大山をじっくりと4番として育て上げた岡田監督。その我慢強い采配は見事だった。(C)産経新聞社 歓喜の瞬間、百戦錬磨の老将…

大山をじっくりと4番として育て上げた岡田監督。その我慢強い采配は見事だった。(C)産経新聞社

 歓喜の瞬間、百戦錬磨の老将の表情はにわかに緩んだ。

 11月5日、「SMBC日本シリーズ2023」第7戦が京セラドーム大阪で行われ、阪神が7-1でオリックスに完勝。38年ぶり2度目の日本一に輝いた。

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 38年前、黄金期にあった西武を破り、史上初の日本一に輝いていた歓喜のグラウンド上に立っていた27歳の若虎は数多の経験を積み、今度は指揮官としてくすぶっていた猛虎を日本一に導いた。この賞賛すべき経歴を見ても、阪神をこよなく愛する誰もが待ち望んでいた久々の戴冠は、球団のレジェンドでもある岡田彰布監督による影響は計り知れないと言えよう。

 今季にSNS上では「岡田大監督」というワードが幾度かトレンド入りした。それほど65歳の指揮官が振るう経験に裏打ちされた采配がピタッとハマる試合が多かったわけである。ゆえに岡田監督の「この試合の、この采配が際立っていた」と限定するのはなかなか容易ではない。

 それでも強いて“岡田采配”を挙げるとすれば、4番に据えた大山悠輔を最後まで変えなかった「我慢」だろう。これは大山をドラフトで指名した金本知憲監督や、前任者の矢野燿大監督ら“青年監督”にはできなかったベテラン監督らしい味だった。

 思えば、就任直後から「阪神の4番へのこだわり」を岡田監督は口を酸っぱくして語っていた。『CoCoKARA Next』が行った独占インタビューでは、「(佐藤輝明と大山の)2人はクリーンアップを打たないといけない。その2人が色んなところを守ったりするとチームとしてもどっしりしない」と強調。そして理想的な4番像を語っていた。

「ホームランも打って欲しいし、打点も上げて欲しいし、条件をあげ出したらキリがないけど(笑)。でも1番はチームメートみんなが認める4番ですかね。誰もが認める、納得できる4番。だから、コロコロ変わると、責任感というか、打線として落ち着かない」

 もともとクリーンナップを打てるだけのポテンシャルは大山にはあった。それを「誰もが納得できる4番」として1年、全143試合、フルイニングをかけて成長させた効果は、オリックスとの頂上決戦でも発揮された。

 決して背番号3の調子は芳しくはなかった。それでも岡田監督はシーズンと同様に4番として起用し続けると、シリーズ打率1割台と抑え込まれていた第4戦では値千金のサヨナラタイムリーヒットを記録。これで吹っ切れたのか。大山は、優勝を懸けた第7戦でもダメ押しのタイムリーをマーク。7得点を挙げた打線の勢いを加速させる役割を見事に担った。

 それこそ現役時代にはいずれも球史に残る名スラッガーであるランディー・バースと掛布雅之とともにクリーンナップも打った。そのなかで阪神の中軸を打つ酸いも甘いも学んだ。だからこそ、岡田監督は忍耐強く大山を4番として据えたのだろう。

 無論、指揮官の意図を汲み、それに応えた大山本人も見事だ。しかし、最後の最後まで「そらそうよ」と、どっしり構え続けた指揮官にチーム作りの妙を見た。

 ジェフ・ウィリアムズ、藤川球児、久保田智之による鉄壁の投手リレーを構築した第1次政権と同様に、岡田采配はやはり凄かった。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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