クラブ・ワールドカップが、サウジアラビアで開催されている。浦和レッズも奮闘しているが、彼の国を知る蹴球放浪家・後藤健生…
クラブ・ワールドカップが、サウジアラビアで開催されている。浦和レッズも奮闘しているが、彼の国を知る蹴球放浪家・後藤健生の胸には不安が湧き上がる。サウジアラビアの本来の姿を知る人間ほど、ワールドカップ開催への懸念が募るのだ。
■国によって違う戒律の厳しさ
中東でも国によってイスラム教の宗派が微妙に違うので、規則はまちまちです。
アラブ首長国連邦(UAE)は連邦国家ですから、「シャルージャは比較的厳格だ」といったように各首長国によって禁酒の厳しさが違います。
カタールでも高級ホテルではアルコールは飲めました(僕は、その海外に行ったら、その土地の風習に従いますから、カタール滞在中はアルコールは飲みませんでした。インドネシアでも、1回ビールを飲んだだけでしたが)。しかし、サウジアラビアは戒律が厳しい国です。
この国がイスラム教国の中でリーダー的存在になっているのは、産油国の中では人口が多く、石油の埋蔵量も多いからですが、何といっても領土内にイスラム教の聖地であるマッカ(メッカ)とマディナ(メディナ)があるからです。全世界のイスラム教徒が巡礼のためにサウジアラビアまでやって来ます(そして、異教徒は聖地に立ち入ることはできません)。マッカに近いジッダの空港には一般用とは別に、巡礼者専用のターミナルが存在します。
■厳格なサウジアラビア
そして、アラビア半島中部を支配していたサウド家はワッハーブ派という非常に厳格な宗派と結びつくことによって半島の統一を成し遂げました。それが、サウジアラビア王国という国です(「サウド家のアラビア」という意味)。
従って、サウジアラビアでは今でもイスラム法が厳格に適用されていますし、飲酒などはもってのほかです。空港でも、荷物が厳しく検査されます。
クラブ・ワールドカップが開催されているのはジッダという紅海に面した港町です(11月にワールドカップ予選のシリア対日本の試合が行われたのもジッダでした)。内陸部にある首都リヤドに比べれば取り締まりは緩やからしいですが、なにしろジッダは聖地マッカのすぐそばにありますから、やはり宗教色の強い町です。
僕が最初に訪れた1997年当時は、お祈りの時間になると街中の空気がピンと張り詰めた感じで本当に街中から人が消えてしまう感じでした。レストランで食事している最中にお祈りの時間になると、異教徒でも食事を中断しなければいけませんでした。
■近代化路線をたどるが…
そんな時代のことを知っているから、ワールドカップなどが開かれて大勢の外国人がやって来た時に、何か宗教上のトラブルが起こらないかとても心配です。
現在のサルマーン国王はもう87歳で、実権はムハンマド・ビン・サルマーン王太子が握っており(名前は「サルマーンの息子のムハンマド」という意味)、彼が近代化と開国を推進しています。女性が自動車の運転をできるように法改正をしたのもムハンマド王太子でしたし、ワールドカップ招致などもその近代化路線の一貫です。
しかし、大勢の外国人(異教徒)がやって来ることについて保守派は面白く思っていないはずです。日本と違って、何も外国人観光客(インバウンド)を増やして外貨収入が必要なわけでもありません。
保守派がムハンマド王太子の近代化路線反対に動き出したら、ワールドカップは無事に開催できるのでしょうか?