6年ぶりにウインターカップの舞台に戻ってきた育英高校(兵庫県)が、チーム一丸で最初の山場を乗り越えた。  12月23日に行わ…

 6年ぶりにウインターカップの舞台に戻ってきた育英高校(兵庫県)が、チーム一丸で最初の山場を乗り越えた。

 12月23日に行われた「SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会」1回戦、育英は九州学院高校(熊本県)に最終スコア75−71で勝利。前回出場した2017年大会は1回戦で敗退。当時も指揮を執った沼波望コーチ、さらには山路哲司アシスタントコーチにとっても待望の勝利だった。

「6年前はアシスタントの山路が出場してこのコートで負けたんです。 感慨深い思いもありますし、彼自身も呪縛から解き放たれたんじゃないかなと思います」

 そう言って笑顔を見せた沼波コーチは、この接戦を勝ちきれた要因を次のように分析する。

「相手はフォーメーションが多く、変則的なこともたくさんやられた中でも選手たちが迷わなかったことだと思います。リバウンドやルーズボールもですし、(チームが掲げる)24秒のうち最初の8秒でチャンス作ることなど、そういったところが最後までブレなかったので、接戦になっても自分たちでしっかりと修正できたのかなと。 そこが勝因だと思います」

 育英は点差を詰められる度に勝負強いシュートを決めてリードを保ち、第4クォーターを前に59−51。だが、同クォーター序盤で逆転を許すと、その後はリードチェンジを繰り返す激しい攻防が繰り広げられた。それでも終盤は2年生エースの長田祐聖、竹内琉人(2年)が要所で決めきり、司令塔の三井太雅(3年)がしっかりとコントロールして競り合いをものにした。

 この試合では、馬場が16得点11リバウンドのダブルダブルの活躍。竹内と3年生の竹本龍二はともに13得点をマークした。チームで最もシュート力のある竹本は、計7本中3本の3ポイントシュートを沈め前半からオフェンスをけん引。しかし、1点ビハインドの勝負どころで交代を告げられ、最後の約3分間はベンチで戦況を見守った。

「結構ハラハラしましたけど、同じ3年生の太雅も頼もしいガードなので『やってくれるだろう』とは思っていました」。そう振り返る竹本は、この試合が自身初となる全国の舞台だった。試合中は九州学院に警戒されフェイスガードに遭う時間帯もあり、「マークされた後に何もできなかったです。この大会に向けてシュート精度とかバスケIQを上げることを頑張ってきたんですけど、今日はその力が出せなかったですね。でも、自分は今までそういう経験がなかったので、いい経験になりました」と今後の糧にした。

 ウインターカップ県予選決勝でも報徳学園高校との接戦を制し、育英は6年ぶりの出場を決めた。その試合の最終スコアは68−67。「兵庫県の予選で1点差のゲームを勝ちきってから、チームとしても段々自信がついてきた感じはあります」と、竹本は手応えを感じているという。

 育英は、中学時代に日本一を経験した2年生が多く在籍するのが1つの強みと言える。けれど、九州学院戦のスターターを担ったのは竹本、三井、熊谷壮真の3年生3人と、藤村日向、馬場の2年生2人。経験豊富な後輩たち以上に努力を重ねてきた3年生の存在が、チームを一回り大きくしたのだ。今回の勝利に満足することなく、竹本は次戦に目を向けて取材エリアを後にした。

「2年生が中心ですけど、3年生としてディフェンスや泥臭いプレーを頑張りたいですし、自分としてはチームが勝つためにしっかりとシュートも決めていきたいです。全国ベスト8を目指している以上、その目標を絶対に達成できるように次の試合も勝ちたいと思います」

文=小沼克年