12月17日(日)、阪神競馬場で2歳馬によるGⅠ朝日杯フューチュリティS(芝1600m)が行なわれる。 今年はGⅡ東京…

 12月17日(日)、阪神競馬場で2歳馬によるGⅠ朝日杯フューチュリティS(芝1600m)が行なわれる。

 今年はGⅡ東京スポーツ杯2歳S(東京・芝1800m)のシュトラウス、GⅡデイリー杯2歳S(京都・芝1600m)のジャンタルマンタル、GⅢ小倉2歳S(小倉・芝1200m)のアスクワンタイム、GⅢ札幌2歳S(札幌・芝1800m)のセットアップと、さまざまな距離の重賞を勝った牡2歳馬が4頭揃った。比較が難しそうだが、それだけに予想の面白いレースと言える。

 そんなレースを血統的視点から占っていこう。今回、筆者が本命に推すのはナムラフッカー(牡2歳、栗東・村山明厩舎)だ。


紫菊賞を勝ったナムラフッカー

 Photo by Eiichi Yamane/AFLO

 今年9月、デビュー2戦目の未勝利戦(阪神・芝1800m)を単勝105.5倍の7番人気で逃げ切り、その後の紫菊賞(京都・芝1800m)で3着。10番人気で出走した前走のデイリー杯2歳Sでは、最後方追走から直線で大外を伸び、上がり3Fメンバー中最速の34秒5の末脚を伸ばして3着に入った。勝ったジャンタルマンタルが4角3番手から押し切る先行有利の展開の中、後方から0秒5差まで追い上げた内容は評価すべきもの。今回、展開が向けばジャンタルマンタルを逆転する可能性も高い。

 同馬を推すのはもちろん血統の良さが大きな理由だ。父スワーヴリチャードはGⅠ大阪杯(阪神・芝2000m)、GⅠジャパンC(東京・芝2400m)を勝った中長距離馬。だが、今年デビューした初年度産駒からは、GⅡ京王杯2歳S(東京・芝1400m)を2歳コースレコードで勝ち、GⅠ阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)で3着に入ったコラソンビートなど、マイル以下で強い競馬を見せる馬も少なくない。12月19日現在、今年の新種牡馬リーディングでは2位のブリックスアンドモルタルに約1億2000万円差をつけており、タイトル獲得が決定的な状態だ。

 ナムラフッカーの血統表を見ると、2歳GⅠ向きの血で構成されているのがよくわかる。スワーヴリチャードの父ハーツクライからはサリオス、ドウデュース(牡4歳)と2頭の朝日杯FS勝ち馬が出ていて、スワーヴリチャードと同じく母の父にアンブライドルズソングを持つダノンプラチナは朝日杯FS、コントレイルはGⅠホープフルSを勝利。さらに、ナムラフッカーの母の父ルーラーシップは昨年の勝ち馬ドルチェモア(牡3歳)の父で、祖母の父ティンバーカントリーは2001年の勝ち馬アドマイヤドンの父だ。

 ナムラフッカーの血統で興味深いのは配合で、曽祖母アイリッシュピースが父の父ハーツクライの全姉という血統から、ハーツクライ=アイリッシュピースの2×3という強烈なクロスを持っている。濃いめの牝馬クロスといえば、日本ではエルコンドルパサーなどが思い出されるが、なかなかGⅠ級が出ることはないので、普段からサラブレッドの配合に関する業務を行なっている筆者としては応援したい存在だ。

 もう1頭はジューンテイク(牡2歳、栗東・武英智厩舎)を推す。父はダービー馬キズナで、キズナは2歳GⅠ馬こそ出していないが、今年は2歳種牡馬リーディングでエピファネイアに続く2位に入っているように好調で、東京スポーツ杯2歳Sではシュバルツクーゲル(牡2歳)が2着、札幌2歳Sではギャンブルルーム(牡2歳)が3着に入っている。

 ジューンテイクの母の父はシンボリクリスエスで、この「父」と「母の父」の組み合わせは、GⅠエリザベス女王杯(阪神・芝2200m)を勝ったアカイイト、GⅠ安田記念(東京・芝1600m)を連覇し、GⅠヴィクトリアマイル(東京・芝1600m)も勝ったソングライン(牝5歳)と2頭のGⅠ馬が出たニックスだ。

 ジューンテイクの曽祖母ツィンクルブライドはGⅠ桜花賞2着馬(阪神・芝1600m)で、その産駒ペールギュントは2004年のこのレースで1番人気に推されながら3着に敗れている。一族の無念を晴らす意味でも頑張ってほしい。

 以上、今年の朝日杯FSは、スワーヴリチャード産駒ナムラフッカー、キズナ産駒ジューンテイクの2頭に期待する。