デビュー2年半でGP初出場を果たした吉川美穂 photo by Takahashi Manabu ガールズケイリン最高峰のレース「ガールズグランプリ2023」が12月29日(金)に東京・立川競輪場で開催される。出場できるのは、今年から新設さ…


デビュー2年半でGP初出場を果たした吉川美穂

 photo by Takahashi Manabu

 ガールズケイリン最高峰のレース「ガールズグランプリ2023」が12月29日(金)に東京・立川競輪場で開催される。出場できるのは、今年から新設されたGⅠ開催で優勝した3選手と、賞金ランキング上位者の計7選手。いずれも名だたる猛者たちだ。選手たちがあこがれるこの晴れの舞台に初めて挑むことになった、吉川美穂選手に話を伺った。

【GP出場で両親に恩返し】

――11月末の第1回競輪祭女子王座戦を終了した時点で、初めてのガールズグランプリ出場が決まりました。率直な感想を聞かせてください。

 デビューして2年半になりますが、グランプリに出場できるとは思っていなかったので、すごくうれしいですね。ただ出場権争いは本当に疲れました。7月のガールズケイリンフェスティバルと、10月のオールガールズクラシック(GⅠ開催)で2着になって、だいぶ賞金ランキングが上がりましたので、もしかしたらグランプリに行けるかもしれないと思っていました。でも最後のほうは1本1本、勝たなければいけないという焦りはありましたね。

――初出場ということで、周りからの祝福もありましたか。

 そうですね。いろんな方からお祝いの言葉をいただきました。(地元)和歌山の支部の方々からは、昨年からずっとグランプリへの出場を期待されていたので、うれしいです。それに、私は今までロードでもトラックでもオリンピックに出られなくて、なかなかこれといった大きな大会にも出られなかったんですが、そんななかでも両親はずっと応援してくれていたので、グランプリに出られることは、本当にうれしいですね。

――2021年5月にデビューして3年目にして掴んだチャンスです。過去2年からどの点で成長を感じていますか。

 レースをしている時に余裕がでてきて、どう動いたらいいのかという自分の考えと、走った時の感覚がだんだんかみ合ってきたような感じがありますね。レースを重ねることで慣れてきたということもあると思います。

【優勝への青写真】

――今年9月の取材では、ガールズグランプリ2023にも出場する佐藤水菜選手の圧倒的な強さについて語っていました。差を縮めるためには、どんなことが必要ですか。

 ウエイトトレーニングなどの基礎的なトレーニングを2年間あまりやってこなかったので、そういうところをもう1回見直して、結果を出せるようにしたいですね。(6年間在籍した)ナショナルチームにいたころには、基本的に午前と午後に練習をして、ウエイトトレーニングも週2~3回やっていたので、あのころみたいに練習すればもっとよくなるんじゃないかと思います。

――グランプリに優勝するためのレース展開をいくつかイメージしているかと思います。どのような展開になれば、優勝できそうですか。

 確実に言えるのは、後ろにいたらチャンスがないということです。競輪祭では佐藤水菜選手が先頭に立って、私は一番後ろだったんですけど、そうなったら、とりあえずジャン(残り1周半で鳴る打鐘)で前に行かないと何もできずに終わってしまいます。そう思って実際に私は前に出ましたけど、思ったほど全体のペースが上がらず......。車間が開いたので、そのまま行けるかなと思いましたが、結局7着でした。グランプリでは後ろにいることは避けたいですね。


競輪祭女子王座戦では果敢にチャレンジした

 photo by Takahashi Manabu

――競輪祭では、体調も不十分ななかでも決勝に進んで、果敢な走りを見せてくれたと思います。今回は競輪祭のような屋内バンクではなく、屋外の立川競輪場ですが、どのような印象を持っていますか。

 まだ競輪で立川を走ったことがないんです。地元の選手からは、とにかく重たいバンクだから間違えても自分から仕掛けるなと念押しされています。屋外で風もあって、その重さで進みにくいみたいです。ただ調子がよければ、脚がすごく軽くて、踏めば踏むだけ進む感じになるので、まずはその状態までもっていくことですね。

【雨天にも混戦にも対応する強さ】

――では今年、最も調子がよかったのはどのレースですか。

 パールカップ(6月のGⅠ開催)の最終日です。自分から仕掛けて、上りのタイム(最終周のバックストレッチラインからゴール線までのタイム)もよくて、体も動いていました。あとはオールガールズクラシックの決勝も調子がよかったですね。雨が降っていましたが、ロードの経験もあって雨天には慣れていますし、ごちゃついた展開も慣れていました。一度、他の選手につっかかって失速したんですが、そこから差しきれたのは調子がよかったからかなと思います。

――その時のような感覚まで、これから上げていくということですね。ガールズグランプリは1発勝負のレースとなります。1回のレースにピークを持っていくのは得意なほうですか。

 あまりピーキングは得意なほうではなくて、レース前にピークがきちゃうようなタイプなんですよ。ナショナルチームにいた時も、世界選手権の1週間前にすごく調子がよかったり......。それもわかっているので、体調維持に努めて走りたいですね。

――改めて、ガールズグランプリ2023に向けた抱負をお願いします。

 ガールズグランプリを獲ると、700万円という大金が入ります。今、家を建てているので、家のローンのために頑張ろうかなと思います。

――その家には競輪のためのスペースも作るんですか。

 そうですね。トレーニングルームも作っています。あと、猫が好きなので、猫用のキャットウォークも作っています。今は4匹いるんですけど、実は私、猫アレルギーなんですよ。それで猫アレルギーでも飼える猫を調べてみたら、ロシアンブルーがいて、それで飼うことにしました。飼い始めたら、案の定、すごくかわいくて......。いい匂いがするんです。私の生活のほとんどは猫のため。だから猫のために競輪をしています!

――では、猫のために競輪をして、家のローンのためにガールズグランプリを獲ると。

 はい!(笑)

【Profile】
吉川美穂(よしかわ・みほ)
1993年1月15日生まれ、大阪府出身。中学・高校とソフトボールに励み、高校卒業後に、ロードレースの実業団へ。その後、プロロードレースチーム「ライフガーデン・ビチステンレ」、スペインの「ビスカヤ・ドゥランゴ」に所属し、ワールドツアーに参戦する。トラックレース中距離の選手として、ナショナルチームにも6年間在籍。2020年に日本競輪選手養成所に入り、2021年5月にガールズケイリンデビュー。2023年7月の特別レース「ガールズケイリンフェスティバル」で自身最高位となる2着に入り、10月のGⅠ開催「オールガールズクラシック」でも2着となる。12月29日の「ガールズグランプリ2023」に初出場を果たす。