浦和時代の李忠成がともに切磋琢磨したFW陣と言えば、やはり興梠慎三(浦和)、武藤雄樹(柏)の2人を思い出す。 興梠が1…
浦和時代の李忠成がともに切磋琢磨したFW陣と言えば、やはり興梠慎三(浦和)、武藤雄樹(柏)の2人を思い出す。
興梠が1トップに入り、2シャドウに李と武藤が並ぶというミハイロビッチ監督でなければ考えられない配置が機能し、3人は2016年J1で揃って2ケタゴールを達成。レッズの3枚看板として君臨した。
「KLMトリオ」として名を馳せた彼らの爆発力と決定力は今も多くの人々の脳裏に焼き付いて離れないはずだ。
李忠成自身にとっても最高のライバルであり、最高の仲間だったに違いない。
「当時、レアル・マドリードの(ガレス・)ベイル、クリロナ(クリスティアーノ・ロナウド=アル・ナスル)、(カリム・)ベンゼマ(アル・イテハド)の3人が『BBC』と言われていて、『俺たちもなんか作ろうぜ』という話になったんです。
そこで、慎三のK、武藤のMと自分のLを合わせて『KLM』という形でSNSなどを通して発信したら、かなりの反響がありましたね」と李忠成はコンビの由来を改めて説明してくれた。
一般に「KLM」と言えば、「KLMオランダ航空」をイメージする人が多いはず。それは李忠成たちも分かっていたが、そのまま発信し続けた。
■「口で言うだけじゃサッカー選手はダメ」
ところが、ある日、クラブ側から待ったがかかったという。
「レッズはドイツとの縁が深く、ルフトハンザドイツ航空がスポンサーになっているんです。そういう事情のあるクラブが同業他者のKLMオランダ航空を気にしないわけがない。営業スタッフがそれを危惧して『KLMのコンビ名は使わないでくれ』と言ってきたんです(苦笑)。
事情はよく理解できましたけど、すでに定着しつつあったので、その時点でやめることもできなかった。結果的にそのままになり、人気も出たので、僕ら的にはよかったと思います」と本人は笑顔をのぞかせる。
KLMトリオのブレイクは他のアタッカー陣にも大きな刺激を与えた。同年の浦和には石原直樹、高木俊幸らがFW陣にいて、柏木陽介もシャドウでプレーする機会が多くなった。それだけに非常に競争は厳しかったというが、だからこそ、目に見える結果が必要だった。
李忠成は大いに奮起し、リーグ戦で活躍しただけでなく、ルヴァンカップ決勝・ガンバ大阪戦で途中出場ながら値千金のヘディング同点弾をゲット。PK戦でも4番手のキッカーを務め、見事に成功。チームに貴重なタイトルをもたらすとともに、大会MVPを受賞。「浦和の男」として名実ともに認められたのである。
「あの試合では『俺が点を取ってくるからパスを出せ』と要求し続けた結果、同点ゴールを叩き出すことができ、延長・PKまで戦い抜くことができました。やっぱり口で言うだけじゃサッカー選手はダメ。結果を出して初めて認められるという自覚を持ってピッチに立っていました。
『今日は俺の日にするんだ』っていう気持ちを前面に押し出し、その通りにできたのは本当に嬉しかった。僕にとってのレッズ時代のいい思い出の1つですね」
KLMトリオ結成、そして大きな成果を得たこの年を彼は生涯忘れることはないだろう。
(取材・文/元川悦子)