WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 今季のメジャー3戦目となる全英オープン(7月20日~23日/イングランド、ロイヤルバークデールGC)は、ジョーダン・スピース(24歳/アメリカ)の勝利で幕を閉じた。キャリア・グラ…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 今季のメジャー3戦目となる全英オープン(7月20日~23日/イングランド、ロイヤルバークデールGC)は、ジョーダン・スピース(24歳/アメリカ)の勝利で幕を閉じた。



キャリア・グランドスラムに王手をかけたジョーダン・スピース

 スピースのメジャー勝利は、2015年のマスターズ、全米オープンに続いて3勝目。23歳11カ月26日でのメジャー通算3勝は、タイガー・ウッズ(アメリカ)よりも早く、ジャック・ニクラウス(アメリカ)と並ぶ若さで達成した大記録となる。

 ここ最近のメジャーは、7大会連続で優勝者が「メジャー初制覇」という状況が続いていた。スピースはこの”記録”にもストップをかけて、4大メジャー全制覇となる”キャリア・グランドスラム”達成まであとひとつとなった。残すタイトルは、全米プロ選手権である。

 その全米プロは2週間後、8月10日から13日までアメリカ・ノースカロライナ州のクウェイルホロークラブで開催される。もしスピースが今年の大会を制することになれば、2000年の全英オープンでキャリア・グランドスラムを達成したタイガー・ウッズ(24歳206日)の記録を塗り替えて、史上最年少での快挙達成となる。

 ところで、キャリア・グランドスラムにあとひとつ、”王手”までかけながら記録達成を果たせなかった選手も結構いる。古くは、メジャー通算11勝も挙げながらマスターズだけ勝てなかったウォルター・ヘーゲン(アメリカ)。ただ、彼の場合、全盛期を過ぎたあとにマスターズが創設されたため、仕方がないとも言える。

 その他、全英オープンを勝てなかったバイロン・ネルソン(アメリカ)、全米オープンでは優勝できなかったサム・スニード(アメリカ)、そしてメジャー通算7勝の”キング”ことアーノルド・パーマー(アメリカ)。パーマーは、2位は3回ありながらも、全米プロだけは勝つことができなかった。

 さらに、全米オープン、全英オープン、全米プロとそれぞれ2勝していながら、マスターズでは一度も勝利を得られなかったリー・トレビノ(アメリカ)、全英オープンは5勝もしながら(メジャー通算8勝)、全米プロでは栄冠を手にすることができなかったトム・ワトソン(アメリカ)らもそう。これだけそうそうたる面々、偉大なるレジェンドたちでも果たせなかったのだから、キャリア・グランドスラム達成がどれだけ難しいことなのか、改めてわかるというものだ。

 そして現在、キャリア・グランドスラム達成目前のツアープレーヤーは、スピースを含めて、フィル・ミケルソン(47歳/アメリカ)、ロリー・マキロイ(28歳/北アイルランド)と3人いる。

 47歳となったミケルソンは、1992年のプロ転向以来、実力がありながらメジャーでは勝てず、そもそも「無冠の帝王」として有名だった。それが、2004年のマスターズで初のメジャー優勝を飾って汚名を返上すると、2005年には全米プロを制覇。以降、2006年、2010年にもマスターズを制したあと、2013年、43歳で全英オープンを勝ってキャリア・グランドスラムに王手をかけた。

 しかし、全米オープンだけは縁がない。故ペイン・スチュアート(アメリカ)に惜しくも敗れた1999年大会から、2位はなんと6度も経験しているが、頂点に立つことはできていない。今年の全米オープンは、娘の高校の卒業式に出席するために欠場したミケルソン。彼に残された時間、トップレベルで活躍できる期間は決して長くはないだろう。なんとかこの数年の間に、母国のナショナルオープンを制してキャリア・グランドスラムを成し遂げてほしいものだが……。

 ミケルソンに比べれば、28歳のマキロイにはまだ十分な時間がある。初のメジャー制覇は2011年の全米オープン。翌2012年に全米プロ、2014年に全英オープンを制して(同年、全米プロも優勝)、キャリア・グランドスラム達成にリーチをかけた。

 だが、初のメジャー制覇を飾った全米オープンの2カ月前、初日から首位を快走していたマスターズでは最終日に大失速。歴史的な敗北を喫してから、同大会では上位争いに加わることはあっても、”グリーンジャケット”を手にするまでには至っていない。

 ゆえに、マキロイは昨季(2015-2016シーズン)、スピースを抑えてフェデックスカップを制した際、自らと同じように大崩れしてマスターズの連覇を逃したスピースについて聞かれ、こう語っている。

「ぜんぜん同情なんてしていないよ。なぜなら、彼はすでにグリーンジャケットを一着持っているんだからね」

 世界ランキング4位のマキロイと、同2位に浮上したスピース。どちらが先にキャリア・グランドスラムを達成するのか、注目される。

 かつて、同一年に4大大会のすべてを制したことがあるのは、球聖ボビー・ジョーンズ(アメリカ)のみ。ただし、当時の4大大会と言えば、全米アマ、全米オープン、全英オープン、全英アマだった。その後、このジョーンズがマスターズを創設。現在の4大メジャーが確立された。

 この4大メジャーのすべてに勝利してキャリア・グランドスラムを達成しているのは、ジーン・サラゼン(アメリカ)、ベン・ホーガン(アメリカ)、ゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)、ニクラウス、ウッズの5人。はたして、6人目となるのは、スピースなのか。

「子どもの頃から、メジャー大会で世界のトップ選手と戦うことを夢見てきた。僕にとって、キャリア・グランドスラムはゴルフ人生のゴールだ。そのチャンスがこんなに早く訪れるとは思わなかった。ただその分、大きな注目を集めることになるだろうし、自分への期待も大きくなるから、それを達成することはかなり難しくなる。今は、全英オープンでの優勝を存分に味わって、それから次なる目標に向かっていきたい」

 キャリア・グランドスラムについてそう語ったスピース。史上最年少記録もかかった全米プロ開幕まで、あと2週間である。