「美祢秋吉台カルスト国際ロードレース」が11月5日、前日の「山口ながとクリテリウム」に引き続き、開催された。今年はUCI(世界自転車競技連合)認定レースという位置付けになっている。※山口ながとクリテリウムのレポートはこちらこれまでは、国内リ…

「美祢秋吉台カルスト国際ロードレース」が11月5日、前日の「山口ながとクリテリウム」に引き続き、開催された。今年はUCI(世界自転車競技連合)認定レースという位置付けになっている。

※山口ながとクリテリウムのレポートはこちら

これまでは、国内リーグ内の1戦という形であったが、今年は、国際レースに昇格しての初回となる。コースは日本最大級のカルスト台地・秋吉台を貫くカルストロードに設定。選手は印象深い絶景の中を走ることになる。



絶景の中を抜けて走る

今年のコースは1周31.9km。山口県美祢市の秋吉台国定公園を通る「カルストロード」をメインに使用する、これまでの開催で使用されたコースより、集団のすれ違い時の安全性を重視し、南側が延長された。ここを4周回走る127.6kmで競われる。





コースにはアップダウンが多く含まれる(画像は大会公式テクニカルガイドより)

名物は、ゴール前の「YMFGカルストベルグ」と名付けられた激坂だ。前半は、15%前後の急勾配が続く。ヨーロッパの有名レースで名を轟かせる坂に似ていることから、坂の意味である「ベルグ」と呼ばれている。コース内にはアップダウンが連続して現れ、選手を苦しめる。例年、完走率が低いことでも知られている。

レース当日は快晴に恵まれ、気温も23度と暖かく、半袖の選手がスタートラインに並んだ。号砲とともに、いっせいにスタート。



地元の子どもたちの太鼓が会場を盛り上げる



スタートラインに並ぶ

カルストロードに入ると、リアルスタートが切られ、選手は、ただちに戦闘態勢に入った。アタックの応酬が続き、カルスト台地の往路を終えた直後の周回路には、16名の集団が形成。この中には、逃げのスペシャリスト阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)やジャパンカップでも大健闘した岡本隼や石上優大(愛三工業レーシングチーム)など、力のある選手を多く含み、国内の多くの主要チームはメンバーを送り込んでいた。集団は、1分半近くまでリードを広げた。



各チームの力ある選手を多く含む16名の先頭集団が形成された

逃げ切りの可能性を秘めた集団の先行に、危機感を感じたメイン集団は追走体制に入る。ビクトワール広島、JCL チーム右京らが牽引し、タイム差を縮めにかかります。
1周目のカルストベルグの登りで差を縮め、山岳賞争いの動きで遅れた先行メンバーを吸収。だが、ここから再び差が開き始めた。



増田成幸(JCLチーム右京)が先頭を引き、追走

2周目の山岳賞は山本元喜(キナンレーシングチーム)がトップで通過。この動きで、集団はさらに小さくなり、6名までに絞り込まれた。ここに3名を残した愛三工業レーシングチームが有利な状況に。ここで約1分のタイム差がついていた。2周目の復路で、追走集団が一気に差を詰め、カルストベルグの坂の入り口では30秒まで迫った。



山本元喜(キナンレーシングチーム)と石上優大(愛三工業レーシングチーム)が先行、先頭集団がバラける

先頭グループからは2回目の山岳賞争いが生まれ、ここに追走の7名が合流。山岳賞は後方から追いついたトマ・ルパ(キナンレーシングチーム)が獲得した。先頭グループはメンバーが入れ替わり、最終的には7名の新たな集団が形成された。



新たに7名の先頭集団が形成された

レースは最終周回へ。



絞り込まれたメンバーで最終周回に突入。秋の秋吉台を駆け抜ける

カルスト台地の往路を終えて平坦の周回路に入ると、6名が抜け出した。メンバーは、チーム復帰後は安定した成績を上げているベンジャミ・プラデス、ツアー・オブ・ジャパンを連覇しているネイサン・アール(JCL チーム右京)、バランスの取れた実力者トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)トラックレースでも活躍する渡邊翔太郎、序盤から存在感
を発揮している注目の若手・石上(共に愛三工業レーシングチーム)、日本移籍前はワールドチームに所属していたベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)、総合力の高い谷順成(宇都宮ブリッツェン)。各チームのエース級の選手が入り、追走の必要性がなくなったため、後続は一気にペースダウン。差は、たちまち1分まで開いた。



メンバーは6名にさらに絞り込まれた

互いを探り合いながら、フィニッシュに向かい、ついにカルストベルグの坂へ突入した。



ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)がアタックし、集団を揺さぶる

ここで最初に仕掛けたのは、若手の石上だった。この動きで集団はバラバラになり、渡邊と谷が脱落。続いては登坂力に長けたダイボールがペースを上げる。序盤から積極的に動いてきた石上が、ここに食らいつけず、先頭は3名に絞られた。



積極的に仕掛ける石上

最後の下りでプラデスが仕掛け、リードを広げながら登り返しへ。
ラスト1㎞で、再び3名が合流し、ダイボールがアタック。だが、2名を振り切ることはできず、ラスト300mの激坂区間に突入した。
プラデスが再度飛び出し、ダイボール選手を振り切って、フィニッシュラインへ。リーグ戦として開催された前年に引き続き、勝利をおさめ、UCIレースの初代王者となった。



ベンジャミ・プラデス(JCLチーム右京)が先行、同コースを使ったレースの連覇を成し遂げた

3位には、ルバが入っている。



優勝したプラデス、2位のダイボール、3位のルバの表彰

プラデスは、序盤、チームの作戦がうまくいかなかったことに触れながら「終盤は自分の強みが活きる展開となり、最後もタイミングをうまく読んだスピードアップで勝つことができた」と振り返った。レースを連覇できた喜びを笑顔で語った。
JCLランキングにポイントが組み込まれるレースが全て終了し、今シーズンのポイントランキングが確定した。最多ポイントを獲得したのはトマ・ルバとなり、JCLのオフィシャルタイムキーパーであるCVSTOSから、副賞である時計が贈られた。

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【結果】
美祢秋吉台カルスト国際ロードレース(122.8km)

1位/ベンジャミ・プラデス(JCLチーム右京)3時間2分28秒
2位/ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)+1秒
3位/トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)+7秒
4位/ネイサン・アール(JCLチーム右京)+15秒
5位/谷順成(宇都宮ブリッツェン)+23秒

【中間スプリント賞】
岡本隼(愛三工業レーシングチーム)
山本元喜(キナンレーシングチーム)

【山岳賞】
山本元喜(キナンレーシングチーム)
トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)

画像提供:ジャパンサイクルリーグ(JCL)