2023年に飛躍した、坂口楓華 photo by Takahashi Manabu ガールズケイリン最高峰のレース「ガールズグランプリ2023」が12月29日(金)に東京・立川競輪場で開催される。出場できるのは、今年から新設されたGⅠ開催で…


2023年に飛躍した、坂口楓華

 photo by Takahashi Manabu

 ガールズケイリン最高峰のレース「ガールズグランプリ2023」が12月29日(金)に東京・立川競輪場で開催される。出場できるのは、今年から新設されたGⅠ開催で優勝した3選手と、賞金ランキング上位者の計7選手。いずれも名だたる猛者たちだ。そのなかから、2021年以来2度目の出場となる坂口楓華選手に話を伺った。

【今は練習漬け】

ーー2023年は32連勝を記録するなど、飛躍の1年だったのではないでしょうか。

 1年を通して成長できた実感は自分でもあります。ただ、32連勝はありましたけどタイトルは獲得できていませんので、私のなかではまだ何も成し遂げたという感覚はないですね。ようやくスタートラインに立ったような状態だと思っています。

ーー今年はガールズケイリンにGⅠ開催が新設されましたが、実際に走ってみて他のレースとの違いは感じましたか。

 GⅠクラスでも勝負できる脚力がついてきたと感じると同時に、あと一歩足りないんだという課題が見つかる舞台でもありました。強い選手とのレースは自分に足りないところが見えてきますし、やりがいも感じます。そうした経験ができるレースが増えたのはありがたいですし、もっと増えて欲しいですね。

ーーそんな1年の締めくくりとなるガールズグランプリが目前に迫っていますが、コンディションはいかがですか。

(12月11日から13日にかけての)大垣でのレース前に合宿を行なって、グランプリまでは福井に戻って合宿と、トレーニング漬けですね。今回の大垣では1年ぶりにシッティング(ポジション)を変えてみたんですが、以前からあった違和感が消えて痛みのあった箇所も問題なく、踏んだ感触もよかったので、グランプリ直前でもチャレンジしてみてよかったです。

ーー 一年を通してレースを戦っている疲労もあるのではないでしょうか。

 疲労についてはそこまで感じていなくて、若さでカバーできているのかなと思います。10月にインフルエンザにかかってしまった時は体重も筋力も落ちてしまったんですが、(11月の)競輪祭女子王座戦までの1カ月で状態をかなり戻せて、年間で見ると今が一番状態がいいと思います。年末は気が抜けてくる選手も多いかもしれませんが、私は一戦一戦に集中することに徹していて、気持ちの面でも充実しています。

【培ってきたリスペクトの精神】

ーー昨年から(元選手で現在は評論家として活躍する)市田佳寿浩さんの指導を受け、成績向上に繋がっています。

 市田さんの存在は(成長の要因として)一番大きいです。ひとりで取り組む練習メニューの内容もガラッと変わりましたし、選手としての心構えも勉強になっています。市田さんの下で練習している先輩を見ていると、向上心の塊だなと感じますし、そんな環境で練習させてもらえているのが光栄で、感謝してもしきれないくらいなので、結果で恩返しがしたいですね。

ーー年末の大一番であるグランプリへの出場は2021年以来2年ぶりになりますが、その頃の自身と比較して変化を感じる部分はどこでしょうか。

 メンタルと言うか、人間的な部分ですね。今は走っている間だけでなく自転車を降りてからも尊敬される"ちゃんとした人"を目指していて、一昨年の自分と比べると客観的に物事を見られるようになりました。立ち振る舞いも変わったと思いますし、落ち着いて全体を見られるようになったのが一番の成長だと思います。


人としての成長も見せる坂口

 photo by Takahashi Manabu

ーーその変化はどういったきっかけだったのでしょうか。

 私は元から人間観察が好きで、ぼーっと周囲の人を見ていることが多かったんです。そうして他人と自分を照らし合わせながら、自分は周囲の人からどう見られているんだろうと考えてみた時に、もっと人間的に成長しないといけないと思ったんです。2年前は、今とは正反対なダメな人間でしたね。

ーー具体的に自分のどんな部分を「ダメな人間」と感じたのでしょうか。

 例えば、強い選手への嫉妬です。勝負の世界なので当たり前に存在する気持ちではあるんですが、そこに執着していると成長できないし、強い人を称えられるような人間にならないと上にはいけないと思ったんです。今は一緒に戦ってくれる選手を心から尊敬していますし、はっきり「尊敬している」と言えるようになったのも変化ですね。遠回りしましたが、自分を変えてここまで辿り着いたことが結果にも繋がっていると思います。

【自分が一番のライバル】

ーーグランプリは前夜祭イベント(12/19)もあって、気分も高まりますね。

 実は2年前のグランプリでは前夜祭を楽しみにしていたんですが、コロナの影響で中止になってしまって、すごく残念でした。私は成人式にも参加できなくて振袖を着られなかったので、今回の前夜祭で振袖を着られたのは嬉しかったですね(笑)。


前夜祭での振袖姿

 写真提供:公益財団法人JKA

ーー最後に意気込みをお願いします。

 グランプリは特別な舞台で、2年前はチャレンジャーの立場で出場させていただきましたが、もうチャレンジャーの年齢ではないですから、自分のやるべきことをしっかりやろうと思います。

 いい選手が揃っているので、誰か特定の選手をライバル視しているというよりも、自分が一番のライバルですね。どれだけ自分のレースができるか、どこで行くべきなのか、集中して最後まで自分を信じきれるかを大事にしています。弱気な気持ちを消化して、"自分ならできる"という強いメンタルでレースに臨みたいです。

【Profile】
坂口楓華(さかぐち・ふうか)
1997年10月1日生まれ、兵庫県出身。小学生時代から自転車競技に励み、高校時代には全日本ロードレースU17で優勝するなど、若くから実力を発揮する。高校卒業後に競輪学校(現日本競輪選手養成所)に入学し、19歳でデビュー。2021年、24歳でガールズグランプリに初出場した。2023年4月に通算200勝を達成し、5月には32連勝も記録。同年12月に開催されるガールズグランプリに2度目の出場を果たす。