ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」――秋のGIシリーズはここまで5戦を終えて、川田将雅騎手が2勝、クリストフ・ルメール騎手が3勝と、ふたりの騎手が勝利を独占。そして今週のGIマイルCS(11月19日/京都・芝1600m)、来…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――秋のGIシリーズはここまで5戦を終えて、川田将雅騎手が2勝、クリストフ・ルメール騎手が3勝と、ふたりの騎手が勝利を独占。そして今週のGIマイルCS(11月19日/京都・芝1600m)、来週のGIジャパンC(11月26日/東京・芝2400m)も、おそらくこのふたりが上位人気を争って、勝利に最も近い存在にありそうです。

大西直宏(以下、大西)全国リーディング争いにおいても、彼らが熾烈なトップ争いを繰り広げていますが、やはりふたりの騎乗を見ていても、安定した成績を残していることがよくわかります。どのレースを見ても、勝ち負けできるポジションを巧みに確保していますし、ロスのない騎乗でまったくそつがありません。

 短期免許を取得して来日している外国人騎手も高い技量を持っていますが、ルメール騎手と川田騎手には乗り慣れた"地の利"を生かせる強みがあります。今の彼らの安定感を見ていると、残りのGIでもさらに勝ち星を積み重ねる公算が高いと思います。

――マイルCSでは、川田騎手がセリフォス(牡4歳)、ルメール騎手がシュネルマイスター(牡5歳)に騎乗。春のマイルGI安田記念(6月4日/東京・芝1600m)でも、前者が2着、後者が3着という結果を残しています。

大西 春のマイル王に輝いたソングライン(牝5歳)が不在となれば、ここはこの2頭が頂点を争う双璧の存在。セリフォスは昨年、3歳でこのレースを制していますし、シュネルマイスターも一昨年のレースで"絶対女王"グランアレグリアに僅差の2着にきていますからね。

 ここに割って入る可能性があるとすれば、勢いのある3歳マイル王か、GI天皇賞・秋から転戦してくる馬か、ということになりますが、今年はそれに該当するような馬がいません。したがって、この2頭がレースの中心になっていくと踏んでいます。

 両馬ともに古馬になってからのGI勝ちがなく、引退後の種牡馬としての価値を高めるためにも、このレースは譲れない一戦と位置づけているのではないでしょうか。

――外国人騎手への鞍上強化で臨む馬も気になります。ソウルラッシュ(牡5歳)にはジョアン・モレイラ騎手、ナミュール(牝4歳)にはライアン・ムーア騎手が騎乗します。

大西 短期免許の外国人騎手への乗り替えは、期待の表れと捉えていいでしょう。そういう意味でも、これらも注目すべき存在だと思います。

 モレイラ騎手がGII富士S(10月21日/東京・芝1600m)で手綱をとって勝利に導いたナミュールではなく、ソウルラッシュに騎乗するのは、おそらく先約があってのことかと思います。

 いずれにしても、この2頭は前哨戦でともに1分31秒台の高速決着を制覇。いい流れのまま本番を迎えるので、上位争いに加わってくるような気がします。

――ところで、5戦を終えたこの秋のGIですが、3連単の平均配当は9900円。かなり堅いレースが続いています。ここまでの話を伺う限り、マイルCSも平穏な決着になりそうですが、波乱を期待するファンも多いと思います。大西さんが注目している穴候補はいますか。

大西 展開面からのアプローチでいくと、僕はレッドモンレーヴ(牡4歳)に可能性を感じています。



マイルCSでの一発が期待されるレッドモンレーヴ。photo by Yasuo Ito/AFLO

 今回のメンバーを見渡し時、真っ先に「先行勢が手薄だな」と感じました。逃げるのはおそらくセルバーグ(牡4歳)だと思いますが、これとてビュンビュン飛ばすようなタイプではありません。

 各ジョッキーも同じようなイメージを持つはずなので、そうなると先行タイプの馬に騎乗するジョッキーは「前で立ち回って、なだれ込みを狙おう」という意識が働き、前がかりになりやすくなります。

 今回で言うと、エエヤン(牡3歳)、エルトンバローズ(牡3歳)、バスラットレオン(牡5歳)、ビーアストニッシド(牡4歳)あたりがそろって、積極的な先行策を見せてきそうです。

 その結果、テンの入りはハイペースにならなくとも、全体のラップが均一で中盤も緩まない展開になれば、流れは差し馬に向くことがあります。そうなった場合、後方待機に構えるレッドモンレーヴの決め手が炸裂するシーンがあってもおかしくありません。

 イメージは、後方待機からの大外一気がハマッた昨年のセリフォスのような騎乗です。序盤で脚をタメるだけタメられるのは、人気がないからこそできるもので、レッドモンレーヴはまさにその立場にあります。

 今の京都競馬場は、内側の馬場が見た目にも荒れてきています。しかも、開催前にはひと雨ありました。馬場が乾きづらい状況のなか、上がりがかかる形になれば、なおのこと外差しが有利に働くはずです。

 そこで今回は、末脚爆発が期待できるレッドモンレーヴを「ヒモ穴馬」に指名したいと思います。