Jリーグクラブの2023年の試合がすべて終了したが、まだシーズン中のクラブもある。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)…

 Jリーグクラブの2023年の試合がすべて終了したが、まだシーズン中のクラブもある。AFCチャンピオンズリーグACL)に参加しているチームである。日本からは3チームが決勝トーナメントに進んだが、忘れてはいけないのがライバル相手の苦戦だ。Jクラブの前に立ちはだかる「韓国」という壁について、サッカージャーナリスト後藤健生が考察する。

■技術では日本優位

 かつて、日本が韓国に弱かったのは韓国選手のパワー相手に劣勢に立たされることが原因だった(さらに遠い昔、1960年代~70年代はフィジカルも技術も戦術もあらゆる面で日本は韓国に劣っていた)。

 韓国人選手の方が日本人選手より筋肉量も多く、フルパワーで来られると日本の選手は太刀打ちできなかった。そして、韓国にはたいてい長身でパワーのある大型CFがいて、日本のDFを悩ませた。

 最近の代表戦を見る限り、韓国に対してフィジカル的にも互角に戦えているように思えるが、日本が韓国に敗れるとすれば、やはりこのパワーの差が一番の原因に考えられる。

 最近の韓国の代表チームはテクニカルなサッカーにこだわっている。

 だが、ポジショニングの緻密さやテクニックといった面では日本選手の方に一日の長があるのは間違いない。そこで、韓国の選手が自陣でパスをつなごうとするところを狙って日本チームがプレッシングをかけ、相手ボールを奪ってショートカウンターを発動する……。最近は、そんな試合展開で日本が勝利することが多いのだ。

 U-18代表同士の試合で日本が敗れたSBSカップでは、U-20関東大学選抜は韓国のパスのつなぎ方を研究して狙ってパスをカットに成功して4対1と圧勝した。

■日中韓の三すくみ現象

 日本サイドから見れば、韓国がパワーを生かしたサッカーをしてくるのが最も嫌なのだが、韓国代表はテクニカルな勝負を挑んできてくれる……。それが、最近の代表レベルで日本が優位に立っている理由の一つなのだ。

 その点で、クラブチームの方が、よりパワーや走力を生かした試合をしてくる。それが、日本が韓国のクラブに勝てない原因なのかもしれない。

 もう一つ、大きな不思議が、韓国のクラブが中国相手に取りこぼすという事実だ。

 代表レベルでは、中国代表は数十年にわたって(つまり、1970年代後半に中国がAFCに復帰して国際舞台に登場して以来)韓国に勝てない状態が続いていた。中国代表が初めて韓国に勝ったのは、初対戦から32年後の2010年のことだった。「恐韓症」と呼ばれる現象だ。

 その中国のクラブに対して、ACLでは韓国のクラブが取りこぼすのである。

 日本のクラブが韓国に勝てないこと以上の大きな「謎」というべきであろう。

 不勉強にして、僕は韓国のクラブと中国のクラブの試合を映像でチェックしていないから、本当に原因について何も思い当たることがない。

 ACLにおける日中韓3カ国の三すくみ状態は、謎の現象としか言いようがないのだ。

■日本のACLでの盛り返し

 かつて、JリーグクラブにとってACLは負担ばかりが大きい大会だった。

 Jリーグ開幕前にグループステージ初戦が行われることが多く、日本のクラブがコンディションを上げる前の序盤戦で取りこぼすことも多かった(韓国や中国のクラブより日本のクラブの方がコンディションを上げるのに時間をかける)。あるいは、韓国や中国のリーグがACLのために日程を調整してくれるのに対して、Jリーグクラブは過密日程で戦わなければならなかった。

 だが、最近はJリーグもACL出場クラブの試合を金曜日に行うなどの支援をし、財政的なサポートもするので、日本のクラブはACLで力を発揮できるようになってきた。

 その結果、最近の10年間を見れば、Jリーグ勢として浦和レッズ(2回)と鹿島アントラーズが優勝。ライバルの韓国や資金力豊富な中国やサウジアラビアのクラブをおさえて、過去10大会で最多の3回優勝しているのだ。

 しかし、ACLは今シーズンから中東クラブに有利な秋春制に変更になった。また、来シーズンからACLは大会形式が大きく変更されるが、準々決勝以降はサウジアラビアで集中開催が決まったため、さらに中東(とくにサウジアラビア)有利の大会となっていく。

■これからの戦いの重要性

 日本のクラブが、このような中東(サウジアラビア)主導の大会にどこまで真剣に付き合っていくべきかも再検討する必要がありそうだし、Jリーグが「そのために(?)」秋春制に移行するというのもおかしな論理展開だと思うが、出場する以上は中東(サウジアラビア)の台頭にストップをかけるためにも、ACLタイトルをサウジアラビアのクラブが独占することだけは阻止したいものだ。

 そういう意味で、春開催となった決勝でアルヒラルを破り、サウジアラビアで開催中のFIFAクラブ・ワールドカップでも勝ち残った浦和の奮闘は高く評価したい。

 いずれにしても、日本のクラブが本当の意味で「アジア最強」を豪語するためには、韓国のクラブにも勝ち越せるようにしなければならない。もし、韓国のクラブが中国や東南アジア相手に取りこぼししなくなれば、日本のクラブは簡単にグループステージを勝ち抜けなくなってしまうからだ。

 2023/24シーズンの大会にしても、日本の3クラブが首位通過でノックアウトステージに進出したといっても、ラウンド16で韓国クラブと対戦して敗れてしまったら元も子もないのだ。

 ノックアウトステージの組み合わせは12月28日にマレーシア・クアラルンプール近郊にあるAFC本部で行われる抽選によって決まる。

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