舞台が大きくなるほど、決まってゴールという結果を残す。浅野拓磨に宿る摩訶不思議な力を紐解く上で、合点のいく答えが見つか…

 舞台が大きくなるほど、決まってゴールという結果を残す。浅野拓磨に宿る摩訶不思議な力を紐解く上で、合点のいく答えが見つかったのは6月だった。

 舞台はエルサルバドル、ペルー代表に快勝した森保ジャパンの活動期間。日々の練習後に行われる取材対応で、浅野の前には多くのメディアが集まっていた。

 帰国前に臨んだ難敵レバークーゼンとのブンデスリーガ最終節。負ければ2部チームとの入れ替え戦に回る大ピンチで、浅野はボーフムの先制点をアシスト。さらにダメ押しゴールも決めて、低迷が続いたチームを1部残留に導いていたからだ。

 ただ、浅野が最終節で決めたゴールは、昨シーズンの3ゴール目だった。ストライカーとしては、あまりに少ない数字と言わざるをえない。それでも浅野は不敵な自信を漂わせながら、ボーフムでの2シーズン目を振り返っている。

「常に“自分はできる”と自信を持ちながらプレーしてきましたし、あとは結果というものがどのタイミングで出るか、だけだと思っていました。たしかにヒーローになるタイミングがちょこちょこあるというか、もしかすると他の人よりも多いかもしれないし、その意味では自分でも“持っている”という感覚はありますね」

■何一つない具体的な根拠

 浅野が一世一代のヒーローになったのが昨年のW杯カタール大会。強豪ドイツ代表戦の後半38分に自陣からの縦パスに反応し、自慢のスピードでそのまま疾走。名手マヌエル・ノイアーの牙城を、豪快に打ち破るゴールを決めた。

 逆転に成功した日本は、グループリーグ初戦で世界を驚かせる大金星をあげた。もっとも、歴史的なゴールの余波は再開後のブンデスリーガでも続いたという。

「自分を警戒する対戦相手が間違いなく増えてきた、と。世界が見ている大会でゴールを決めたのが、関係しているかもしれないですね。個人的にはどの試合でも、自分がマッチアップしたところで負けた、という感覚はなかった。成長している手応えがずっとあったし、それも自信となって相手にも伝わっていたのかな、と」

 ドイツの出鼻をくじき、グループリーグ敗退に追い込んだ男として認知度が一気に高まる。その結果としてブンデスリーガで対峙するDFから必要以上に畏怖される、という図式ができあがったのか。もっとも、浅野はこんな言葉も残している。

「実際にどのように思われていたのかは、よくわからないんですけど」

 この言葉に思わず合点がいった。要は具体的な根拠は何ひとつない。それでも究極の自己暗示に導かれるように、常にポジティブに稼働している浅野の思考回路が、大舞台でも絶対に物怖じしない強靱なメンタルの源泉になっていたからだ。

 そして、細かい点をまったく気にしない浅野に宿る、いい意味での図太さは直近のブンデスリーガでも、ドイツ国内をあ然とさせる行動を引き起こしていた。

(取材・文/藤江直人)

(後編へ続く)

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