蹴球放浪家・後藤健生は今月、U-17ワールドカップを取材するためインドネシアを訪れた。海を越え、国境を越えていく取材旅…

 蹴球放浪家・後藤健生は今月、U-17ワールドカップを取材するためインドネシアを訪れた。海を越え、国境を越えていく取材旅行だが、今回はまるで時間も飛び越えたようだった。ジャカルタで、懐かしい東京の風景に出会ったのだ。

日本代表を苦しめた「移動」

 U-17ワールドカップに出場していた日本代表は、強豪ひしめくグループDをなんとか3位通過してラウンド16進出に漕ぎつきました。ところが、ラウンド16のスペイン戦までは中2日の強行日程。しかも、長距離(長時間?)移動付きでした。

 1位通過だったらグループリーグと同じバンドンのシジャラク・ハルパト・スタジアムで中3日でプレーすることができたはずでしたし、2位通過の場合はジャカルタに移動しなければならなかったのですが、中4日の間隔になります。

 ところが、3位通過になってしまったので試合間隔は中2日。しかも、バンドンからスラカルタまで移動しなければならないのです。

 バンドンからスラカルタまでは直線距離なら400キロほど。日本だったら、新幹線で2時間もかからない距離です。

 しかし、バンドンからスラカルタまではインドネシア鉄道(KAI=JRのようなもの)の列車で7時間以上。飛行機を利用したくても、バンドンには小さな空港しかありません。

■物足りない高速鉄道

 インドネシアでは10月に「東南アジア初」という中国が建設した高速鉄道が開業したばかりです。しかし、開通したのはジャカルタからバンドンまでのわずか150キロの区間だけ。

 バンドンは標高700メートルの地だけに涼しく、ジャカルタ市民の人気リゾート地なので高速鉄道はとくに週末は満員のようです(政府が赤字を背負ってくれているので、料金も在来線とあまり変わりません)。

 しかし、バンドンから先への延伸は、まだ計画段階にも至っていないのです。

 日本チームはセネガル戦翌日に直接スラカルタまで移動できるようにFIFAと交渉したようですが、結局、翌日は午後にバスでジャカルタまで移動しただけで、ジャカルタで1泊。そして、スペイン戦前日の午後に飛行機でスラカルタに移動。到着後すぐに空港から直接練習会場に移動するという強行日程を強いられることになりました。

「2日がかりの移動だよ」と森山佳郎監督。

 スペイン戦の後半に足が止まって完敗を喫したのも無理はありませんよね。

■使えない電車

 とにかく、インドネシアでは交通インフラの整備が遅れています。バンドン市内からスタジアムまでの移動の不便さについては先週の「蹴球放浪記」でご紹介したばかりです。

 ジャカルタでの試合会場は昨年完成したばかりの「ジャカルタ・インターナショナル・スタジアム」でした。8万2000人収容の近代的なサッカー専用スタジアムです(しかし、なぜか代表チームの試合はスナヤンの旧スタジアムが使われています)。

 地図アプリで見たら、インターナショナル・スタジアム最寄りにコミューターライン(通勤電車)タンジュンプリオク線の「アンチョル」という駅があるようです。

 駅からスタジアムまでちょっと距離がありそうですが、浦和美園駅から埼玉スタジアム程度ですから歩くつもりで行ってみました。しかし、目の前の幹線道路には歩道もなく、しかも道路工事をやっていてとても歩けるような状態ではないのです。駅前にはバイクタクシーが群がって客引きをしていました。仕方なく、僕もバイクタクシーでスタジアムに向かいました。

 しかも、タンジュンプリオク線は試合が終わる21時頃にはもう電車が走っていないのです。

 こいつぁ使えない……。結局、試合の後はタクシーを利用するしかありませんでした。

■日本の技術がアシスト

 しかし、タンジュンプリオク線以外は夜中まで走っていますし、ジャカルタのコミューターラインはなかなか便利な交通機関でした。KAIの子会社、KCIが運営しています。

 昔は市内の電車は旧式化して、ドアも閉まらない状態で屋根の上にまで人を乗せて走っていたそうですが、近代化したのは日本から中古車両と運行システムが輸入されたことによるものでした。

 JR東日本や東京メトロ、都営地下鉄、東急電鉄の車両が引退後にジャカルタにやってきて、今でも働いているのです。ブエノスアイレスの地下鉄に丸の内線の電車が走っているのは有名な話ですが、ジャカルタのコミューターラインの電車はすべて日本の中古車体です。

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