発揮するだろう。

 2年連続で"花の2区"を担ってきた三浦、3年連続で4区を務めている石井一希(4年)、ルーキー吉岡も往路の候補か。選手層は厚くないが、三浦のスピードと好調・浅井を軸に上位戦線に切り込みたい。

【早稲田大学】

各学年にエース級が揃う戦力で「5位以内」を目指す

 前回6位のメンバーが8人残っており、楽しみな1年生も加入。出雲で6位に入ったが、全日本は10位に終わり、就任2年目の花田勝彦駅伝監督は危機感を抱いている。ただ、全日本は8区が区間19位に沈んだ影響が大きかった。1区・間瀬田純平(2年)が区間2位、2区・山口智規(2年)が区間4位と序盤は好スタートを切っている。

 山口は箱根出場校が大挙して出場した上尾ハーフで、大迫傑(現・Nike)が持つ早大記録を更新する1時間01分16秒で日本人トップ。箱根では1~3区のどこかに起用されそうだ。1万m27分台の石塚陽士(3年)は前回2区(区間14位)を担当。5区は前回6位と好走した伊藤大志(3年)の起用が濃厚だ。6区にも前回3位の北村光(4年)が控えている。

 関東インカレの1部1万mで6位に食い込んだ工藤慎作、出雲でアンカーを区間6位と好走した長屋匡起ら1年生も期待十分。選手層は薄いが、各学年に好選手が揃う総合力でトップ5を目指す。

【法政大学】

安定感があって意外性のあるチームは「5位以内」が目標

 前々回は10位、前回は7位。今回は20年ぶりとなる「総合5位」を目標に掲げている。全日本は6月の選考会で落選して、出雲は9位と今季は目立った活躍を見せていないが、調子を上げてきた印象だ。

 11月12日の世田谷ハーフで稲毛崇斗(4年)が1時間02分54秒の4位と好走すると、翌週の上尾ハーフでは松永伶(4年)が1時間01分56秒で大学生男子の部で3位、宮岡幸大(3年)が1時間02分07秒で同6位に食い込んでいる。2区候補の松永は1万mの自己ベストを28分28秒15まで短縮。"山"には前回5区を10位で走った細迫海気(4年)、6区には前々回2位、前回5位と快走した武田和馬(3年)という経験者がいる。

 さらに、前回8区で区間賞に輝いた宗像直輝(4年)もエントリーされた。近年、復路(前回は復路3位)では安定感のある走りを見せているだけに、4区終了時で好位置につけることがきればトップ5に近づけるだろう。

【創価大学】

出雲駅伝で準優勝。箱根ではトップ3だけでなく往路Vも虎視眈々

 前回メンバーが6人卒業するも、戦力は充実している。3月の日本学生ハーフは小暮栄輝(3年)が5位、野沢悠真(2年)が7位とダブル入賞。関東インカレの2部ハーフは吉田凌(3年)が3位に入った。9月の日本インカレでは1万mで小暮が日本人2位、5000mで織橋巧(1年)が7位に食い込んでいる。

 出雲は4区・山森龍暁(4年)と5区・吉田響(3年)が連続区間賞を獲得して準優勝。全日本は4区終了時で13位と低迷したが、5区・吉田響が区間賞・区間新の快走で急上昇。最後はアンカー吉田凌が、東京国際大と大東大をかわして6位でゴールした。

 全日本を外れた桑田大輔(4年)が、11月下旬に1万mで28分11秒08の自己新をマークし、1区候補に名乗りを挙げた。2区はスティーブン・ムチーニ(1年)が有力で、5区には吉田響を起用予定。東海大から転入して"山の神"を目指している吉田響が爆走すれば、目標の「3位以内」だけでなく、往路Vのチャンスもありそうだ。

【城西大学】

出雲3位、全日本5位、箱根でも過去最高順位(6位)を狙う

 前回大会は3年生以下で臨んで9位に食い込み、5年ぶりにシード権を獲得した。前回5区で区間新記録を樹立した山本唯翔(4年)は、7月のワールドユニバーシティゲームズ1万mで銅メダルを獲得。チームに勢いがつき、出雲で3位、全日本で5位と過去最高順位を更新した。

 ヴィクター・キムタイ(2年)は出雲3区と全日本3区で連続区間賞。斎藤将也(2年)は全日本4区で区間賞を獲得し、1万mで27分台に突入した。エースの山本は出雲と全日本でアンカーを務めて、区間3位と同5位。この"3本柱"が強力で、箱根ではさらに持ち味が生かせそうだ。

 前回は斎藤が2区で区間15位、キムタイが3区で区間11位と伸び悩んだが、前回以上の走りが期待できる。特にキムタイは区間賞候補になるだろう。そして"山の妖精"と呼ばれる山本がどこまで区間記録を短縮するのか。前回は野村颯斗(4年)が11位だった1区で好スタートを切れれば、往路で"台風の目"になりそうだ。

【東洋大学】

全日本過去ワースト14位からの巻き返しなるか!?

 昨年度はエース松山和希(4年)の不在もあり、出雲は9位、全日本は8位。箱根は18年連続シードを確保したものの、ギリギリの10位だった。今季は出雲で8位に入ったものの、全日本は松山、佐藤真優、九嶋恵舜(ともに4年)、石田洸介(3年)を起用できずに大苦戦。一度も10位以内に入ることなく、過去ワーストの14位に沈んだ。

 それでも、主力が戻りつつある。前回2区を務めた石田は外れたものの、松山、佐藤、九嶋はエントリーされた。特に松山は、練習の一環で出場した小江戸川越ハーフで好走。3度目の"花の2区"に向けて調子を上げている印象だ。

 酒井俊幸監督は前半区間での劣勢を覚悟しているが、エースが完全復活すれば十分に勝負できる。出雲と全日本の両駅伝に出走した熊崎貴哉(4年)、梅崎蓮(3年)、小林亮太(3年)、緒方澪那斗(2年)が引っ張ってきたチームにキャリアのある4年生が加わり、どこまで巻き返せるか。

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