現在は、ウクライナや中東で戦争が勃発しており、国際的な緊張の高まりが世界の不安を煽っている。そんな時こそ、スポーツの力…
現在は、ウクライナや中東で戦争が勃発しており、国際的な緊張の高まりが世界の不安を煽っている。そんな時こそ、スポーツの力が見直されるべきである。蹴球放浪家・後藤健生には、「完全アウェイ」だったはずの中国での地元民とのふれあいの思い出がある。
■中国クラブを撃破
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージ最終戦で横浜F・マリノスが中国の山東泰山FCを3対0で破って、首位通過を決めました。
「2点差以上の勝利でノックアウトステージ進出。3点差以上なら首位通過」。つまり、複数得点が必要という試合。しかも、山東泰山は「大量失点しなければグループステージ突破」という状況なので、当然、守りを固めてきます。
そんな中で、攻め急ぐことなく、リスク管理を徹底しながら、しっかりとボールを動かして攻撃を続け、前半アディショナルタイムに先制ゴールを決め、後半にも2点を追加。首位通過の条件である「3点差」とした後の攻守のバランスも良く、素晴らしい内容の試合でした。
ケヴィン・マスカット監督は、この試合で退任しますが、新監督の下、ノックアウトステージでも健闘を期待したいところです。
■多忙な時期にACL取材
日産スタジアムでこの試合を観戦しながら、僕は18年前のことを思い出していました。
2005年5月。中国・済南にある山東省体育中心体育場で行われた山東魯能対横浜FM戦を見に行った時のことです。
2005年前半は、ジーコ監督の日本代表がドイツ・ワールドカップ・アジア最終予選突破を決め、6月にはドイツで行われたコンフェデレーションズ・カップに出場。コンフェデと同時にオランダでワールドユース選手権(現、U-20ワールドカップ)が開催され、大熊清監督のU-20日本代表が参加(本田圭佑、家長昭博、平山相太、西川周作など、今から思うと超豪華メンバー)。そんな多忙な時期になんでACLのグループステージを見に行ったのか……。
一つは、2004年のアジアカップでも済南に行ったのですが、試合を見てすぐ翌日には移動したので、市内見学ができなかったので、もう一度行ってみたかったのです(「蹴球放浪記」第22回「北京発済南行便欠航大災難」の巻)。
また、そのアジアカップで味わったアウェイの雰囲気をもう一度味わいたかったのもありました。
2004年アジアカップといえば、「反日ブーイング」。尖閣列島の領有権問題や小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題を巡って、日中関係が悪化した時期に大会が行われたので、試合前の国歌吹奏のたびに激しいブーイングが起こり、中国人観客は声をそろえて日本の対戦相手を応援。北京での決勝戦で日本が中国を破って2連覇を決めた後には、日本人サポーターが工人体育場に閉じ込められたり、日本公使が乗った大使館の車両が襲われたりしました。
そのアウェイ体験が非常に楽しかったわけです。
■厳戒態勢の街
アジアカップのグループリーグが行われた重慶は、それまで首都だった南京を日本軍に占領された中華民国国民党政府が重慶に移ったため、日本軍が無差別爆撃を行ったので反日感情が強い都市でした。同様に、済南は1928年に日本軍と国民党軍が衝突した「済南事件」の舞台。
そうした歴史を考えても、反日感情が強い場所ということになります。
そんなわけで、2005年の山東魯能と横浜FMの試合は厳戒態勢が敷かれました(「魯能」はメインスポンサーである電力会社。現在は企業名をはずして「山東泰山FC」と呼ばれています)。
ホテルも指定されました。いつもなら、“放浪家”としてはいつものように安宿を探して泊まりたかったのですが、仕方なく指定された山東大廈というホテルに泊まりました。