厳選! 2歳馬情報局(2017年版)第10回:リシュブール 長い競馬の歴史の中で、日本のホースマンたちが育んできた”至宝”の血統がいくつかある。そのひとつが、エアグルーヴからなる一族だろう。 母は、1983年のG…

厳選! 2歳馬情報局(2017年版)
第10回:リシュブール

 長い競馬の歴史の中で、日本のホースマンたちが育んできた”至宝”の血統がいくつかある。そのひとつが、エアグルーヴからなる一族だろう。

 母は、1983年のGIオークス(東京・芝2400m)を制したダイナカール。その女王から生まれたエアグルーヴは、母に勝る強さを見せた。

 母娘制覇となった1996年のオークスでは他馬を寄せつけない”横綱相撲”で快勝し、翌年には牡馬一線級を相手にGI天皇賞・秋(東京・芝2000m)を制覇。施行条件が芝2000mとなってからは、牝馬初の快挙だった。

 当時の牝馬としては珍しく、牡馬に混じって古馬のGI王道路線を歩んだエアグルーヴ。ハイレベルな戦いの中でも常に上位争いを繰り広げ、その堂々たる姿はまさしく「女傑」と呼ぶに相応しかった。その結果、1997年には年度代表馬にも選出された。

 引退後も、母ダイナカールと同様、自らの才能を子どもたちに伝えた。2000年に生んだアドマイヤグルーヴは、2003年、2004年とGIエリザベス女王杯(京都・芝2200m)を連覇。さらに、そのアドマイヤグルーヴの子で、エアグルーヴの孫となるドゥラメンテは、2015年に牡馬クラシックの二冠(皐月賞、日本ダービー)を制した。

 また、2007年に生んだルーラーシップは、海外のGIクイーンエリザベス2世C(香港・芝2000m)を戴冠。国内のGI戦線でも、勝利こそ得られなかったが、何度となく上位入線を果たして多くのファンから愛された。

 このように、エアグルーヴの血統は脈々と受け継がれており、日本競馬界を代表するものとなっている。

 そんななか、その血を受け継ぐ2歳馬がまもなくデビューを迎える。リシュブール(牡2歳/父キングカメハメハ)である。



「女傑」エアグルーヴの孫リシュブール

 母は、エアグルーヴの子であるラストグルーヴ。現役時代はたった1戦しかしなかったが、そのレースを見事に勝利し、素質の片鱗は示していた。そして引退後、初めて生んだのがリシュブールだ。

 気になるのは、この馬が秘めている素質がどれほどのものかということ。やはり一族の持つ才能を受け継いでいるのだろうか。育成を担当したノーザンファーム空港牧場の大木誠司氏は、春の取材でこんなコメントを残している。

「まだ成長途上の段階ではありますが、十分にバネがあって、柔らかさのある走りをしますね。体はどちらかというとこじんまりしたタイプですが、とにかくいいバネを持っています。走り方は、ピッチ走法かなと思います」

 さらに、性格面などについてはどんな様子なのだろうか。大木氏が続ける。

「気性は若干キツいところもありましたが、時期が経つにつれてだいぶ我慢できるようになってきました。距離適性については、2000mくらいがベストかなと感じています」

 現在、リシュブールは所属する藤原英昭厩舎(栗東トレセン/滋賀県)に移動し、すでにデビューへの調教を始めている。順調なら、8月13日の2歳新馬(札幌・芝1800m)でキャリアをスタートさせる予定だ。

 日本屈指の血筋からなる期待馬は、初陣からその才能をいかんなく発揮するのだろうか。まもなく訪れる、その瞬間が楽しみでならない。