秋の女王決定戦となるGIエリザベス女王杯(京都・芝2200m)が11月12日に行なわれる。 今年は本来の舞台である京都競馬場での4年ぶりの開催。その4年前(2019年)に勝利を飾ったラッキーライラックは、阪神競馬場に舞台を移した翌年(20…

 秋の女王決定戦となるGIエリザベス女王杯(京都・芝2200m)が11月12日に行なわれる。

 今年は本来の舞台である京都競馬場での4年ぶりの開催。その4年前(2019年)に勝利を飾ったラッキーライラックは、阪神競馬場に舞台を移した翌年(2020年)のレースも制して連覇を達成した。その結果は、今回連覇に挑むジェラルディーナ(牝5歳)にとって、いいデータのように思える。

 だが、そのジェラルディーナに疑問の目を向けるトラックマンがいる。10月29日の京都開催において、日刊スポーツの競馬コンテンツ『リアルタイム予想』で12レース中、8レースを的中させた日刊スポーツの下村琴葉記者だ。

「ジェラルディーナは、前走のGIIオールカマー(9月24日/中山・芝2200m)で6着。やや出遅れて流れに乗れず、中団後方から追走する形に。直線に入って大外から脚を伸ばしてきましたが、展開が向かなかったこともあり、いつものスピードは見られませんでした。

 ここ最近はズブさを見せており、行きっぷりが今ひとつで......。今回も流れに乗れるかどうかがカギになりそうです」

 また、過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は1勝、2着2回、3着2回と信頼度はそこまで高くない。翻(ひるがえ)って、6番人気の伏兵が9頭も連対しており、波乱含みの一戦と言える。

 そうした状況にあって、下村記者は他の有力馬についても不安視する。

「今年の中心メンバーと見られるのは、先にも触れたジェラルディーナに、3歳馬のブレイディヴェーグ(牝3歳)とハーパー(牝3歳)。ジェラルディーナについては先述したとおり、連覇へ向けての不安が拭えません。

 ハーパーは、GI桜花賞(4月9日/阪神・芝1600m)4着、GIオークス(5月21日/東京・芝2400m)2着、GI秋華賞(10月15日/京都・芝2000m)3着。大舞台でも安定した成績を残していて、管理する友道康夫調教師も『(今回は)1回使って上積みがあると思う。動きもよくなっているし、十分チャンスはあると思うよ』と好感触を示しています。

 体調、実績とも申し分なく、長くいい脚を使うタイプで、京都の外回りコースというのもプラスになるでしょう。ですが、前走のように、瞬発力勝負になると分が悪く、今回も展開的にどうか? という懸念があります」

 ブレイディヴェーグにしても、今回が初めてのGI戦。古馬一線級との対戦で、全幅の信頼は置きにくい。

 そこで、下村記者が注目するのは"キレ味"を秘めた馬だ。

「過去10年のレースを見ると、上がり最速の馬が6勝。馬券に絡まなかったのは2015年だけ、と末脚自慢の馬が実績を残しています。それに、今回はこれといった逃げ馬が不在。スローペースからの、直線で"ヨーイドン"の競馬になるのではないかと推測します」

 そうして、下村記者は2頭の穴馬候補をピックアップした。

「まず、サリエラ(牝4歳)の一発が怖いですね。

 前走のGIII新潟記念(9月3日/新潟・芝2000m)は、1番人気に推されながら7着に敗れましたが、1週前に挫跖(ざせき/蹄底におきる炎症)があったこと、厳しい残暑による夏負けがあったこと、と敗因は明確です。



エリザベス女王杯での一発が期待されるサリエラ。photo by Sankei Visual

 それに比べて、今回の調整は順調そのもの。馬体重が420kg~430kgほどで輸送減りしやすいこともあって、早めに栗東に入って滞在での調整を行なっているのも好材料です。

 1週前追い切りも、同じくエリザベス女王杯に出走するククナ(牝5歳)と併せ馬を行なって、体をいっぱいに動かしてスピード感あふれる走りを披露。本調子ではなかった前走でも33秒台の上がりをマークして伸びてきましたから、順調な今回は前走以上に弾けていいはずです」

 下村記者が推すもう1頭は"遅れてきた良血馬"だ。

「ディヴィーナ(牝5歳)です。前走のGII府中牝馬S(1着。10月14日/東京・芝1800m)ではかかり気味にハナに立ちましたが、ラクに逃げられたこともあって、そのまま押しきりました。

 もともと気難しいところがあり、返し馬で体力を消耗していた時期もありました。でも、ミルコ・デムーロ騎手とは手が合うようで、春のGIヴィクトリアマイル(5月14日/東京・芝1600m)で4着と好走して以降、重賞で本領を発揮できるようになっています。

 管理する友道調教師も、『体調は安定している。ミルコが乗るようになって、返し馬もうまくいって(それが)競馬につながっている。距離もジョッキーが大丈夫だと言っている』と手応えを感じていました。

 メンバー的に逃げの形になる可能性が高く、折り合い面がまったく心配ないとは言えませんが、前走のように自分のリズムで運べれば、そのまま残っても不思議ではありません。

 もしくは、控えることができれば、メンバー最速の上がりをマークしたヴィクトリアマイルのような、脚をタメて差す競馬もできます。逃げでも、差しでも、両面で力を出しきれるのは、予想される展開を踏まえても心強い限り。楽しみです」

 激戦が予想されるエリザベス女王杯。3連単の配当が300万円超えとなった一昨年、2着同着でふた通りの配当が20万円超えとなった昨年に続いて、今年も高額配当が飛び出すムードが増している。それを演出するのが、ここに挙げた2頭であってもおかしくない。