卓球のパリ五輪第6回選考会「2023 全農CUP 大阪大会」が25日、26日、大阪府のAsueアリーナ大阪(大阪市中央体育館)で行われた。男子で優勝を果たし、存在感を示したのが戸上隼輔である。◆張本美和、“みまひな撃破”で掴んだ初優勝 光っ…
卓球のパリ五輪第6回選考会「2023 全農CUP 大阪大会」が25日、26日、大阪府のAsueアリーナ大阪(大阪市中央体育館)で行われた。男子で優勝を果たし、存在感を示したのが戸上隼輔である。
◆張本美和、“みまひな撃破”で掴んだ初優勝 光った戦術眼、逆転パリ五輪も期待の15歳が示した可能性【全農CUP大阪】
■注目された2番手争い
来年の全日本選手権と並び、パリ五輪シングルス選考レースにおいて重要な位置づけを占めた今大会。男子は張本智和が各大会で上位に君臨し、選考レースを独走。2位以内を確保しての出場枠はほぼ手中に収めていたなか、次に誰がつけるかが焦点となっていた。
また、来年のパリ五輪を控えるにあたり、男子は張本一人に依存しない、2番手以降の存在がひとつのカギを握った。東京五輪をもって長年男子を支えた水谷隼が引退したなか、エースのバトンを引き継いだ張本は、世界ランキング日本勢最高位をキープし続けており、大黒柱であることには変わりない。そんな張本の次に誰がつけるかというテーマがパリ五輪選考の動向とともに注目を集めた。
大会前まで選考ランキング3位の田中佑汰、同4位の篠塚大登というライバルがいたなか、主役を勝ち取ったのが同2位の戸上隼輔。国際大会でも調子を上げ、世界ランキングで自身初の20位台まで順位を上げていた戸上は張本と並ぶ大会優勝の筆頭候補。「この大会が始まる前に待っているという風に言われた。決勝でやりたかった」と張本とのやり取りを明かした戸上は、順調に26日の決勝の舞台までたどり着いた。
■ライバルとの決勝でも強さ発揮
そして迎えた張本との決勝。エッジボールに助けられる場面もあり、「本当にラッキーが多かった。自分の中では申し訳ない気持ちもある」と語った戸上だが、これまでの選考会でも張本相手には強さを発揮してきた。第1ゲームこそ張本に3-11と主導権を握られたが、第2ゲーム以降は相性と大会開幕までの勢い、そして一時期の体調不良から復調したコンディションの良さを感じさせる切れ味鋭いプレーを随所に披露する。
持ち味とも呼べるバックストレートを主体に張本から2ゲームを連取し逆転した戸上。「技術的には負けてなかった」と語ったように、第4ゲームでも6ポイントを先取するなど圧倒した。しかし、張本も意地を見せ猛追、10-10のデュースにもつれ込む。それでも重要な局面で踏ん張りを見せた戸上はこのゲームも13-11で取り優勝に王手をかける。その勢いを持続させたまま第5ゲーム目も奪取。最後は喜びを爆発させた。
張本との対戦に対し、「バック対バックで先手を取られる機会が多かった」と課題も口にした戸上だが、優勝に対しては「ほっとしている」と試合後は安堵の表情。そして、「パリ五輪に出たいという気持ちがあるからこそ不安で、いつ転んでもおかしくない選考会の中で、自分のプレーを出し切れるか不安だった」と心境を明かしつつも、「精神的にも強くなっている」と重要な局面での経験を重ねてきたなかで身につけてきたメンタル面の成長についても自己評価した。
■全日本3連覇にも期待
戸上は27日に発表された最新のパリ五輪選考ランキングで100ポイントを加算し、509点までポイントを伸ばした。準優勝で90点を加えて682.5点となった首位の張本とともに、来年のパリ五輪行きに前進。3位以下に中国トップ3選手勝利や、Tリーグでのボーナスポイントの可能性を残すが、張本、戸上が来年の五輪シングルスの出場枠を掴むことはほぼ確実になった。
選考ランキング2位を死守してきたプレッシャーについて戸上は、「守り切るプレッシャーがあった」と正直な想いを吐露。当確ランプが灯ったことに対しては、「3位との差はあったけれど確定するかしないかで気持ちの不安はあった。全日本(選手権)で仮に負けてしまったとして、ポイントをひっくり返される可能性もあった」と語り、来年の全日本選手権に向けてもポイントに左右されることなく挑めると述べた。
パリ五輪出場を視界に捉えた戸上は、「ここからがスタートライン。世界で活躍できる選手になりたい」とさらなるレベルアップにも意欲を見せる。最高位を更新しての世界ランキングの上昇や中国勢撃破、また3連覇がかかる全日本選手権などで活躍が期待され、ライバルの張本とともに日本男子を背負っていく存在として期待がかかる。大阪の地で結果を残し夢舞台へ近づいた22歳の進化が止まらない。
◆張本美和、“みまひな撃破”で掴んだ初優勝 光った戦術眼、逆転パリ五輪も期待の15歳が示した可能性【全農CUP大阪】
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取材・文●井本佳孝(SPREAD編集部)